子どもに「体力」をとりもどそう まずはからだづくりだ!
宮下 充正
子どもの体力低下というのは最近と思われている方も多いようですが、実は20年以上前から指摘され続けてきたことです。本書は子どもの世界的傾向から、子どもの成長について、また、その成長に合わせた指導者としての役割について書かれています。
私自身が子どもと関わる機会が多く、子どもの運動能力低下の要因の1つとして、環境的な要因の大きさを感じています。大人となって感じることですが、子どものときにできた動作は大人になっても個人差はありますが、案外できるものです。しかし、やったことのない動作というのはまったくといってできないものです。やはり、「子どもに対してより多くのことを教えてあげること」が大切です。
土台となるあるべき姿から子どもがありたい姿へと導ける指導。子どもに関わる指導者はもちろん、保護者の方にも読んでいただきたい1冊です。
(大洞 裕和)
出版元:杏林書院
(掲載日:2011-12-13)
タグ:指導 体力 教育
カテゴリ 指導
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子どもに「体力」をとりもどそう
宮下 充正
本書の前書きの言葉を引用すると、「学力も体力もどちらも成長とともに発達する能力であり、成長する期間は18年間と時間的に制約されている」とある。それだけに学力も体力も成長の過程で密接に関連しているということが言える。
そこで「まずはからだづくりだ!」と副題にある通り、本書では子どもたちの運動不足を深刻な問題と指摘している。本文は9章立てで、さまざまなデータを用い子どもたちの限られた発達段階にアプローチしていく。そのなかでアメリカは日本と異なり学校区ごとに授業のカリキュラムを決めることができるのだが、それが学年進行とともに体育への授業へ参加する割合を減少させる原因であるという。
これに対して「体育の授業を減らしたからと言って、それらの科目の成績が向上するという確かな保証はない。それよりも、たくさんの研究は学業成績とスポーツ活動を含め身体活動量との間には、正の相関があるとし、これを否定する研究はほとんど見当たらない」とある。
社会に貢献できる人に成長するためにはどうあるべきか。体育学という視点から本書を通し再考していくべき時期を迎えていると言えるだろう。
2007年7月10日刊
(三橋 智広)
出版元:杏林書院
(掲載日:2012-10-13)
タグ:子ども 体力
カテゴリ 身体
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運動・認知機能改善へのアプローチ 子どもと高齢者の健康・体力・脳科学
藤原 勝夫
それって本当?
科学的態度とは、常に疑問を持つということだと思う。定説となっている理論でさえ、むやみに信じてしまうことなくニュートラルな立場で情報と向き合う態度が、私たちスポーツ科学の発展を願う者には必要だ。
たとえば、子どもの体力低下が叫ばれて久しい。このことについて証明するデータは枚挙にいとまがないし、直感(あるいは刷り込み?)的には素直に同感してしまうのだが。体力とは環境への適応結果として現れたものが測定されるのだから、昔のような体力が今の社会には必要なくなったための必然的結果である、とも考えられないだろうか。なのに、子どもの体力が劣った劣ったと叫ばれているところに違和感を感じる。
はたまた授業の場において、現在の体力について感想を学生たちに書かせると “平均より強くてよかったです”、“落ちてて悲しかった”、“やっぱ体力は必要です”、“歳をとっても動けるよう部活ガンバリマス”などなど、判を押したように“体力あることはよいこと”のオンパレードとなることに違和感を覚える。
違和感ついでにもう1つ。“健全なる肉体に健全なる精神が宿る”という表現がいろいろな場でなされますね。この言葉に違和感を覚える人は少なくないと思うのだがいかがだろう。病んだ人には健全な精神が宿らないの? と、突っかかりたくなってしまう。まあ、これ自体じつは誤用で、本来は“健全なる肉体に健全なる精神が宿るように祈りなさい”というのだそうで、こちらの表現ならまだわかる気がするけれど。
目的? 手段?
さて、上記3例に共通して感じる私の違和感とは“体力がないのは悪いことなの?”という点だ。なぜなら、運動できない子は“ダメな子”なの? という連想を禁じ得ないからだ。極論すれば、病気があったり何かの理由で運動ができない人たちの存在を否定することになりかねないという危惧さえ感じるのだ。
体力があることは、確かに日常生活の場において便利だと思う。しかしその測定値が平均から外れていることに一喜一憂し、本来、人それぞれの多様なQOL(Quality of Life、生活の質)を高めるための手段であるはずの体力や運動が目的化し、体力の“大小”を人の能力の“優劣”として短絡的に捉えてしまうことがないようにしたいものである。老いも若きもトップアスリートも、人それぞれに応じた“幸せな体力”のようなものがあると思うのだ。
やはり運動はよい
本書は、これらのヒネクレた疑問に対して、解決するためのヒントを多大にもたらしてくれる。「ウォーキングやジョギングなどのリズミカルな運動は、筋はもとより脳の働きを活性化」し、「片足立ち」や「旗あげ」遊びなどの比較的緩やかな運動でも「前頭前野」の働きが活発になるそうで、「発育期に身体運動を行うことによって、大脳皮質のネットワークが強化され」「前頭前野」の機能が維持されると考えられるようだ。
前頭前野とは、いわゆる“良識”を司る脳の部位だそうだから、子どものときに運動を“実体験”するのはよいことなんだな。それも、緩やかな運動でも活性化するのだとすると、運動が苦手だったり、身体が弱かったりする子どもでも大丈夫そうだな。「コンピュータゲームに慣れてくると、前頭前野の活動は、ゲーム中に低下」するので好ましくないらしい。だけど、ゲームをしている時の子どもの集中力ってのもスゴいんだよなあ。α波がいっぱい出るみたいだし、別の解釈が成り立たないもんかなあ。
子どもの「体力低下の直接的要因は、身体活動量の減少であるが、間接的要因には就寝時刻・起床時刻の遅延化、睡眠時間の短縮化、朝食欠食などの生活習慣があげられる.それらが影響して低体温、自律神経失調、貧血などが惹起され、体調不良の子どもが激増している」のだという。
なるほどなるほど。測定された体力には環境に適応した結果が表れるのだとすると、体力測定値が下がるということは、裏側に好ましくない生活習慣があるということなのか。
などと考えながら読み進めるうちに、実はこれらのほとんどのことは私の“身体”がすでに知っていることに気がついた。さらに、本書の著者たちが考える手がかりとして自分の身体を見つめ、身体のイマジネーションによって研究を重ねてこられたのであろうことに気づかされた。やはり運動ってスゴい!
(板井 美浩)
出版元:市村出版
(掲載日:2012-10-12)
タグ:体力 身体 認知
カテゴリ 身体
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子どものときの運動が一生の身体をつくる
宮下 充正
毎日運動する子どもとほとんど運動しない子に二極化しているという指摘は以前からなされているが、笹川スポーツ財団による調査(「青少年のスポーツライフ・データ2010」など)でも、その傾向はさらに強まっているという。
そういう時代に出たのがこの本。書名でうなずく人も多いのではないか。冒頭、序で著者はまず「“力強さ”、“ねばり強さ”のような身体活動能力は、遺伝と日常的な運動実践や1日中の身体活動量といった環境との2つの要因によって影響を受けるが、人生の初期に見られる身体的特徴が、成人してからの身体活動能力を左右することは否定できない」という報告(誕生後1年間の身体の状態と、成人した31歳の体力を比較したもの)を掲げる。科学的論文なので慎重な表現になっているが、要はこの本の書名が言わんとすることと同じである。それを著者は、たくましさ、巧みさ、ねばり強さ、力強さなどの項目で語り、さらにトレーニングや運動指導の実際にも触れ、生涯スポーツや親の運動習慣についても述べていく。つまりは、子どものときから元気に活動し、その習慣を生涯持ち続けなさいということになる。「体力あっての学力」という指摘も当然のようで忘れられがちの点。まずは体力である。
(清家 輝文)
出版元:明和出版
(掲載日:2012-10-13)
タグ:運動 体力
カテゴリ 身体
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スポーツのライフサイエンス スポーツと体力のほんとうの常識
太田 次郎 栗本 閲夫
「ライフサイエンスノート」と題されたシリーズの第2巻。細胞生物学専攻のお茶の水女子大学教授・太田次郎、体力学・成長発達専攻の順天堂大学体育学部教授・栗本閲夫の両氏による書である。
この本は、ある雑誌の座談会で日頃、運動・体力・健康にさまざまな疑問を抱いていた太田氏が、その疑問を栗本氏に話してみたところ、明解な回答を得たことをきっかけに、その後の充実した対談の内容を独占しておくのはもったいないと、改めてまとめたものである。したがって、書かれている内容は、平明で読みやすく、普段なんとなく疑問に感じたことがいくつも挙げられていて興味深い。
たとえばIQに関し、アシモフとボイドによる『人種とは』という書から次の引用を行っている。
「都会で育てられた五才児は、ウシについての質問に答えられないであろう。彼は、ウシが何本足か、どこから牛乳が出てくるかに答えられないかもしれない。田舎で育った五才児は、エレベーターが必要なのは高いビルか低いビルかがわからないであろう。彼はエレベーターが上下に動くのか、前後に動くのかも知らないかもしれない。どちらの子も、相手がまごついた質問によく答えられるであろう。そういうわけで二人の子どもが真に同じ知能であっても、それぞれのテストでまったく違うことがありうる。これが、オーストラリアの原住民のグループとアメリカ人グループに簡単にテストし、一つの人種が、他の人種より知能がすぐれているということができない理由である」
そして、これと同じことが体力テストにも当てはまるとしているのは考えさせられる。ごく一部しか紹介できないが、「体力をめぐる問題」「スポーツをめぐる問題」「誤ったトレーニング」「ゴルフをめぐる話題」「学校と社会をめぐる問題」の大きく5つの章に分けられ豊富な話題が語られている。気軽に読み進め、それでいて何か考えのヒントを得られるハンディな書である。
(月刊トレーニング・ジャーナル編集部)
出版元:日本工業新聞社
(掲載日:1983-11-10)
タグ:ライフサイエンス 測定 発育発達 体力
カテゴリ スポーツ医科学
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障害者の体力評価ガイドライン 脳血管障害・脊髄損傷
日本リハビリテーション医学会障害者の体力評価ガイドライン策定委員会
障害を持つ人が運動を行う際、安全管理はとくに重要で、そのためには状態の把握が欠かせない。だが、傷害者の体力を評価する指針がこれまでなかったことから、議論を重ね、本ガイドラインがまとめられるに至った。そもそも「体力とは」まで立ち返り、各要素の評価法を紹介している。後半ではリハビリの現場で割合の多い脊髄損傷者と脳血管障害者の体力評価について、Q&A方式で解説している。
運動を取り入れる際に抱きがちなためらいを取り払う一助となるだろう。
(月刊トレーニング・ジャーナル編集部)
出版元:金原出版
(掲載日:2013-09-10)
タグ:体力評価 障害者
カテゴリ その他
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体力学
中谷 敏昭
シリーズ名「はじめて学ぶ健康・スポーツ科学シリーズ」にもある通り、これから専門的知識を吸収していこうという学生のための教科書である。よってテーマに関する最新の知見がわかりやすく整理されている。「体力」は身体的能力に限らず、ストレス耐性や免疫力などの要素も含む。また、20歳代までは向上し、それ以降は低下する。さらにはアスリートや障がい者へのアプローチについても個々に考えて取り組む必要がある。
すでにトレーニングなどの指導者として活躍している人も、現場が変わったときの再確認として参考になる。
シリーズは全11冊が予定されており、本書は5番目。
(月刊トレーニング・ジャーナル編集部)
出版元:化学同人
(掲載日:2014-09-10)
タグ:体力
カテゴリ スポーツ医科学
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