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からだのメソッド

 元体操選手で、椅子やカトラリーも製作、からだと動き、からだと道具の関係について詳しい。茶道も嗜み、服飾にも通じる。大学で立ち方や歩き方など、立居振舞いの授業も担当している著者。その幅広い活動から、「からだのメソッド」というわかりやすい本が生まれた。
 全体は、立ち方の基礎、歩き方の基礎、坐り方の基礎、食作法の基礎、呼吸法の基礎と基礎編が5つ続き、大学での実習レポート、そして最後に身体と運動の論理でまとめられている。
 本書を読み終えての一番の感想は、「優れて実践的」ということである。「姿勢をよくする」と言われると、多くの人はできればそうしたいと思う。では、どうすればよいか。たとえば、背骨の上に頭を乗せようとする。それだけで姿勢は変わる。
「成るはよし、為そうとするは悪し」。著者は、日本の禅での表現を紹介しているが、そのあと「からだの扱い」について、「意識して姿勢を整えようとするのではなく、「おのずから整う」心持ちが大事だということです」と記している。  以上は、本書で述べられている「メソッド」のほんの一端でしかない。やさしく書かれているが、その実践と追求のため、長く愛読書になると思う。(S)



矢田部英正著、B6判、210頁、2009年5月26日刊、1,470円
バジリコ(03-5625-4420)

宿澤広朗 勝つことのみが善である

 早稲田大学ラグビー部のキャプテンを務め、日本代表になり、卒業後は住友銀行に入行、同銀行では最終的に専務執行役員にまでなり、その激務を続けながら日本代表監督としてスコットンランドに勝利した宿澤広朗氏のラグビーを通じた人生を、詳細で時間のかかった取材でまとめたもの。副題は「全戦全勝の哲学」。
 東京大学が紛争で入試を中止したときの受験生で、宿澤氏は早稲田大学政経学部に進んだ。一般学生としてラグビー部に入部、「1週間でやめるだろう」と思われていたが、すぐに1軍選手となり、あとの活躍は言うまでもない。なぜ「勝つことのみが善である」というタイトルなのか。
 宿澤氏はテレビ東京の『テレビ人間発見』でこう語った。
「競技スポーツも、資本主義経済も、勝つことが正しい目的なんです。ただ、やり方を間違えると、“勝利至上主義”とか、“儲け主義”と言われる。結局、最後は金銭ではなく、名誉ですよね」。言葉の意味するところは大きい。
 真剣に考え、やるべきことをやればまず負けないと言う。「真剣」という言葉の意味を痛いほど知ることができる1冊である。文句なし。おすすめする。(S)



永田洋光著、文庫判、310頁、2009年6月10日刊、670円
文藝春秋(03-3625-1211)

運動も勉強もできる脳を育てる「運脳神経」のつくり方

 「運脳神経」ってなに? そんな疑問をもつ読者も多いのではないだろうか。
 まず、この運脳神経というのは、もちろん造語。著者は運動神経という言葉が意味する誤解や誤った考えを避けたいということから「運脳神経」と言う。この「運脳神経」とはなにか、その運脳神経を鍛えるためのワークがこの一冊にまとめられている。
 第1章では「運動が好きな子は勉強も得意! 東大合格を目指すなら運動から」というタイトルがつけられ、子どもをもつ親は思わず手にとってみたくなる。ちなみに東大大学院教授の著者は「東大入試に体育を導入しよう」と本書で主張する。
 勉強も運動も「頭」つまり「脳でする」ものであるから、脳を鍛えれば勉強も運動もできるようになる。そのためには、運動だけでも勉強だけでも運脳神経は育たないので、運動も勉強もできる脳を育てよう! ということである。スポーツ科学界の第一人者が語る、文武両道の子どもを育てるためのノウハウ。豊富なイラストとわかりやすい文章で書かれている。運動と学習能力は切り離せないという大事なことを教える一冊。(T)



 帯に「運動ができる子どもは勉強もできる」「文武両道」とあるように、著者の深代氏は運動ができることと勉強ができることは深く関連しているという。そのうえで著者は、運動を基本動作から鍛えようと提唱する。走り方、跳び方、投げ方などについて、スポーツバイオメカニクスなどの研究から得られた知識を話題として織り交ぜながら解説している。
 そして、スポーツ万能になるために大切な「動きの素」は、体幹によるとして、反動動作、反射、捻り、ムチ動作をどのように感じ、利用するかについても解説している。
 イラストを用いた「運脳神経」を鍛えるための身体を楽しく動かすワークや、身体のことをより深く知るための問題も掲載されている。簡単な言葉を用いているものの、実際には専門的な内容が多いと感じる。しかし、理解できないというのではなく、わかりやすく伝えるための工夫が感じられる。



深代千之著、A5判、180頁、2009年5月25日刊、1,575円
ラウンドフラット(03-3356-5726)

先を読む頭脳

 羽生名人と2人の科学者による「先を読む」ことを解明しようという本。羽生氏に行ったインタビューを文章にし、それに対して人工知能的立場の松原氏と認知科学的立場の伊藤氏が解説していくという構成である。
「人間のような知的な振る舞いを機械に代行させたい」というのが人工知能に対する人類の夢で、認知科学は「人間の様々な知的活動のメカニズムを解明しようとする分野」とのこと。この両者の専門家が「先を読む」という視点で、「ハブにらみ」の棋士の協力を得て、本書が成立した。
 さて、将棋を科学的にみるとどうなるか。「二人完全情報確定ゼロ和ゲーム」である。詳しくは本書のP.9を参照していただきたいが、お互いに相手の手が明かされているし、サイコロを振るといった不確定な要素がなく、勝敗が明確という意味になる。
 それにしても、羽生さんのすごさ、そして将棋の特殊性。それは取った相手の駒を使えるということで、チェスが収束していくのに対し、「将棋は終盤に向かって発散する」。
 スポーツにも科学にも関係する本なのである。(S)



羽生善治、伊藤毅志、松原仁著、文庫判、242頁、2009年4月1日刊、420円
新潮社(03-3266-5111)

理系バカと文系バカ

 日本では人を「文系」「理系」と分けて考えるところがある。その鍵は「数学」にあるようだ。数学を理解するか、あるいは数学的思考ができるかどうかで、理系、文系が決まるところがある。だが、よく知られているように、いろいろな組織のトップは文系が多い。その文系は、因数分解など社会に出たら不要だと確信している。一方で、理系のほうが人間としては文系より上であると思っている理系の人も多い。いずれもこの著者によれば、「理系バカ」「文系バカ」ということになる。
 橋爪大三郎によれば、日本の理系・文系の定義は、明治時代に旧制高校が作ったものだとか。黒板とノートだけで学べる文系に比べ、理系は実験設備にお金がかかる。お金のかかる学部を理系、お金のかからない学部を文系と分類し、お金がかかる学部の生徒数は絞らざるを得なかったというのだ。そこで数学の試験をして、文理が振り分けられた。
 これを読んだだけで「ムッ」ときた「文系」の人もいることだろう。しかし、著者は、理系自慢をしようというわけではなく(著者は東京大学理学部物理学科卒の理学博士、理系だが、サイエンスライターという文系でもある)、「文理融合」がこの本で言いたいことである。「知」はバランスのなかにある。これが結論だろう。(S)



竹内薫著、嵯峨野功一構成、新書判、222頁、2009年3月30日刊、756円
PHP研究所(03-3239-6233)

変形性股関節症は⇒自分の骨で治そう!

 昨今、中高齢者による運動・スポーツへの愛好家が増えている。いつまでも若く元気でいたいという思いから、ウォーキングなどの軽い運動のみならず、山歩きといった本格的なスポーツまで楽しんでいる方も多い。しかし、その一方で、運動やスポーツをやりたくても膝や腰や股関節が痛くて歩くことも困難という人もいる。
 本書は、変形性股関節症という股関節の痛みに悩んでいる方たちに向けて書かれている。医学技術が飛躍し、20世紀後半には「世紀の手術」と言われるくらい股関節疾患の患者さんたちに人工股関節置換術は恩恵をもたらしたと著者は言う。しかし、本書では人工股関節置換術をすすめているわけではない。著者の信念の1つは「移植医療は医療の敗北」だと言う。いかにして股関節における移植医療、すなわち人工股関節置換術を避けるかに焦点を置き、代わりに「キアリ骨盤骨切り術」という方法を紹介している。この手術の適応、治療成績、限界など、患者の立場にたって、大きな文字で書かれている。最終的には患者の判断によるものだが、移植医療以外の対応を知っておくことは大事なことではないだろうか。(T)



井上明生編著、大川孝浩、永井良治著、A5判、149頁、2008年12月5日刊、1,680円
メディカ出版(0120-27-6591)

運動と健康

 本書は、放送大学の教材として出版されたもの。
 まえがきに「本講義は、直立・二足歩行を呈するヒトのからだの特徴ならびに、運動の重要性について概説した」と記されているように、第1章では「ヒトのからだの特徴」として、1.直立姿勢の神秘、2.直立・二足歩行に適したからだのかたち、3.姿勢反射、について、ヒトのからだの構造と仕組みをまず最初に理解することから話が進められる。それらを踏まえて神経系、呼吸器系、循環器系、運動器系の内容へ話は進んでいくが、本書はもちろんそれだけで終わらない。
 さらに発育発達からトレーニングの基礎、スポーツ文化、リハビリテーションと体育・スポーツ、生涯スポーツと、この1冊で幅広い内容を網羅している。
 文章は教材ということもあって、基礎的なことがわかりやすく書かれており、各章の冒頭に「目標&ポイント」「キーワード」としてまとめてあるため、学ぶべき要点が理解しやすく構成されているのも本書の読みやすさの1つと言える。
 スポーツと運動について再度勉強してみたいという方にもおすすめの一冊。(T)



臼井永男著、A5判、176頁、2009年3月20日刊、2,100円
財団法人放送大学教育振興会(03-3502-2750)

タンパク質の一生――生命活動の舞台裏

 遺伝子情報をもとに、アミノ酸を順序どおりに並べる。そして、それを立体的に組み立てていくことで機能を持ったタンパク質をつくっていく。その様子をわかりやすく解説したのが本書である。タンパク質ができあがるまでには、シャペロンと呼ばれる脇役の分子が重要な役割をもっていること、輸送のためのさまざまな工夫、そして分解するための仕組みなどが順を追って紹介されていく。本当に生命の働きはうまくできていることを実感できる。
 われわれは、ともすれば筋量を増やすことを目的としてしまいがちだが、身体内部でどのようなことが起こっているか、想像してみるのも面白い。



永田和宏 著 新書判、218ページ、777円
岩波書店

自分で上手に巻ける最新スポーツテーピング

 NPO法人スポーツセーフティジャパンによるテーピングに関するガイド。1人でも失敗せずに巻くことができるよう、紹介されているのは伸縮性のあるテーピング素材(キネシオタイプや伸縮テープ)による関節サポートが中心であり、ホワイトテープは、手指の過伸展防止、補強などに用いられる。
 部位ごとのテーピング方法について、カラー写真、そして巻いた箇所がわかりやすいように工夫されているが、本書はテーピングのみを解説するだけではない。ウォームアップやクールダウン、セルフマッサージについてもまとめられている。掲載されているコラムにも、スポーツをより安全に楽しむためのポイントがちりばめられている。



Sports Safety Japan 監修、159ページ、A5判、1,260円
学習研究社

ヒューマンエラーを防ぐ知恵ミスはなくなるか

 人間によるエラーを防ぐことは、人間にしかできない面も一方で「型にはまらないエラーをしでかすのも人間」であるという。多くの事故が過去に起こり、それを教訓として安全対策が取られてきた。事故防止の戦いは尽きることがない。本書では、ヒューマンエラーの本質について平易に述べ、事故を防ぐためのさまざまな方策が紹介される。スポーツ現場での安全管理などにも応用可能かもしれない。



中田 亨 著、222ページ、B6判、1,680円
化学同人

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