日本シリーズ全データ分析 短期決戦の方程式
小野 俊哉
本書は、プロ野球日本シリーズ全59大会350試合のスコアを電子化し、解析を試みたものである。さらに、1903年以来、全104大会開かれているアメリカ・メジャーリーグのワールドシリーズ606試合のデータと比較。また五輪、WBCを含む短期決戦を勝ち抜く秘訣、勝敗のカギを握るのは何なのかを探っている。
短期決戦で最も大きなカギを握るのは、エースでも4番でもなく監督。短期決戦に強いチームと弱いチームの違いも、監督を軸に見てみるとすっきりわかると著者がいうように、選手個々の能力や精神論的なことはほとんど記されておらず、監督を中心としたデータのみからの解析。いままであまり見たことのない内容で、表やグラフと本文を見比べながら、短期決戦での勝敗の因果関係を客観的に理解できる。
日本シリーズでは勝敗パターンはどのようなものが多いか? 4勝3敗が最も多い。ではメジャーと比較してどうか? その中で必勝パターンはあるのか? さらに監督の経験値と勝率も比較…。このように地味なことでも深くデータとして掘り下げていく。このことより森監督の2戦目必勝理論の理由、悲運の名将西本監督などの采配の妙に名前がついたことにもデータから納得できる。
ほかにも川上巨人4回猛攻の謎、終盤を負けない男・古葉竹織、1点差勝利をものにする三原マジックなど、名監督の采配をいろいろな角度からデータで読み解く、読み応えのある一冊である。
私は、クライマックスシリーズはペナントレースでの積み重ねが軽いものになってしまうと感じていたが、五輪・WBCにオールジャパンが参加するようになって短期決戦の人気が高まり、外すことのできない新マーケットとなった以上、短期決戦まで分析し勝利するチームこそ、本当の日本一、世界一にふさわしい監督、チームではないかと思う。
(安本 啓剛)
出版元:筑摩書房
(掲載日:2012-01-18)
タグ:野球 データ分析
カテゴリ 指導
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野球の見方が180度変わるセイバーメトリクス
データスタジアム
本書の題名でもある「セイバーメトリクス」という言葉をご存知だろうか?
これは野球における選手やチームのデータを統計学の視点から見つめ直し、新しい評価法や戦略術を生み出す学問である。
野球では、打率や防御率といった数字で成績が表される。選手の評価も数字上の成績で行われる事が多い。打率3割の打者、防御率1点台の投手など、その数字が評価基準となる。つまり、10回打席に立って3回ヒットを打てる打者は好打者。9回を投げて2点も取られることがほとんどない投手は好投手なのである。シーズンを通じたその結果で、首位打者や打点王、最多勝などの表彰が行われるのだが、あなたがチームの監督ならば、どういった観点で選手を評価するだろうか。 打率3割のバッターが同じ10打数3安打でも、打ち損じたボールが外野手の前に落ちたヒットであれ、特大のホームランであれ、1安打として計算される。これでは正確に選手を評価できないのではないか、より公平なデータの取り方はないか、といった考えがセイバーメトリクスを生み出した。
フォアボールを多く選んで出塁できる打者、長打を打つ確率が高い打者、少ない投球で三振を奪える投手、ホームランを打たれにくい投手など、セイバーメトリクスの視点では様々な角度から野球を見ることができる。野球経験者の私でさえ、その細かい分析には驚いた。メジャーリーグの強豪チームが選手評価の方法として取り入れたのもうなずける。
しかし、セイバーメトリクスはまだまだ発展途中の学問で、課題も多いのだという。例えば投打の分析はある程度行えるが、守備に関してはそれが難しい。エラーやファインプレーは、守備位置やシチュエーションによっても変わるからだ。
本書は2007年の日本プロ野球の記録を基にそれぞれの数値を算出しているが、数字だけでも野球の奥深さが垣間見えてくる。もちろん、筋書きのないドラマと言われるのも野球で、全てが公式や数字で片付けられるものではない。ただ、この様なより深いデータを知ることでオフシーズンの選手の移籍に関する動向など、その選手の成績と評価が相応なものかといったことも考察することができる。従来の評価だけでは見えない部分もセイバーメトリクスで比べることができるので、より優秀な選手を見つけ出すことができ、チーム運営にも効果的だ。
監督のあなたにはセイバーメトリクスを用いて、お気に入りの選手を見つけ出してもらいたい。野球にあまり関心がなかった方にも、ぜひ一度手にとってみてもらいたい一冊だ。
(山村 聡)
出版元:宝島社
(掲載日:2012-10-13)
タグ:データ分析
カテゴリ その他
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なぜ全日本女子バレーは世界と互角に戦えるのか
渡辺 啓太 大塚 一樹
全日本女子バレーのテレビ中継にて、タブレット端末を手にする監督の姿がよく映る。そこにはどんな情報が送られているのか、誰がデータを収集しまとめているのか。そこにスポットを当てた。
表紙の数字とアルファベットの文字列は、実際の試合時に入力されたものだ。激しい情報戦の中、公開してしまっていいのかと感じるかもしれないが、各国代表ともデータの活用方法は日々進化している。では日本代表にて試行錯誤を積み重ねてきたのはと言えば、二十代の若き渡辺氏であった。
渡辺氏が出身校の恩師や代表監督、選手たち、チームメイト、そして家族に支えられながら、「アナリスト」として認められていく様が伝わってくる。スポーツ現場を支えるスタッフにとっては、ここまで全力を注げているかと振り返ったり、真摯に取り組めばきっと認めてもらえると勇気づけられたりもする一冊と言える。
(月刊トレーニング・ジャーナル編集部)
出版元: 東邦出版
(掲載日:2012-08-10)
タグ:データ分析 アナリティクス アナリスト
カテゴリ 指導
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