魂の箱
平山 譲
「やはりこんども、諦めない者たちが書きたかった」筆者平山譲は、「あとがき」にこう記している。
魂の箱(soul box)
1991年6月14日、主人公畑中清司は名古屋市総合体育館特設リング上に立っていた。WBC世界ジュニアフェザー級の王者として、彼は挑戦者ダニエル・サラゴサの顔面を、幾度も右ストレートで強打していた。試合は一方的なチャンピオンペース。しかし、第5ラウンドに奇跡が起こる。それも、挑戦者に……。
「あたるとは思わなかった」パンチが致命的となり試合の形勢は逆転する。そして、敗戦。彼にとって世界王者として闘った最初の試合が、皮肉にも生涯最後の試合となった。その翌年、彼は引退のテンカウントゴングを受けることになる。
畑中は、荒れた。飲み、酔い、潰れた。リング上で闘う術を失った彼は、今度は虚無感、絶望感と闘わなくてはならなかった。しかし、彼は、その闘いにも敗れてしまう。
それから
引退から2年が経っていた。食べていくためのカネさえ窮していた畑中は、ある人を訪ねるために横浜の地に足を踏み入れる。その人の名は、元世界フライ級王者花形進。畑中は、世界挑戦5度目でチャンピオンベルトを手に入れた苦労人花形の中に引退後のあらたな目標を見出せればと、彼の経営するボクシングジムを訪れたのだった。
「引退後、なにされました?」畑中は花形に開口一番そう訊いた。
「俺、引退してから焼いてたよ、焼き鳥」
「なあ畑中、世界チャンピオンになったからって店をもたせてくれるほど、世間はあまくねえよ、世界チャンピオンもな、第二の人生はまた、四回戦ボーイからだよ」
その日以来、畑中は働き始める。しかし、それは単なる改心ではなく、新たな人生の目標を見出したからに他ならない。
「俺は闘うことでしか生きられん」
「だって、俺は、ボクシング屋やから」
「SOUL BOX HATANAKA BOXING GYM」はこうして生まれる。
教育者(トレーナー)
その「魂の箱」の門を二人の青年が叩く。一人は、まったく自分自身の存在価値を見出せず、ただただ現在を彷徨する高校生。もう一人は、無軌道な青春を過ごした結果、取り返しのつかない過ちによって、無二の親友を失った不良少年。その二人に対して畑中が注ぎ込む熱情と彼らが迷ったときに畑中が見せる笑顔がいい。
「本書は、ある路地裏の小さな箱(ジム)から、自己の存在証明にのぞむ者たちの心のありさまを探求した記録である」と筆者は結ぶ。
久しぶりに、魂の熱くなるのを感じさせる作品に出会った。近頃感動する心を失いかけている諸君、自らの魂に衰えを感じ、日常生活に倦んでいる諸君、読むべし!
四六判ハードカバー 272頁 1,700円+税
(久米 秀作)
出版元:実業之日本社
(掲載日:2002-06-10)
タグ:ノンフィクション ボクシング
カテゴリ 人生
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おやじファイトLOSER 勝っても負けても明日からまた仕事。
熊谷 美由希
おやじファイトは、基本的に33歳以上に限定されたボクシング大会である。これは、そんなおやじファイターたちの写真集である。日常の普段の仕事の様子とともに、試合時の表情が切り取られている。
ホテルマン41歳、営業マン47歳、消防士39歳、建築業50歳など、紹介文は職業と年齢のみ。まさに無名選手という扱いであるが、それによってどのような顔をして仕事に向かい合い、そしてボクシングに打ち込んでいるか、浮かび上がる。
(月刊トレーニング・ジャーナル編集部)
出版元:有峰書店新社
(掲載日:2009-09-10)
タグ:ボクシング 写真集
カテゴリ その他
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ハードパンチャー育成メソッド
尾下 正伸
スポーツにはセンスと言われる、先天性のものがあります。「一流と言われる人がもちあわせ、生まれながらにして身につけているもの」です。
では、センスがない人は強いパンチを打つことはできないのか? 私はすべての物事には「コツ」があると感じています。
速く走るコツ、速いボールを投げるコツ、スムーズに仕事をするコツ、強いパンチを打つコツ…。本書はパンチということに焦点を当て、ハードパンチを打つコツをつかむための身体の使い方などが書かれています。強いパンチを打つためはもちろん、他の種目のスポーツでも、身体の使い方についてヒントを得ることのできる一冊です。
(大洞 裕和)
出版元:スタジオタッククリエイティブ
(掲載日:2014-07-29)
タグ:ボクシング
カテゴリ 運動実践
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ムエタイ破りのキックボクシング
石井 宏樹 河合 宏介
この本を手にしてまず、目に入ってくるキックボクシングの文字、そして、「ラジャ」、「石井宏樹」の文字。「ラジャ」とはなんなのか? 「石井宏樹さん」とは誰なのか?
「ラジャ」とは、正式には「ラジャダムナンスタジアム」であり、タイにある最高権威をもつムエタイ試合会場の一つ、「石井弘樹さん」とは、ラジャダムナンスタジアムにおいて、数少ない外国人世界王者で、外国人王者として防衛にも成功した世界初のキックボクサーです。
本書はそのラジャを制した石井宏樹選手の実体験についての読者に向けてのメッセージや基本、応用動作、実践テクニックなどが書かれています。私は、この本は格闘技を始めた、始めようとしている方に非常にわかりやすい、イメージしやすい本だと感じています。
写真やポイントがわかりやすく、多いことはもちろん、書かれている表現が感覚的な表現をしていることから、実際に動作をしているとき、意識しやすくしてくれると感じる。
(大洞 裕和)
出版元:スタジオタッククリエイティブ
(掲載日:2014-09-17)
タグ:ムエタイ キックボクシング
カテゴリ 運動実践
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破壊力が格段に上がるハードパンチャー育成メソッド 映像編
尾下 正伸
元プロボクサーの尾下氏が、単に「強いパンチ」ではなく女性や子どもを含め誰でも可能な強いパンチの打ち方をまとめた。
スポーツ選手以外の人は、パンチというとどうしても腕を意識しがちになるが、全体を連動させる身体の使い方から始まり、具体的なストレートなどの打ち方に入っていく。悪い例の写真も載せてあり、未経験の人でもポイントを意識しながら習得できそうだ。
(月刊トレーニング・ジャーナル編集部)
出版元:スタジオタッククリエイティブ
(掲載日:2013-06-10)
タグ:ボクシング パンチ
カテゴリ 運動実践
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「頭と体」に効く!ボクシング体操 揺すって、力を抜いて「肉体改造」
豊嶋 建広
これまで紹介されてきたエクササイズ、とくに健康のための運動を念頭においたものでは、素早く反応するための敏捷性のトレーニングは避けられがちであったと著者は言う。本書では、ボクシングや空手において指導や研究を行ってきた経験から、まずセオリー編として脳と身体のトレーニングについて解説を行う。素早い動きをするためには、まず力を抜くことが大切であり、ボクサーは脱力の名人なのだそうだ。そして、ベーシック編として脱力を味わい方から写真を使ってエクササイズを紹介。段階的にボクシングの動きに近づいていく。コーディネーション編では脳と身体能力を鍛えるもの、そして最後にアドバンス編として脳と運動機能を同時に鍛えることを狙ったエクササイズが紹介されている。チョキチョキパニックなどのエクササイズ名も面白い。
(月刊トレーニング・ジャーナル編集部)
出版元:講談社
(掲載日:2008-07-10)
タグ:体操 ボクシング
カテゴリ 運動実践
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