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ここが“おかしい”!? 子どものからだ

世界で活躍するスポーツ選手は、いろいろな環境整備を経てとても多くなったように思える。
本書は『こどものからだと心白書』(小社刊)の著者でもある野井真吾・埼玉大学教育学部准教授が、野田市主催「子育て応援者養成講座」の公開講座での講演をもとに加筆、構成したもの。
たとえば本書で現代の子どもの抱える問題として挙げられているのが、体温が低い子どもたち、電磁波が及ぼす健康への影響、睡眠不足の子どもたち、前頭葉(心)の働きを観察する、「抑制型」のこどもはキレる?等さまざま。その多くが家での生活の乱れが直接的に子どもたちへの健康被害へとつながっており、それらの問題を大きく括ると、食事を残す→体温低下→活動意欲の低下→先生に怒られ→おもしろくないから寝る→夜起きているがTVゲームで光を浴び目が冴える、ジュースをがぶ飲みする→寝られない・食欲低下と悪循環になっているという。本書ではこれらを過去の子どものデータと現代の子どもたちのデータとを比較している。 ぜひ一読していただきたい。(M)



野井真吾著、A5判 95頁、2007年5月1日刊、1,050円
芽ばえ社(03-3579-7851)

アクティブIDストレッチング―Active Individual Muscle Stretching―

今回の特集でも紹介された鈴木重行氏の著書。本書のタイトル『アクティブIDストレッチング』とは、ベッドサイド、自宅あるいはスポーツ現場で行う個々の筋(individual muscle)のストレッチング法を紹介しているため、このように名づけられた。基本事項は「IDストレッチング第2版・(三輪書店)」に網羅されているが、ここでは自ら実践できるよう、その中でもとくに重要な点を再度掲載、新たな知見や考え方についてまとめている。内容は第1章「アクティブIDストレッチングの概論」、第2章「アクティブIDストレッチングの実際」の2本立て。第1章では特集でふれた器質的変化と機能的変化の考え方や、筋緊張と痛みなどについてもまとめられている。第2章ではストレッチする上肢・下肢の部位80箇所に分けて紹介。筋の起始、停止、神経支配、血管支配、筋連結とそれぞれ詳細にまとめ、ストレッチする際の開始肢位、ストレッチ位、指導ポイントをカラー写真で説明。本書を通して「痛み」というからだの問いに対し、より具現化したアプローチができるだろう。ぜひ参考にしていただきたい。(M)



鈴木重行・平野幸伸・鈴木敏和著、A4判、212頁、2007年4月30日刊、4,725円
株式会社三輪書店(03-3816-7796)

からだの“おかしさ”を科学する

著者は埼玉大学で教鞭をとる野井真吾准教授。1~11章に分けられ、1~10章までは現代のこどもたちのからだの問題事実についてまとめている。副題は「いるいる! そんな子、うちの子」。ページをめくっていくと「前頭葉問題:すぐ“疲れた”という子どもたち」「自律神経問題:すぐ“疲れた”という子どもたち」「体幹筋力問題:“二足歩行”の危機…!?」と現代の子どもたちの問題点が明らかになっていく。考えさせられたのは「子どものからだと心 ちょっと教えて Q&A」という欄で、「今の子どもたちは、自律神経が心配ということですが、どうすれば自律神経は発達するんですか?」という質問に対し、「正直この質問に対する回答は、持ち合わせていません」と答えているところ。 つまり生活の中で自律神経の発達を阻害する原因を絞りきることが難しく、それは運動不足、テレビやゲーム、さらには食べ物、化学物質と原因を特定することが困難ということ。社会は絡み合った問題が多くなっているし、わからないことはまだまだある。自分のからだへの変化にも気づく感覚と意識が重要になりそうだ。(M)



野井真吾著、A5判、127頁、2007年6月20日刊、1,470円
かもがわ出版(075-432-2868)

子どもに「体力」をとりもどそう

本書の前書きの言葉を引用すると、「学力も体力もどちらも成長とともに発達する能力であり、成長する期間は18年間と時間的に制約されている」とある。それだけに学力も体力も成長の過程で密接に関連しているということが言える。
そこで「まずはからだづくりだ!」と副題にある通り、本書では子どもたちの運動不足を深刻な問題と指摘している。本文は9章立てで、さまざまなデータを用い子どもたちの限られた発達段階にアプローチしていく。そのなかでアメリカは日本と異なり学校区ごとに授業のカリキュラムを決めることができるのだが、それが学年進行とともに体育への授業へ参加する割合を減少させる原因であるという。
これに対して「体育の授業を減らしたからと言って、それらの科目の成績が向上するという確かな保証はない。それよりも、たくさんの研究は学業成績とスポーツ活動を含め身体活動量との間には、正の相関があるとし、これを否定する研究はほとんど見当たらない」とある。
社会に貢献できる人に成長するためにはどうあるべきか。体育学という視点から本書を通し再考していくべき時期を迎えていると言えるだろう。(M)



宮下充正著、A5判、96頁、2007年7月10日刊、1,470円
株式会社杏林書院(03-3811-4887)

動く骨・コツ 野球編

スポーツを指導する際に一番難しいのは動きのコツ。指導者が競技経験を有していても、それをじょうずに伝えることが困難なときがある。たとえば野球における動きのコツとは何か。本書の副題は「骨格操作で〈走・打・投〉が劇的に変わる!」。ここで使われる体幹内操法という言葉は、骨格のじょうずな動かし方。また体幹部を源として骨格を操る感覚で動くメソッドとつけ加えることができる。身体操作の基本動作には屈曲、伸展、側屈の動作を融合したものがあり、それらを融合し進展させたものが2種類の釣り合い歩行。詳しいことは本書を参考にしていただくとして、ここで紹介されるエクササイズには日常動作からスポーツ領域における動きの要素が集約されている。DVD(50分)も付録し、写真、イラストで紹介しているのでわかりやすい。“野球を何年も続けていても上達しない”、“もっと動きの世界を広げてみたい”という方に読んでほしい一冊だが、指導者にこそ読んでほしい野球の動きの骨・コツ。ぜひ一読願いたい。(M)



栢野忠夫監修・解説、B5判、129頁、2007年6月16日刊、1,890円
スキージャーナル株式会社(03-3353-3051)

アマチュアスポーツも金次第

お金をめぐって
「人生に必要なものは、勇気と想像力、それとほんの少しのお金だ」とはチャールズ・チャップリンの「ライムライト」の中での言葉。「金は必要だが重要ではない」という人もいれば、「金で買えないものはない」という人もいる。金にはそれを扱う人間を映し出す力がある。
本書のタイトルは「アマチュアスポーツも金次第」である。アマチュアスポーツと金の関係にネガティブな印象を与える言い回しだ。西武の裏金問題そして高校特待生問題で、アマチュア野球界が揺れている時期に合わせてキャッチーなコピーになるような意図があったのだろう。ただ、これは短編集の中から一編の題名をそのまま本のタイトルにしたような格好で疑問が残る。その実、松坂のポスティングシステムやサッカークラブ経営についての話が後半部分を占めている。しかもアマチュアスポーツにおける金の話も、断罪されるべき不透明な金と、強化費としての金、あるいはビジネスとしての金の動きが同列で扱われている印象がある。
西武の裏金問題と野球特待生問題にしても、本来、両者は別問題として議論されるべきものだろう。それが、金儲けのためにあざとく両者をつなげていた連中が存在するおかげで、同列に扱わざるを得ない事態になってしまった。それにしても朝日新聞や毎日新聞のトップの方々を最高顧問に戴く日本高等学校野球連盟が、特待生制度について当初ヒステリックとも言える対応に終始したのは、正直驚きを禁じ得なかった。いや、もちろん憲章に背くルール違反をしていたことは確かではあるのだが。現在は、10月初旬までに提言をまとめるべく、第三者委員による議論が行われている。この態度を軟化させた高野連の譲歩により、他の競技にも好影響を与えるだけのクリーンな基準づくりができれば素晴らしいことだ。

健全な流れを
とにかくアマチュアスポーツといえどもお金はかかるのだ。競技レベルが上がれば上がるだけその金額は跳ね上がる。本書でも再三述べられているとおり、これは事実だ。しかし、すべてをひとまとめにして「金次第」と切って捨てることに今さら意味はない。スポーツビジネスとはスポーツという舞台でどのようにお金が流れているのかを分析し、またどのようにお金を生み出すことができるのかを論じるだけのものではないはずだ。する側よし、観る側よし、支える側よし、スポーツ界ひいては世の中よしという健全なお金の流れをつくる学問でもあるはずなのだ。優秀な指導者にはブローカーのような真似をしなくても正当な報酬が渡り、自らの才能によってお金を生み出すことのできるスポーツ選手には優良で健全なビジネス感覚を身につけさせることも、その分野の果たすべき役割ではないだろうか。
プロとアマチュアのつながりも、プロ選手が将来を夢見る子どもたちに指導するイベントなど、素晴らしい試みも数多く行われている。金の流れの整備が終われば、光が当たるべき側のプロとアマチュアの関係がよりよく発展することを願う。5月末に、「侍ハードラー」為末大選手が丸の内のオフィス街で行った陸上イベントは、素晴らしいお金の使い方ではないか。あの種のイベントにより、興行側が投資以上の儲けを得て、さらに面白いイベントや新しい試みにつなげられるのであれば素晴らしいことだと思う。そのような金は、やはり違って見える気がする。
(山根太治・日本体育協会公認アスレティックトレーナー、鍼灸師)



生島淳 著 新書判、199ページ、735円
朝日新聞社

スポ-ツに言葉を――現象学的スポ-ツ学と創作ことわざ

宿題に追われて
小学生の頃、夏休みを迎えて何が憂鬱かといって読書感想文と自由研究ほど憂鬱なものはなかった。嫌なものは当然早く片づくはずもなく、いつもギリギリになって大変な思いをしたものだ。
読書が嫌いなうえに作文は下手、探究心もそれほど旺盛でない子どもがそのまま大きくなったらどうなるか? 苦労するに決まっているのだな、これが。
ただし、大学生になってもそのことにまだ気づいていない。棒高跳びの大先輩による「ガーン! グーン! スポーン!」という大名言のせいでもあるのだが、このオノマトペ(擬声語)には棒高跳びのすべてが詰まっていると信じ、長じて感覚的なイメージだけで人間は理解し合えると思っていたからだ。
しかしこれは実際に棒高跳びをやったことのある者、あるいは、その場にいて身振りを見ながら聴いた者でなければわかりにくい感覚なんですね。ちゃんと言葉を用いて表現しなければ普遍的に理解されることは難しい。それも感覚の異なる人たちに理解され、しかもできるようになってもらうためには、体育大学にいたときとは全く別のアプローチが必要なのだ。慌てて「身体」という語が入った本を買ってみたり、「哲学」だの「原理」だのという題のついた本を机に積んでみたり、と苦労が始まった。
すると不思議なことに何かがわかったような気になったらしい。しかし己の無知を知らないというのは困ったもので、いまだわからないこと、知らないことばかりのくせに先日ある会でシタリ顔をして能書きをならべたて悦に入ってしまった。そこへ、柔和な顔をした優しそうな人がニコニコ近づいてきて、うちの雑誌に何か書きませんかなどと言うものだから、ついいい気分になって引き受けてしまったら、さあ大変、何の因果か小学生の夏休みと同じ思いをするはめになってしまった。締め切り当日になって書き始めたのだが、あ! もう日をまたいでしまった…。嗚呼、ついには陽も昇ってきたぞ!
以上、ちゃんと勉強しておかないと大人になって恐ろしい思いをするというお話でした。

頭に柔軟性を持つ
さて本書だが、『現象学的』立場からスポーツ現場に『言葉』さらには『創作ことわざ』を導入しようと試みたものである。「ことわざ」とは「生活の中から生まれ、むかしから伝わっていて、なるほどと思わせる、短いことば」(三省堂の国語辞典より)のことだが、それを『創作』するためには、自分にとっての「当たり前」や「常識」を見つめ直し、構築し直す頭の柔軟性が必要となる。
『現象学』とは、浅学を承知で言うならば、ある観察対象について観察者の主観を交じえずに記述しようとする態度のことである。いくら観察者が客観だと思っていても、そこには彼が育った社会的文化的背景、すなわち観察者にとって『当然と思っていたこと』が反映してしまうのだが、それを『一時的判断停止=エポケー』して『本質に迫る』こと、あるいは自分がある特有の立場でしか観察できていないことを認識したうえで考察をすることである。
つまり、ここにバッタを甘露煮にして食べる県民がいたとしますね、それを見て「うえー! うちの県じゃこんなもの食わねえよ!」という気持ちをいったんカッコで括っておいて(すなわち、エポケー)素直に見つめ、相手の立場を尊重しようとする態度、ということであります。
スポーツ(生徒、選手、技術、戦術)という現象を観察者(教師、コーチ、監督)が一方的に解釈するのでなく相互に理解する態度を養うことで、ありがちな体育会系縦社会の短所を払拭し、スポーツ現場でのコミュニケーションをより有機的なものにしようと本書は訴えているように思う。
「ガーンとやってグーンと行ってスポーンだって言ったじゃないか! 何で分かんないんだよ! ちゃんと俺の話を聴いてんのか? こんにゃろめ!」という経験をしたことがある人ならぜひ読んでおきたい一冊だ。
(板井美浩・自治医科大学医学部保健体育研究室准教授)



山口政信 著、A5判 237ページ、2,730円
遊戯社(03-3941-6005)

健康問答

「スポーツするなら水の変わりに牛乳を飲め」と、私は小さいときに言われたことがあり、疑いなくそのとおりにしていた。“牛は大きい。その牛がミルクを出している。それを飲めば絶対にからだは大きくなるはずだ”と子どもながらに信じていたが、「本当に?」という疑いはあった。
副題は『本当のところはどうなのか? 本音で語る現代の「養生訓」』。目次からその話題を少しだけ引用すると次のようになる。・水はたくさん飲まなければいけないのか、・緑茶はガンを予防するか、・牛乳を飲むのは、いいことか悪いことか、・メタボリック症候群は、ほんとうに危険か、・人間の寿命は、何歳がちょうどいいか、・「命の場」のエネルギーが低下するとどうなるか、などなど。五木寛之・作家と、帯津良一・医者が「本当は、どうなのだ!」について語り合う本書は、巷で言われている考えとはちょっと違う。たしかに水のかわりに牛乳を飲んでもあまり大きくはならなかったし、牛乳をまったく飲まなくなったいま、大きな不自由もなく生活できている。
なによりそういった情報を処理するバランス感覚が大事なのだろうと思う。(M)



五木寛之・帯津良一著、四六判、271頁、2007年4月4日刊、1,470円
株式会社平凡社(03-3818-0874)

迷惑な進化

「この本に書かれているのは、謎と奇跡の話である。医学と伝説の話である」と意味深に始まる本書は、アルツハイマー病の遺伝的関係の新発見で知られるシャロン・モアレム氏と、クリントン元大統領のホワイトハウス上級顧問・スピーチライターのジョナサン・プリンス氏の著。とくに遺伝子学的な知見に富んでいるので、世界中で知られる疫病の問題やアルコールの問題についても、遺伝子とどう関連をもっているのかについてなど大変興味深い内容である。
シャロン氏は祖父がアルツハイマー病と診断されたとき、アルツハイマーとヘモクロマトーシスの2つの病気には関連があるのではないかと考えた。まだ彼が15歳のときである。
そんな彼の小さなときからの取り組みがさまざまな問題意識を高め、大学院に進みアルツハイマー病を解明するに至った。だがその仮説を証明した後、祖父はアルツハイマー病と診断されてから5年後に亡くなる。
人のために科学があるのであって、それに尽力した科学者の“謎と奇跡”の本。ぜひ読んでいただきたい。(M)



シャロン・モアレム、ジョナサン・プリンス著、訳・矢野真千子、四六判、283頁、2007年8月25日刊、1,890円
NHK出版(048-480-4030)

中高年の運動実践ハンドブック

超高齢社会はいつ来るか。そんな疑問を持つ前にまず本書を読んで欲しい。副題は運動・スポーツに遅すぎる歳はない。
本書は運動プログラムを組み立てる指導者たちに向けられたもので、筋力トレーニングや、エアロビックダンス、ウォーキング、アクアエクササイズ、チェアエクササイズなど、多くのエクササイズが網羅されている。また「指導者のための内科学」として、中高年の特徴や、救急対策、生活指導のコツ・注意点にも触れ、「指導者のための整形外科学」では運動器の問題点や、各関節へのアプローチ方法など、どれも運動プログラムに欠かせない内容となっている。
とくにエクササイズに関しては、写真を用いているのでわかりやすく、解剖学的な観点でも絵を使って解説している。実際に高齢者に向けての運動指導の方法がわからないという人はもちろん、再確認のため、知見を広げたいという人にも目を通していだきたい内容である。
来年の2008年4月からいよいよ特定健診と特定保健指導が始まる。本書を現場でのバイブルとして座右に置いておくのもよいだろう。(M)



大久保衞・編著、土井龍雄・池端裕子・尾陰由美子・竹尾吉枝・高橋正行著、B5判、237頁、2007年7月20日刊、2,520円
(株)昭和堂(075-706-8818)

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