勝つためのチームメイク
堀越 正巳
ラグビーでは、昔から勝負を決めるのはフォワード、勝敗を決めるのはバックスであるという。極端な話、フォワードは肉弾戦(その代表がスクラム)で勝てば、負けた気はしない。
しかし、ラグビーは陣取りゲームである。局地戦でいくら勝とうが、最終的にトライを取らなければ勝敗には負ける。そこで、勝敗を決めるための司令塔役が必要になる、それがスタンドオフだ。
そして、フォワードと司令塔とのつなぎ役が、スクラムハーフという著者のポジションである。著者はその役割を「チームメイク」という言葉で表現している。
チームメイクとは何か? 司令塔のゲームメイクに必要なボールの供給源になると同時に、フォワードの「ムードメーカー」の役割を果たすことであるという。早稲田・神戸製鋼で日本一を経験している著者は、スクラムハーフが「チームメイク」に徹することができれば、強い組織をつくることができると考えている。
「チームメーカー」の存在は、強い組織にはたしかにいる。清原・ローズなど、各チームの4番バッターばかりを集めたときのジャイアンツは勝てなかった。しかし、松本のようなつなぎ役もいるチームは、2009年に日本シリーズ連覇を果たした。そして、サッカーワールドカップの日本代表は、試合に出ない選手がムードメーカー役となりホーム以外で初のベスト16に進んだ。
強い組織をつくること、それは当たり前だが難しい。なぜなら、チームメーカーだけ育てても勝てないのが組織だからである。おそらく、著者自身がその難しさを指導者として日々感じているのであろう。
(森下 茂)
出版元:講談社
(掲載日:2012-10-16)
タグ:チームビルディング
カテゴリ 指導
CiNii Booksで検索:勝つためのチームメイク
紀伊國屋書店ウェブストアで検索:
勝つためのチームメイク
e-hon
今いる仲間で「最強のチーム」をつくる 自ら成長する組織に変わる「チームシップ」の高め方
池本 克之
著者がつくった言葉「チームシップ」、それは「チーム内の地位や役割に関係なく、メンバー1人ひとりがお互いを理解しながら、チームとしての成果のために成長すること」だと定義している。タイトルにもある「最強のチーム」には、そのチームシップをメンバーが発揮して常に一丸になっていることが、唯一の条件だと言っている。
では、その重要なチームシップを発揮するにはどうすればよいのか。その方法が本書で説明されている「TDC(Teamship Discovery Camp)」である。TDCとは、著者がつくり上げた話し合いの方法で、皆が自由に発言しつつも、チームの課題を見つけ、解決策まで決めていくメソッドとなっている。経営者やリーダーがチームづくりをする際にミーティングをしようとしているのであれば、打ってつけの内容だ。
役割分担から、ルール設定、コミュニケーション方法までこと細かく説明されているので、本書で紹介されているTDCを実践してみる価値はある。
しかしながら、私はそういったミーティングを企画、提案できる立場ではない。仕事としてチームには所属しているが、非常勤として肩身の狭い身分である。そんな私だが、ありがたいことに、常勤のスタッフから相談を受けることも少なくない。非常勤というのが、日頃の状況を客観視できる者として新鮮なようだ。
そこで機会があるのであれば、私が所属するリーダーにはこの書籍から学んだことを伝えたいと感じた。それと共に、本書の内容は、チームでのミーティング以外の、1対1のコミュニケーション技術としても活かせるのではないかと感じている。
本書の最初には、著者の失敗談が記されている。能力がある人が陥りがちな失敗例だと感じた。その失敗例からつくり上げられたTDC。説明もわかりやすくまとめられている。このメソッドで多くのチームを成功に導いているのでいるのだから、試してみて損はないだろう
(橋本 紘希)
出版元:日本実業出版社
(掲載日:2015-05-27)
タグ:チームビルディング
カテゴリ 指導
CiNii Booksで検索:今いる仲間で「最強のチーム」をつくる 自ら成長する組織に変わる「チームシップ」の高め方
紀伊國屋書店ウェブストアで検索:
今いる仲間で「最強のチーム」をつくる 自ら成長する組織に変わる「チームシップ」の高め方
e-hon
ホイッスル! 勝利学
布施 努
スポーツの現場において、「本気の火を心に灯す」ということを仕事として、選手たちと日々向き合っている著者。アメリカ留学の際に手元にあったサッカー少年のマンガ『ホイッスル!』の場面を引用しながら、目標を定め、それをクリアしていくための具体的な方法、チームを形づくるためのぶつかり合いの過程、本気でなければ楽しめないスポーツの厳しさなどが丁寧に説明されている。
選手であれ、スタッフであれ、レギュラーや補欠など、立場を問わず、チームとして一丸となってパフォーマンスを発揮するために何をすべきなのか。今、この瞬間にできることを成し遂げるという力の尽くし方を教えてくれる。
(月刊トレーニング・ジャーナル編集部)
出版元:集英社インターナショナル
(掲載日:2009-10-10)
タグ:指導 メンタル チームビルディング
カテゴリ メンタル
CiNii Booksで検索:ホイッスル! 勝利学
紀伊國屋書店ウェブストアで検索:
ホイッスル! 勝利学
e-hon
三流のすすめ
安田 登
なんとなく集団がうまくいっていない。そんな経験をしたことがある人はいるのではないかと思う。私も何度も経験した。なんとなく雰囲気が澱んでいる。何がというわけではないのだが、ギスギスしている感じがする。そのときに私がずっとやっていたのは、個々の技術的な問題を解決するのに時間を割くということだった。
個々が自分の課題をきちんとできるようになれば、そのことによって自信がつき、他人のことを過剰に気にしなくなるのではないだろうか。他人と自分を比べて必要以上に落ち込んだり自分を責めたりしなくなるのではないだろうか。自分ができないからといって他人の足を引っ張るようなことはしなくなるのではないだろうか。今、目の前にあることを一生懸命やってくれたら、結果はそこについてくるはずだ。ずっとそう思っていた。
だが、どんなにそのことに時間を割いても一向によい方向へ行かない。そうこうするうちに、ポツリポツリと離脱者が出始めた。これはまずい。どうも問題はそこではない、と遅ればせながら気がついた。そこで率直に「どうしたらいいと思う?」とメンバー全員に投げかけてみた。するとみんな「この雰囲気をどうにかしたい」と思っていることが分かった。ではこれからどうしたらよいのだろうか。どんな雰囲気になったら、みんなが気持ちよく過ごせるだろう。理想の集団とは。そのために今すぐできる具体的なことは何だろうか。そんなことをかなりの時間をかけて話し合った。明日からこうしよう、と結論が出たときには、全員に「これからはちゃんとする」(できる)という表情が浮かんでいた。
話し合った結果みんなで決めたことは、ちゃんと挨拶をしよう、とか返事をしよう、とかそのような一見他愛のないことだったが、個々の技術さえ上がれば、何もかもうまくいくと思ってひたすら効率のよい練習方法や効果的な内容などを探し求めていた私は、実は彼らが悩んでいたのは全くそうではなかったということを思い知らされた。そして、その話し合いを機に、まるで別集団のように練習に集中し始めたのは、今でもなんだか不思議な体験として記憶に残っている。
本書には「一流になるとは生贄になること」という一節がある。私がやろうとしていたことはまさに他のことを犠牲にして1つのことを極めようとする、その「一流」のやり方だった、ということになる。よく、四の五の言っていないで練習しろ、練習、と思う。文句があればやってから言え、とも思う。主張したいなら結果を出せ、と。しかし実際は本筋はそこではない、ということは現場にいると割によくある話かもしれない。
題名にもあるように、本書に書かれているのは1つのことを極めて頂点に辿り着く方法ではない。あれにもこれにも興味を持ち、2つ、3つと手を出してどれも極めない。二流、三流というのはいわゆるB級C級のことではなく、1つのことを極める人が一流、2つは二流、三流はそれ以上、というような意味合いで使われている。回り道をすること、寄り道をすること。一見無関係に見えるそれらがあっと驚く場所でつながることもある。それが実は万事うまく行く秘訣かもよ? というようなことではないかと私は解釈している。
自分が面白いと思う方へ気の向くままに進み、脇道に逸れてみる。気が済んだら戻ってきてもいいし、また別の道を探してもいい。問題を解決したいとき、ストレートにど真ん中だけを攻めるのではなく、ちょっと引いたり、別の角度から見直したり。冷静になってみれば当たり前のことなのだが、本書はそんな風に物事の見る角度を柔軟に、自由にしてくれる気がする。もしかしたら今あなたが悩んでいることの、その答えは全く思いも寄らぬ別の場所にあるのかもしれない。
(柴原 容)
出版元:ミシマ社
(掲載日:2022-06-23)
タグ:集中 チームビルディング
カテゴリ 人生
CiNii Booksで検索:三流のすすめ
紀伊國屋書店ウェブストアで検索:
三流のすすめ
e-hon
ONE TEAMのスクラム
松瀬 学
私自身ラグビーのプレー経験といえば高校生のころ体育の授業でかじった程度で、ラグビーが体格・体力に恵まれた力と力のスポーツという印象を植え付けられた程度で、それ以上興味がわかなかったというのが正直なところです。ところが2019年のワールドカップで日本代表が活躍し、改めて興味を持ったにわかファンになってしまったようです。
私がラグビーに対し新たな認識を持ったのは単なる力と力のぶつかり合いで日本代表が活躍したのではなく、力プラス頭脳で勝ち進んだことで、今までラグビーに対して持っていたイメージが一新されたからにほかなりません。
「ONE TEAM」というワードが単なる精神論ではなく、戦術・戦略も含む一体感のあるチームという具体的な機能面まで含んだものだったことに興味を持ちました。
本書は「ONE TEAM」が具体的にスクラムにどう機能したかに焦点を当てた内容です。ただ技術論だけではなく選手個々の解釈やイメージまで掘り下げられていますので、そのときのチームの様子がリアルにイメージできました。選手やコーチのそれぞれの捉え方が集結して実際のプレーに結びつく展開はチームの一員になったかのような感覚に陥りました。
まったくのラグビーのド素人がなんとなくわかったような顔をして頷ける戦い方の解説は必読。実は何一つわかっていないのでしょうけど、読み終えた満足感や興奮は「あのとき」を思い出させます。
私のように読了して満足を得る人もいるでしょうが、「ONE TEAM」の発想・着眼をそれぞれのフィールドに持ち込んで展開するつわものもいるかもしれません。読み手の考え一つで「ONE TEAM」を構築できるかもしれません。
(辻田 浩志)
出版元:光文社
(掲載日:2022-08-25)
タグ:ラグビー チームビルディング
カテゴリ スポーツライティング
CiNii Booksで検索:ONE TEAMのスクラム
紀伊國屋書店ウェブストアで検索:
ONE TEAMのスクラム
e-hon
問いかけの作法
安斎 勇樹
読み始めると冒頭に「誰も意見を述べないお通夜ミーティング」というくだりがありました。「自由に意見を言ってください」「アイデアを出してください」とリーダーが呼びかけてもシーンと静まり返ったまま。多くの方が「あるある」と思われたことでしょう。私自身もご多分に漏れずこういったミーティングや会議を経験しています。私の場合、最悪だったのはリーダーだったことも多く、こういう事態を想定して自分自身が用意していたアイデアをご披露し、反対意見もなくシャンシャンで終わったものでした。これってミーティングでも会議でもなくリーダーの一人よがり以外の何ものでもありません。冒頭から昔の経験を否定されたように打ちひしがれながら、それならどうすりゃいいんですか? とばかりに読み進めていきました。
本書の原点がファクトリー型ではなく、ワークショップ型の組織をつくり、構成員全体からのボトムアップによる意見交換をしようというのが主題となります。ファクトリー型とはトップダウンの組織で定型的なモノづくりをしようとする前時代的な組織ととらえ、ワークショップ型はトップの理念と現場の問題点をすり合わせながらモノづくりをする組織と説明してもいいかもしれません。
筆者は一概にファクトリー型がダメでワークショップ型を推奨しているわけではないことを留意すべきです。でないとこの後展開されるワークショップ型の組織の必要なノウハウが膨大なので誤った印象を受けかねません。これからの時代どんな変化が待ち受けているかもしれない不確定な社会の中、従来通りのファクトリー型の組織では変化に耐えられないとの懸念に対抗すべくファクトリー型の組織を提案しているという前提は忘れてはいけません。
筆者がいうところの「孤軍奮闘の悪循環」というのが冒頭にお話しした「ありがちなパターン」なんですが、ボトムアップのファクトリー型のミーティングをするために「問いかけ」をすることによりメンバーの考えを引きだそうとしています。「忌憚のないご意見を」と言われても範囲が広すぎるので、逆に論点を絞った問いかけをすることでメンバー個々の意見を引きだしやすくするというものです。そういってみれば簡単そうに見えますが、「問いかけ」に対する筆者のスキルの高さに圧倒されたのが正直な話。本書を丸暗記して同じことを試みようとしてもミーティングはメンバーや議題などそのときそのときで変わるはずで一から通用するとも考えにくいのです。
私なりに本書を読んでみて筆者のノウハウを実行するために必要なものを考えてみたんですが「俯瞰力」「問題抽出能力」「ユーモア」「観察力」「抽象化と一般化」「状況を整理する力」「自由な発想」「想像力」などいろんな能力が必要だと感じました。
だから「絵に描いた餅」とあきらめるのも選択肢の一つですが、やってみなきゃ何ごともできないのは世の中の理。物まねでも猿真似でもやってみて体験してみたところからしか筆者の言ってることを体感できないでしょう。別にこの本に書いてある方法がすべてではなく、むしろ筆者の体験談が書かれているに過ぎないと感じたらもっと気楽に実践できるかもしれません。そのうちにそれぞれのオリジナルのノウハウが生まれてきてこそ、本当のワークショップ型になったといえるのではないでしょうか。
(辻田 浩志)
出版元:ディスカヴァー・トゥエンティワン
(掲載日:2023-08-28)
タグ:チームビルディング
カテゴリ その他
CiNii Booksで検索:問いかけの作法
紀伊國屋書店ウェブストアで検索:
問いかけの作法
e-hon