トレイルランナー鏑木毅
鏑木 毅
全長166km、最大標高2537m、フランス、イタリア、スイスと3カ国を1日かけて走る「ツール・ド・モンブラン」。想像するだけでも大変そうなレースである。だが、トレイルランナーは自然の山という平坦な道にはない自然を感じることができる。
自然は生き物、その姿は変容する。道は舗装されていない、気候にも左右される。誰かと競争して勝利をつかむより、自然とランナーの体調そして心が走るうえでの相手になる。勝負の相手が人ではないのがロードランナーにない魅力だったりするのではないだろうか。もちろんレースに出るからには勝ちたい。ただ戦う相手が人だけでは視野が狭い。
走るだけではなく、もっと大きいものの見方ができるようになるとつらいことが楽しいことに思え、自然のありがたさを感じるような気がする。
(佐々木 愛)
出版元:ランナーズ
(掲載日:2012-10-13)
タグ:トレイルラン
カテゴリ 運動実践
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トレイルズ 「道」と歩くことの哲学
ロバート ムーア Robert Moor 影山 徹 岩崎 晋也
私の生まれた町は道路が東西南北に規則正しく伸びていて、碁盤の目のようになっている。北に行けば標高が高くなり、南に行くほど海に近くなるので、北に行くことを「上に行く」、南に行くことを「下へ行く」と言い、道案内はそれで通じた。鉄道も3路線あったが全て東西に長く伸びるだけであった。
高校卒業とともに上京した私は、縦横無尽に走り枝分かれする道路や地下鉄に戸惑いを隠せなかった。
本書の道案内役はロバート・ムーア。ミドルベリー大学の特別研究員である。彼はアパラチアン・トレイル(アメリカ東北部を2,600kmにわたって連なる山脈)の全区間スルーハイクから、 ある疑問を持った。「道はどのようにしてできたのか」「なぜこの場所にできたのか」。その答えを求め、整備された都市はもちろん、原住民族のみが知るような地図にない道、目に見える道だけでなくアリの行列から古代生物の化石まで世界各地を探索した。
やがて彼は、一つの答えにたどり着く。
”道=トレイルには物語がある”。動物が生存のために天敵を避け、食料のある場所までの安全な道を作った。人類はすでにある道をできるだけ早く移動するために、また情報を伝えるためにテクノロジーを発達させた。人類の、そして地球に住む生物の太古からの営みと歴史がトレイルには刻まれていた。
我々がなぜ今ここにいるのか、どうやってこの場所にたどり着いたのか。本書は幾重にも積み重ねられたトレイルの“これまで”の物語を知るとともに、我々が“これから”をどう生きるかを考える哲学書でもある。
ロバート・ムーア氏とともにトレイルを辿る旅に出てみてはいかがだろうか。きっといい道案内役になってくれるはずである。
(川浪 洋平)
出版元:エイアンドエフ
(掲載日:2019-08-17)
タグ:道 トレイル
カテゴリ 人生
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