スポーツにおける真の勝利 暴力に頼らない指導
菅原 哲朗 望月 浩一郎
スポーツ指導からいかに暴力を排するか。座談会・論文・インタビュー・アンケートとさまざまな形式、また指導者育成やスポーツの歴史などさまざまなアプローチからこのテーマに真摯に向き合った。編集に携わった多くは弁護士だが、現場の声も聞き、現状暴力が存在するなら状況を変えるために力を合わせていこうという姿勢が感じられる。
トップレベルで活躍し、現在は指導の立場にあるヨーコ・ゼッターランド氏や米倉加奈子氏の現役時代のエピソードはとくに生々しいものだが、暴力が何も成果を生まないことが改めて理解できる。「こうしたら暴力はなくなる」という結論は安易には出ないが、スポーツに関わる人間として考え続けなければならないと思わせる一冊だ。
(月刊トレーニング・ジャーナル編集部)
出版元:エイデル研究所
(掲載日:2013-12-10)
タグ:指導 暴力
カテゴリ 指導
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野球と暴力 殴らないで強豪校になるために
元永 知宏
冒頭、いきなり衝撃を受けた。「野球と暴力はいまだに親和性が高い」という文章が目に入ったからだ。「親和性」という言葉は一般的にポジティブな意味で使われるはずだ。
本書は10名以上の監督・コーチ・選手の「暴力経験者」へのインタビュー形式で進行する。指導者から選手に対する暴力はもちろん、選手間での暴力(上級生による下級生いびり)や罰としての練習(罰走)などその内容は様々だ。
なぜ、ハイリスク・ノーリターンとも言える暴力に手を染めてしまうのか? 指導者・選手ともに、暴力が発覚すれば謹慎、解雇、活動停止などの措置は免れないはずだ。著者はその理由を様々な角度から考察しているが、結論として、①監督な絶対的な権力、②指導者から選手への一方通行のコミュニケーション、③受身姿勢の選手、④甲子園という聖域、の4つにまとめていた。
…が、私はさらにその「根源」があると考えている。
本書の流れと逆転して中盤に「野球界という閉鎖空間」という言葉が出てくるが、これこそが暴力を根絶できない根源要因ではないだろうか。
外部からの指摘を受けない閉鎖空間ではひとたび暴力に手をつければ、その魔力(本文にも「うまく手なずけることができればものすごい効果を生み」とある)に取りつかれ、歯止めが効かなくなる。殴ることが「正義」となり、指導者が「強くなってほしい」と思って殴ることは正しく、また選手は「期待されているから殴られる」ことは正しいと信じるようになる。となると、似たようなことは他の集団でも容易に起こりうるのではないだろうか。男子バスケの強豪校で起こったことも、大手広告企業で起こったことも…あなたの今いる場所はどうだろうか。
本書の問題提起は、野球界のみならず、閉塞感に包まれた今の日本全体に向けられているのだ。
(川浪 洋平)
出版元:イースト・プレス
(掲載日:2020-11-30)
タグ:野球 暴力
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