そもそも「よい眠り」とは何か 努力によらない睡眠改善のヒント
福田 一彦
アスリートにとって、睡眠の悩みは他人事ではない。パフォーマンスの向上、疲労の回復、ケガの予防と早期回復…そのすべてにおいて、質の高い睡眠は欠かせない。
しかし実際の現場では、睡眠にまつわる情報は玉石混交である。たとえば、
・「夜10時から深夜2時は成長ホルモンのゴールデンタイム」
・「90分の睡眠サイクルを意識すればスッキリ起きられる」
・「高価なマットレスを使えば睡眠の質が向上する」
といった話は、誰しも一度は耳にしたことがあるだろう。これらは本当に根拠のある情報なのだろうか?
本書『そもそも「よい眠り」とは何か──努力によらない睡眠改善のヒント』では、そうした「常識」や「都市伝説」を、一問一答形式で科学的に検証し、回答を提示していく。以下は、その一例だ。
・「夜10時から深夜2時は成長ホルモンのゴールデンタイム」
正しくは「タイミングに関係なく、睡眠の初期に成長ホルモンが多く分泌される」ということであり、「10時〜2時」に限られるわけではない。もちろん、遅すぎる就寝は推奨されない。
・「90分の睡眠サイクルを意識すればスッキリ起きられる」
レム睡眠とノンレム睡眠の周期が「平均して」90分であることに由来するが、実際には60〜120分の幅があり、個人差がある。また、「レム睡眠中が目覚めやすい」とされる説にも確かな裏付けはない。著者の率直なコメントは、「そんなことを考えるくらいなら早く寝てください」。
・「高価なマットレスを使えば睡眠の質が向上する」
マットレスに関しては、「高反発 or 低反発」などの議論よりも、「寝返りをうてる十分な広さ」が重要だと述べられている。また、商品紹介でよくみられる「体圧分散」といった表現は、元々は医療現場での褥瘡(床ずれ)対策として使われた指標である。
このように、本書は睡眠に関する誤解を解きほぐし、「何が大切で、何を気にしなくてよいのか」を明快に示してくれる。
読後には、選手やクライアントから睡眠に関する質問を受けた際にも、「それはホント」「それはウソ」と、科学的に判断しながら自信を持って対応できるようになるはずだ。
(川浪 洋平)
出版元:大修館書店
(掲載日:2025-05-23)
タグ:睡眠
カテゴリ 身体
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