鍼灸の挑戦
松田 博公
著者の松田博公氏は、自身も鍼灸師としての資格を有するジャーナリスト。この著書では、多くの高名な鍼灸師の先生方へのインタビューや自身の経験を通して、鍼灸治療の基本概念や歴史、技術について書かれている。
当然であるが、初めから最後まで東洋医学絶対優位の立場で書かれていたため、西洋医学をバックグラウンドとして持つ私にとっては「本当かよ」というような話もいくつかあった。しかし、文章自体は面白く退屈させないものであったため、読み進めていくうちにどんどん引き込まれていく本でもあった。
本当に興味深い内容もたくさんあり、とくに「中医学理論の問診・脈診・舌診・体表観察・腹部の診察による診断法」や「鍼灸のEBM」「アメリカで鍼灸に保険が使える理由」などの話は大変面白かった。さらに、局所的治療に固執しがちな現代の西洋医学に対して、天候や心理なども考慮した身体全体の治療を行っていく伝統的な鍼灸治療の考え方には学ぶべきところが多いなと感じた。
東洋医学に興味がある方はもちろん、患者が治ることを第一に考えている医療従事者にとって、広く柔軟な考え方を持つためにも一読して損はないはずである。
(宮崎 喬平)
出版元:岩波書店
(掲載日:2012-01-18)
タグ:東洋医学 鍼灸
カテゴリ 人生
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こころと体に効く漢方学
三浦 於菟
東邦大学附属大森病院・東洋医学科教授の三浦氏が、漢方学の基本と実際を紹介した本。第1章「漢方外来へようこそ」では便秘、下痢、風邪、更年期障害、花粉症など症状別に患者との問診のやりとりを再現し漢方の処方例を挙げ、第2章「東洋医学の生命観」ではその考え方を、第3章「Q&Aあなたの悩みに漢方学が答えます」ではさまざまな患者の悩みと、東洋医学的なアドバイス方法を記している。
現代はストレスの多い時代と言われているが、こころの問題がからだに影響を及ぼしていることは多くの人が実感しているだろう。漢方を始めとする東洋医学では、年齢や生活習慣、季節、住環境などの要因から、こころの問題を含めてひとりひとりの体質・症状に合わせた治療を施し、症状を起こさない、つまり「未病」のうちに「養生」して健康を維持する手助けをしてくれる。
からだの不調はあるけど、病院に行くほどではない。しかし、気になる。漠然とした不安やつらさを持っている人には、まず手にとってほしい本である。
2005年5月25日刊
(長谷川 智憲)
出版元:新潮社
(掲載日:2012-10-09)
タグ:東洋医学 漢方
カテゴリ 身体
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よくある症状への手技治療 経絡を用いた按摩・指圧の実技
田中 勝
臨床家が日常的に診ることが多い「肩こり、五十肩、腰痛、膝痛」について、臓腑と経絡の関連に着目して行う手技治療を解説。田中氏の行う按摩は、中国古典医学の臓腑経絡説を重視している。これは胸腹部には12の臓腑があって、それぞれの臓腑が気を発生することによって、胸腹部の募穴、背腰部の兪穴、顔面の感覚器官、上肢に6経、下肢に6経と経絡に気が回ることで人体は生命活動を行っているという考え方からきている。田中氏は募穴を診断に用い、背部兪穴、膀胱経2行線の経穴を治療に用いていると説明する。これらをもとに基本的な治療手順を紹介し、1つの痛みの部位に対し、「患部+背部兪穴+手足の要穴」の3つに治療ポイントを絞り、日常臨床で役立ち、活用できるように紹介している。
2008年7月1日刊
(田口 久美子)
出版元:医道の日本社
(掲載日:2012-10-13)
タグ:東洋医学 手技治療 徒手療法
カテゴリ 東洋医学
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痛くない体のつくり方 姿勢、運動、食事、休養
若林 理砂
本書は、痛みに不安を抱えている方が何をすればよいか、東洋医学を中心にわかりやすく教えてくれる一冊である。治療家の方なら経験があると思うが、患者はもちろん、友人からも身体や痛みに関わる相談事を受ける。相談の内容により簡単に答えられるが、今後のためにも身体に対する考え方など伝えたいことは山ほどある。そのときに、本書の存在を知ってしまった私は、この一冊をまず読んでほしいと言ってしまいそうだ。
身体についてわかりやすく人に伝えるのが私の仕事なのだが、活字に慣れている方なら本当に読んで貰うかも知れない。そのくらい綺麗にまとまった内容なのだ。本書に「痛みリテラシー」という言葉が出てくる。これは、痛みを冷静に受け止め、適切に対処できるようになることをいう。この痛みリテラシーには、学習と訓練が必要で、それを教えてくれるのが本書ということだ。
痛みのメカニズムから、ペットボトルや爪楊枝を使った家庭で簡単にできる東洋医学的治療。ニュートラルな姿勢づくり、生活習慣の改善。治療をする上で患者にも理解しておいていただきたい部分が網羅してある。患者へは自身の身体の取り扱い説明書として、治療家へはアドバイスの参考書として、本書をお勧めしたい。筆者が出会った患者の話や、古武術の考え方にも触れられるのもまた興味深いところである。
(橋本 紘希)
出版元:光文社
(掲載日:2016-04-18)
タグ:東洋医学 養生
カテゴリ 身体
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