史上最も成功したスポーツビジネス
種子田 穣 本庄 俊和
この本ではNFLがいかにアメリカ国民にとっての文化となりえたか、そのためのブランディング戦略について書かれている。ブラックアウトやマンデーナイトフットボールといった、日本のプロ野球やJリーグでは行われていないNFL独自のものが紹介され、大変興味深い。
本の中で、強い感銘を受けた点はNFLが、ブランディングやスポンサーシップの獲得に際して、アメリカンフットボールというスポーツの持っている要素を、商品やサービスに込められたコンセプトと結びつけて考えている点だ。たとえば、ボールを敵陣に運ぶために戦略や情報を用いるというアメリカンフットボールの特性を物流企業のコマーシャルに提供するといったことを行っていたり、フラッグフットボールのキットを日本各地の中学校に寄贈し、スポーツが苦手な子でも戦略を考える役ができるといったようなアメリカンフットボールの特性を提供したりしている。日本人選手がNFLに誕生するのはまだ先のことと見るや、日本人でNFLチームに所属するチアの方のドキュメンタリーをつくり、異国での生活や家族との葛藤を描いたりしている。
スポーツ団体にとって、そのスポーツを普及させるために行っていることは、そのスポーツがいかに面白いかを訴えているケースが多い。しかし、NFLは、アメリカンフットボールの面白さを訴えるだけではなく、世の中にNFLというブランドの持つ価値を投げかけている。
このように、スポーツを通じた何かで社会に訴えるという点が日本には欠けており、野球やソフトボールが五輪競技に復活できなかった理由もこの点に一因があるのではないかと私は考えている。スポーツビジネスを勉強している方だけではなく、スポーツを普及させたいと願っている方にもぜひ読んでもらいたい。
(松本 圭祐)
出版元:毎日新聞社
(掲載日:2011-12-10)
タグ:スポーツビジネス NFL アメリカンフットボール
カテゴリ その他
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史上最も成功したスポーツビジネス
種子田 穣 本庄 俊和
はっきり言って歴史の違い
私の蔵書の中に「THE PICTORIAL HISTORY OF FOOTBALL」というのがある。要するに、アメリカンフットボールの歴史を写真で追ったものだ。そして、この本の最初に「CAMP」なるタイトルのついた章があって、そこには口ひげをはやし、左手を後ろに回して直立姿勢で立っている男の写真が大きく掲載されている。
その男こそが現在のフットボールの原型となるルールを確定したウォルター・キャンプその人である。その写真の説明には「ウォルター・キャンプは1878年にエール大学のキャプテンとなった。彼は革新的なアメリカンフットボールのルールを背景に、大いに活躍した」と記されている。
1878年は、日本で言うと明治11年である。この年、日本では明治新政府の立役者であり、版籍奉還や廃藩置県を断行した参議兼内務卿の大久保利通が東京紀尾井町で刺殺されている。まだまだ国の存亡ままならぬ状況の中で、ましてスポーツなんぞという時代であった。
1892年、米国ではアメリカンフットボールは人気スポーツとなり、初のプロプレーヤーが誕生したと本書に書かれている。日本では明治25年に当たる。この年日本には本格的テニスコートが東京・日比谷の英国公使館の中庭にでき、これをきっかけにテニスが盛んになったという。でも、フットボールではないのだ。
日本で初めてアメリカンフットボールの試合が行われるのは、それから43年後の1935年(昭和10年)。東京・明治神宮外苑で横浜選抜と在日外人チームの試合が第一戦であった。そのころ、米国では現在のNFLは既に組織されていたし、1934年にはNBCラジオで全国向けに初めて放送が行われたという。そして、1935年には現在も行われているドラフト制度ウェーバー方式を導入したという。やはり、はっきり言って歴史が違うのだ。
スポーツと体育の違い
本書は、新市場開拓の原則として次の2つを挙げている。
(1)ファンデベロップメント、即ち顧客の開拓、(2)メディア展開、即ち如何にしてメディアへの露出度を増やすか。
両方とも納得だが、特に(1)の顧客の獲得には大変な時間を要するという。
つまり「特にプロスポーツの場合、人々がファンとなるスポーツは、自分が過去にプレーしたことのあるスポーツであることが多い」という。
これも納得。つまり、日本の場合、過去におけるスポーツ経験とはイコール学校体育でのスポーツ経験となるので、NFLジャパンでは現在日本でのNFLファン獲得作戦の一環としてフラッグフットボールという安全で誰もがフットボールゲームを楽しめるプログラムを全国小学校に展開中という。これも納得。
因みに、何を隠そう私もこのフラッグフットボール経験者の一人で、年齢、男女混合チームでゲームをやる気分は格別です。 読者諸君、一度経験すべし。
閑話休題。しかし、これらのNFL顧客獲得作戦には大事なものが抜けている。それは、スポーツはやるものと同時に観るものだとういう視点だ。残念ながら、今までの日本のスポーツ教育には、ここが決定的に欠けていた。つまり、教育・教材としてのスポーツ、体育だったのである。
事実、全国の小・中学校のグラウンド、体育館に観覧席が用意されている学校が何校あるか? あるのはスポーツをやるためだけの施設ばかりだろう。私自身、もう10年以上前になるが、娘のミニバスケットボールの試合を体育館の外から、狭い出入り口に沢山群がる他の保護者に混じって立ちながら応援したのを覚えている。
観覧席があったら、もっと楽しめただろうに。
NFL関係者の皆さん、そんなに史上最もビジネスを成功させた余力があり、あくなきビジネス精神の元、さらに日本、そしてアジアとビジネスチャンスを目論むなら、全国の小・中学校に観覧席を寄付して下さい。
そうすれば、必ずや日本人はスポーツを観る楽しみを理解します。そして、アメリカのように、会場近くでバーベキューパーティーもやるようになります。なんせ、史上最もマネがうまい国民ですから。
(久米 秀作)
出版元:毎日新聞社
(掲載日:2002-12-10)
タグ:スポーツビジネス NFL アメリカンフットボール
カテゴリ その他
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日本人が知らない松坂メジャー革命
アンドリュー・ゴードン 篠原一郎
2006年4月カンザスシティロイヤルズの本拠地カウフマン・スタジアムにいた。興奮と緊張さめやらぬスタジアムは…寒い。観客のほとんどはニット帽、手袋、ジャンパー、さらには毛布を持参してかけている人たちもいた。
とてつもなく寒い中、お目当ての選手があらわれた。
日本時代の青と白のユニフォームからグレーと赤色に変わったユニフォームに袖を通した、背番号「18」が登場。大きな歓声とは対照的に、静かに落ち着いて見える一人の日本人ピッチャーがマウンドに姿を現した。松坂大輔投手(ボストンレッドソックス)である。松坂投手は、マウンドに向かうとき、3塁線を片足(右足でとび、左足で着地する)で飛び越える動作を必ずすることに気づいた。彼にとってこの動作には一種の願掛けの意味を持つのだろうかという思いで彼の行動ひとつひとつを観察していた。
試合終了後にESPNを偶然目にして、彼は試合中に笑っていた。この笑みが意味するのは本人にしかわからないだろうが、余裕があったのか? 心の底からベースボールを楽しんでいるのか? 相手のレベルの高さにゾクゾクするというような意味での笑みだったのか?
実際にスタジアムに行くことによって感じること、連日放送されるスポーツニュースを見ることでしかわからないこと、そして、書籍を読むことで知ることができること。
ボストンレッドソックス松坂大輔の一挙手一投足、それをとり囲む日米のメディアと日米ファン。レッドソックスの試合の全米ネットワークや日本での放映権、選手たちの番組出演の際の収入はどうなっているのか。文化や地域にとらわれないスポーツのある生活の大切さと意味。まだ「知らない」ことを知るきっかけになるのでは。
(大塚 健吾)
出版元:朝日新聞社
(掲載日:2012-10-15)
タグ:メディア スポーツビジネス
カテゴリ スポーツライティング
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スポーツマーケティングを学ぶ
広瀬 一郎
歴史の流れの中で、社会におけるスポーツのあり方が変化してきたことを概観し、近年のマスメディアの普及によって、スポーツというコンテンツが「商品化」されるようになった経緯をまとめた。そしてスポーツマーケティングの定義を試みている。サッカーにおける、広瀬氏の経験に基づく記述は圧巻。
(月刊トレーニング・ジャーナル編集部)
出版元:創文企画
(掲載日:2007-07-10)
タグ:スポーツマーケティング スポーツビジネス サッカー
カテゴリ その他
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スポーツを仕事にするという選択
池上 達也
「なぜ、世の中に数ある職種の中でスポーツビジネスを選ぶのか?」
2019年にはラグビーワールドカップ、2020年には東京オリンピック、2025にはワールドマスターと、史上稀にみるスポーツイベントが立て続けにここ日本で開催されます。きっと数多くのスポーツファンがブラウン管にかじりつき、メディアでも連日連夜と結果について報道されるでしょう。そう思うと日本人は、スポーツが大好きです。そしてスポーツと縁が深いはずです。
まず中学校・高校では「部活」や「体育祭」を体験します。
また、日本の戦後の復興にはONコンビ(王・長嶋)に代表されるように野球で盛り上がり、力道山という最強のプロレスラー・若乃花、貴乃花にみる相撲人気といい、スポーツヒーローが出現しました。その後、サッカーワールドカップの出場やオリンピックでは金メダル獲得などに日本中が沸きます。きっと日本人のDNAはスポーツが大好きです。
しかしながら、スポーツビジネスの主役であるスポーツ選手には選手寿命があり、引退した後にはセカンドキャリア問題があります。よくある話はそのスポーツの指導者という職につける人もいますが、全てがそうはいかず一般の職に就きます。メインである選手の生活環境が不安定な状況で、選手ではない我々がスポーツビジネスで生計を立てるのは難しいと世間では言われます。ましては、スポーツは興業的な要素もあるのでなおさらです。
それでも、なぜスポーツに関わる仕事を行うのか? その意義をしっかり持つことをこの書籍では考えさせられます。
著者は、スポーツビジネス職への斡旋を主にされていますが、スポーツビジネスで働く理由をヒアリングして納得できるものでなければ転職しないほうがよいと論じています。
それゆえ、冒頭の質問に戻りますが、なぜスポーツビジネスに携わりたいのか? スポービジネスに携わり達成したいその目的がリアルであればあるほど、その目的に対してさまざまな手段を選ぶことができます。
それが、自分の夢なのか、好きなことでメシを食べたいのか、それともスポーツへの恩返しなのか、などここではたくさんの目的があると思います。そのきっかけを考えるには十分の書籍であり、スポーツビジネスに関わりたい方はぜひ目を通して欲しいです。
さあ、あなたはなぜスポーツビジネスで働きたいですか?
(中地 圭太)
出版元:秀和システム
(掲載日:2019-01-04)
タグ:スポーツビジネス
カテゴリ 人生
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