トップアスリートを創る 日本体育大学アスリートたちの軌跡
日本体育大学学友会運動部 宮村 淳
オリンピックなど、常に競技スポーツの第一線で活躍してきた日本体育大学のアスリートたち総勢21名にインタビューしてまとめた本。トップアスリート育成のためのノウハウ満載。指導者のみならず中・高校生にもお勧め。
A5判 250頁 2,500円+税
(月刊トレーニング・ジャーナル編集部)
出版元:大修館書店
(掲載日:2002-04-10)
タグ:インタビュー 指導 選手育成
カテゴリ 指導
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イルボンは好きですか?
山田 ゆかり
月刊スポーツメディスンで連載中の山田さんの最新の書。写真は原山カヲルさん。著者は、週刊朝日の仕事で韓国のスポーツ選手を取材、毎月韓国に行く生活を過ごしてきた。その中で、スポーツ選手のみならず、特に「新世代」と呼ばれる高校生、大学生に興味を持ち始めた。この本はその新世代75人へのインタビューをまとめたものである。
タイトルの「イルボン」はもちろん「日本」の意味だが、韓国の若者に、日本の国のイメージ、日本人のイメージなどをどんどん聞いていく。著者は当初、日本の若者と同じだと思ったのが、やはり違う点を見出していく。その彼らの素顔を原山さんがカメラに収めていく。
ワールドカップを機に日本と韓国の交流は以前より盛んになりつつある。互いの国に対するそれぞれのイメージがあるが、やがてそれは変貌するかもしれない。
サッカーのワールドカップは単にスポーツイベントではないと言われる。それが本当にどういうことかがわかるのは間もなくである。
(月刊スポーツメディスン編集部)
出版元:朝日ソノラマ
(掲載日:2002-06-15)
タグ:文化 インタビュー 韓国
カテゴリ その他
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逆風満帆
朝日新聞be編集部
それぞれの事情
人は、皆それぞれの事情でピンチを迎える。たとえば、スケートの岡崎朋美の場合はこうだ。「岡崎はその朝、ベッドから起き上がれなかった。腰から両足へ針で刺されたような激痛が走る。(中略)椎間板ヘルニアだった。緊急の手術を要した。腰にメスを入れることはアスリートの終焉を意味する。髪の毛一本の感覚の違いを氷上で追及するスケーターは、筋肉が回復しても末梢神経の切断のダメージははかりしれなかったからだ」。こういったケガはドクター、トレーナーの間では障害に分類される。突発的な事故によって起こる外傷と違い、慢性的な原因がこのケガを誘発しているからだ。一種の金属疲労と言ってよい。そして、この種のケガのいやらしさは、大抵の場合重要な試合を目の前にして起こることだ。ぎりぎりのところでの調整に、最も弱いところから悲鳴を上げていく。
マラソンの高橋尚子の場合は、ピンチはケガだけではない。2000年シドニー五輪で優勝。しかし、続くアテネ五輪の選考からは漏れる。ここに彼女のピンチがありそうだが、実は違うと言う。「(女子マラソンでは)まだ誰もやったことがない2大会連続金メダルの目標はなくなってしまったけれど、大会は五輪だけではないし」と考えていたようだ。だが、「アテネでは野口みずきが金メダルを取った。高橋は日本女子2大会連続金メダルを喜んだ。そして自分も秋にマラソンを走るつもりだった。ところが9月、練習中に足首を骨折してしまう。それから1年以上もレースから遠のくことになる。逆風が吹き荒れる」。師匠である小出監督との考え方の微妙なズレ、マスコミの執拗な高橋限界説。あらゆる逆風の中、高橋は「小出からの独立は、勇気を振り絞った結論」を出す。
人間万事塞翁が馬
こんな諺が思わず口から出てしまいそうな人生の波間を泳いだ人もいる。吉原知子2005年アテネ五輪女子バレー代表、主将。1988年に妹背牛商高から日立バレー部に入部した彼女は1994年「当時在籍していた日立バレー部の部長に呼ばれた。突然の解雇通知だった。(中略)『ほんとにエッという感じでした。優しい言葉もかけてもらえない。その日のうちに寮から出て行け、荷物はほかの選手がいないときにとりに来いって……』」。その後彼女は「人間不信でした。たたかれて、たたかれて、日本にいられない状態」でイタリアのプロリーグに飛び込む。しかし、1996年アトランタ五輪のメンバーとして再び日本からオファーが届きだす。「吉原は迷った。イタリア残留に気持ちが傾きかけたとき、チームメイトに説得された」。結局、1995年ダイエーで第二のバレー人生が始まる。吉原は再び急峻な人生の道を登り始める。しかし、1996年のアトランタ五輪は史上最低の9位に沈む。やはりここでも逆風に晒されることになる。さらに、これに追い討ちをかけたのが日本バレーボール協会が「若手主体」をお題目にとった年齢制限。彼女は「もう全日本は関係ない」と割り切る。ところが、再び人生は彼女を奮い起こす。「若手主体の全日本はシドニー五輪予選で敗退してしまう。史上初の屈辱だった。(中略)日本バレーは窮地に陥った。実力も人気も下降線をたどる。だが昨春、再建を託された柳本晶一監督から主将として全日本復帰を打診された。『何で今ごろ、私なの。ふざけないでよ』。初めは、反発する気持ちが強かった」。だが結局、「33歳、(再び)使命感が頭をもたげる」のだった。
「スポーツや芸能、文化の各分野の第一線で活躍し、成功をおさめている人たちは、どんな苦難や失敗があり、それをどのように克服してきたのか、直接、聞いてみよう」ということで始まった本書に収められている各々のインタビューは、「ほんとうに大きな困難を克服して今の地位に辿り着いた人たちは、実に冷静に自分を分析していました」という結論を導き出す。だがそれだけではないことに読者は気づくだろう。それは、苦難に勝ち、失敗を克服した人たちが結局今も同じ道を歩み続けている、という事実である。「継続は力なり」。この言葉を今一度強く噛み締めてみる必要を感じる。
(久米 秀作)
出版元:明治書院
(掲載日:2006-07-10)
タグ:インタビュー
カテゴリ 人生
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神の領域を覗いたアスリート
西村 欣也
神の領域とは、どのような意味を持つのだろうか。目に見えるもの、見えないものさまざまにあると思うが、共通の認識は持てないのではないかと思う。
さまざまなアスリートにインタビューをしたものを載せているが、個人的な意見としてはもっとインタビューされる側の気持ちを汲み取るような質問が欲しいような気がする。たとえばこの一文。「あなたの非凡な才能を子孫に伝え、21世紀にさらに進化させたいと思いませんか?」という著者の質問に対し、聞かれたスピードスケートの清水宏保選手はこう答えている。「結婚はそういう目的でするものではないでしょう。僕の父は胃がんで56歳で亡くなった。僕自身、ぜんそくをずっと抱えています。身長は161cmしかない。いい遺伝子を持っているとはとても思えない。それでもここまでこられる。それを示したくてやってきた部分もあります。生物学的な進化に無縁でも、自分が生きている間に自分を進化させることができるのです」
清水選手の「自分が生きている間に自分を進化させることができる」という言葉を引き出せたことは、評価できる。しかしながら、清水選手の本当の気持ちはわからないが、私だったらこの質問をされたら、「なぜこんなことを聞くのだろう?」と考え込んでしまう。神の領域に届かない、理解することが不可能でも、近づこうとするならばもっと違うことを聞いてほしい。
しかし、丁寧な取材をしていることも読み取ることができる。橋本聖子選手がアルベールビルオリンピックで冬季五輪史上日本人女子初銅メダルを獲得したときに、痛めている膝を冷やす氷もなくリンクから整氷車が吐き出したザラザラな氷を集めて、膝に当てたという一文などはそういったところが読み取れる。
日々選手や患者と向き合い、当たり前になっている感覚や言葉を、他者に伝える際にはとても有益な本である。
(金子 大)
出版元:朝日新聞出版
(掲載日:2012-10-13)
タグ:インタビュー
カテゴリ スポーツライティング
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