一歩60cmで地球を廻れ 間寛平だけが無謀な夢を実現できる理由
比企 啓之 土屋 敏男
「止まると死ぬんじゃー」
てっぺんに巻き毛の生えたかつらにチョビひげで「止まると死ぬんじゃー」とステッキを振り回すおじいさんは「最強ジジイ」というらしい。私は大阪の人間で、小さい頃から吉本新喜劇のファン。中でも不条理なギャグのオンパレードである間寛平さん、いやいくつになっても「寛平ちゃん」と呼びたいその人の大ファンだ。
そんな彼が1995年、24時間テレビの企画の1つとして、阪神大震災の被災者を元気づけるため彼は神戸から東京まで1週間で走り抜いた。正確な距離はわからないが、ざっと600キロ余りの距離である。途中応援に駆けつけた明石家さんまさんが、「兄さんもうこんなあほな事やめときや」と言っていたが私も同感で、周りの人たちのように下手に励ますなどできないと感じていた。
思いつきを現実に
そのほかにサハラマラソン(総距離245km)やスパルタスロン(同246km)をも完走しているこの鉄人が今、マラソンとヨットで地球を一周するという壮大なプロジェクトを敢行している。その名を「アースマラソン」という。この壮大な企画が立ち上がった経緯を中心に書かれている本書は、(株)吉本デベロップメント社長、そして日本テレビのディレクターによる共著である。このプロジェクトをマネージメントし、そのコンテンツをビジネスに結びつける主要スタッフによる、アースマラソン前史と中間報告という形になっている。とくに比企氏は寛平ちゃんと2人で太平洋ならびに大西洋をヨットで渡りきった同志でもある。
いくら彼が長距離走において鉄人級であるにせよ、地球一周走るなんて常識のある人ならちょっと考えられない。それも「木更津のローソンを過ぎたあたりで急に地球一周走ると降りてきて」と天啓のようにひらめき、「なんぼあったらできるんやろう」と、自前でやろうと考えたのが事の発端らしい。そんな思いつきにとらわれた本人とは別に、時間と資金そして人材をかき集め、コンテンツとしてそれを活用することを考えた周りの人々が、数年がかりで現実にしたわけだ。
トレーナー業務を想像
寛平ちゃん自身、不安要素も山ほど持っているだろうし、どれだけ達成までの計算が立っているのかわからない。世界平和を祈願してだとか、世界中の人々を勇気づけるだとか、何か御大層なお題目を掲げているわけでもない。途中で果たした東京オリンピック・パラリンピック招致活動も後付けのイベントだ。「目立ちたいから」と本人は話しているようだが、要するにやりたいことをやっているだけだ。この旅の途中で還暦を迎えたこの人は、友の訃報に接して人目もはばからず泣き、時には弱音も吐き、どこの国でもおなじみのギャグを披露する。そして毎日50km走る。
こんな人にトレーナーとしてサポートさせてもらえたらと僭越ながら想像してみると、確かに高揚感もあるが、それより大きな恐怖がこみ上げる。確かに、今この一瞬のために寿命が縮んでもいいと考えるアスリートも多いし、小賢しい常識という奴を乗り越えてないと、新しい風景は見られないのも事実だ。やる前に結論を出して立ち止まってしまえば、その先に広がる景色を見る術を放棄することになる。
非合法な方法に頼ることは許されないにしろ、壁を破ろうとのたうち回るアスリートにいわゆるスポーツ医学の専門家としての常識を覆しつつ、とことん付き合うというコミットメントが必要になることは一般のトレーナー業務でも多い。ただ、この文字通りの「最強ジジイ」が「止まって死なない」ようにサポートするなど、巨大な覚悟と巨大な遊び心が必要だろう。
この人はカッコいい
それにしても奥方の光代さんから「次から次へと好きなことをしたらいいんですよ。この人はそういう人やからね。」と言ってもらえるこの人はカッコいいと思う。しかし本当に危険なのはここからだ。何より無事を、いやご本人が納得するところまでやり抜くことをただ祈りながら、遠い異国の地にいる人を思うことにする。
(山根 太治)
出版元:ワニブックス
(掲載日:2010-01-10)
タグ:陸上 マラソン 芸能
カテゴリ 人生
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100km・ウルトラマラソン
夜久 弘
ウルトラマラソンのランナーでもある著者が出場した「丹後100kmウルトラマラソン」の体験記とウルトラマラソンを介して出会った8名のランナーの物語をまとめた書籍。ウルトラマラソンの持っている魅力が様々な視点から語られている。
競技となると勝敗やタイムにこだわる必要はある。しかしどうやらウルトラマラソンの魅力はそこではないらしい。景色を楽しみ、空気を楽しみ、出会いを楽しむ。マラソンと名前は付いているが、競技とは全く別物のようだ。
もちろん途中で制限タイムも設定されているので、それをクリアできなければ強制終了となってしまう。しかしそれをクリアするために、速さを求めているわけではない。
本書の中には途中の制限タイムに間に合わないのが確実だが、そこに向かって歩みを進める方の話も出てくる。10時間以上走り続け、それでも途中で強制終了させられる。決して良い結果は待っていないのがわかっていながら、そこに向かって歩みを進める彼ら。彼らの脚を動かす原動力はいったい何であろう。
(澤野 博)
出版元:ランナーズ
(掲載日:2012-02-07)
タグ:ウルトラマラソン ノンフィクション
カテゴリ 人生
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決定版!! 100kmウルトラマラソン
夜久 弘
「知能」としてのランニング
人は一体いつ頃から、自らの「本能」という呪縛から開放されて「知能」としての走りを満喫できるようになったのだろうか。――生きているものは、すべて動くと言っても過言ではない――生命科学における生体運動に対する知見である。その分野の専門書によれば、神経細胞などがまったく見られない原生動物でさえ、細胞中に運動支配中枢が存在し運動すると言う。
しかし、決してむやみやたらと動き回っているのではない。自らの生存に不適合な環境を避け快適な環境下に移動するための、いわゆる適応的行動を起こしているのである。これを走性(taxis)と言う。
この「走性」と似たものに「反射」がある。反射は遺伝的神経機構の産物という点で、生まれつきの行動と定義できる。つまり、本能の一種である。人間が立ち、歩き、走る、という一連の二足直立運動は、この反射機能によるところが大きいことは周知の事実である。
つまり、人間の行動の本来的に意味するものは、外界からの刺激に対する単純適応行動反応と見ることができる。しかし、これだけでは人間の行動を説明するのには十分とは言えない。なぜなら、人間の行動を理解する場合、学習に基づく行動反応を無視できないからである。学習に基づく行動反応とは、知能のことである。つまり、「走る」という行為とは違い、「ランニング」という行為は、マズローの欲求段階説に従えば、生理的欲求や安全欲求を満足させるための行為ではなく、さらに高位の、自己実現を可能とさせるための行為と言える。人間独特の知能あってこそ可能な行為が、ランニングと言えるのだ。
ランナーの数だけあるランニング
ところで、私事で恐縮だが、このランニングとは私自身何を隠そう20年来の友(?)なのです。この20年間、太ったと言っては走り、うまい酒が飲みたいと言っては走り、旅行先で走り、引っ越したと言っては走っている次第です。知らない町を走るのは、案外楽しいのだ。しかし、今回初めてこの本を手にしたときは、タイトルや目次などをざっと見て正直言って驚嘆してしまった。なにしろ、著者を筆頭に100km、200km、果ては4200kmも走った人も出てくるではないか。
多くとも10km程度のジョギングしか経験したことのない私にとって、本書を精読するまでは、ここに出てくるランナーの皆さんは別世界に住む方のように思えた。ところが、読み進むに従って、これは間違いであることに気づく。みんな普通に生活している人々なのである。著者の文章の優れているところが大きいが、行間のあちこちから、本書に出てくる人々の走る姿が見え、走っている沿道の応援する人々の声が聞こえてくる。読んでいて、何かとても美しい小説に出会ったような錯覚を覚えた。
それと、本書のもうひとつうれしいところは、出てくるランナー皆さんのそれぞれのトレーニング方法が紹介されていること。要は、みんな自分の好きなようにやっていて、それがこのランニングの一番大切なところだという筆者のメッセージがよくわかる。ランナーの数だけランニングの方法があるということなのだ。
本書を読んでウルトラマラソンに目覚める方も多いのではないだろうか。そう書いている私もなにやらお尻がムズムズしてきました。
(久米 秀作)
出版元:ランナーズ
(掲載日:2002-10-10)
タグ:ウルトラマラソン
カテゴリ 運動実践
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駅伝がマラソンをダメにした
生島 淳
怪物番組
タイトルが刺激的だ。これが『マラソンは駅伝によってダメになった』ではいけない。多分、書店で何か面白い本はないかと探していた読者にとって、“駅伝”の文字は真っ先に目に飛び込んでくるし、好感も持つはずだ。「駅伝かぁ。最近すごいよなぁ。正月の名物になったもんなぁ。番組の視聴率もすごいんだろうなぁ。怪物番組だね、きっと」てなところで、次の“マラソンをダメにした”に目が移る。「そう言えば、最近日本のマラソンは女子はよいけど、男子はさっぱりだね。これは、駅伝のせいなのか? でも、駅伝ってだいたいマラソン選手を育てるのが目的でやっていたんじゃなかったっけ!? 変だな、面白そうだなぁ、この本買ってみようかぁ」となる。読者にわかりやすい言葉で、なおかつ適度に興味を刺激するタイトル。その点で、本書は先ず合格点。このほかに著者には「スポーツルールはなぜ不公平か」といったタイトル本もある。こういった著者のスポーツに対する独特の着眼点には感心しきりである。
さて、話をもとに戻そう。先ほど本を買うことにした読者の疑問の答えは?“駅伝って、マラソンの強化策?”なのか。本書は「ひと昔前、箱根駅伝は、極論すれば選手たちの息抜きのための大会だった」の一文から始まる。「1912年、日本はストックホルムで開かれた第五回オリンピックに初参加したが、マラソンを走った金栗四三氏は残念ながら棄権してしまった。そこで、駅伝という名前はまだなかったものの、ロードをリレーしていく競技を作って長距離の強化を図ろうとしたと伝えられている」。どうやら、読者の疑問は正解だったようだ。
メディアとスポーツ
タイトルにこだわるようだが、よいタイトルは読者の期待も裏切らない。では、なぜ駅伝はマラソンをダメにしつつあるのか。著者はその原因に“箱根中心のスケジュールが陸上競技界を席捲しつつある”ことを指摘する。「取材を進めていくと、箱根に出場するにはとても10月からの練習では間に合わないことがわかってくる。とにかくほとんどの学校が、1月2日と3日にチームのピークを持ってくるように調整を進める」そのため「駅伝に力を注いでいる学校はインカレを軽視する場合も多い」のが現状だ。つまり、トラック種目が軽視され始めた結果、マラソンに必要な基礎的な走力を身につける機会が減ってきていると言うのだ。「(マラソン日本最高記録保持者)高岡寿成は、(中略)箱根とは無縁の生活を送り、日本のトラックの第一人者(3000m、5000m、10000mの日本記録保持。2005年11月現在)となって、マラソンに転向してからマラソン日本最高記録をマークしている」の例や世界のトップマラソンランナーの経歴を挙げて、著者はトラック競技の重要性を説く。
しかし、現状ではまだまだ“箱根優位”は変わらない。そこには巨大なメディアが関与しているからである。「そして最近は、箱根を走ることがゴールだと考える選手も増えてきた。それだけテレビ中継の影響は大きいということである」。それはそうだろう。正月に真剣勝負である。学生(アマチュア)スポーツである。波乱万丈もある。涙あり、笑いあり、人情もある。これほどの日本人の心をくすぐる最良ソフトをメディアがほっておくわけがない。さらに、大変な広告媒体でもある。視聴者はひたすら選手の走る姿を観る。だから、出場校には絶好の宣伝の場となる。高校生も箱根を走りたがる。かくして、日本のお家芸と言われたマラソンには誰も見向きもしなくなる!? であろうか。来年は大阪で世界陸上が、2008年は北京オリンピックだ。しかし、世界陸上やオリンピック種目には駅伝はない。世界のトップにいてこそ、駅伝の魅力も増すというものである。駅伝の魅力は理解しつつも、井の中の蛙にならぬようにしてもらいたい、と著者も思っているに違いない。
(久米 秀作)
出版元:光文社
(掲載日:2006-03-10)
タグ:マラソン 駅伝
カテゴリ その他
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5時間を切る! マラソン完走BOOK
牧野 仁
本書は、初めてのマラソン出場で完走、そして5時間以内の走破を目標に掲げている。著者が提唱するのは、意外なことに「走らない」という方法である。
まず、楽に走れるようになるためのドリルとして、股関節の柔軟性向上のためのランジや肩甲骨エクササイズとしてのバタフライ、手の力を抜くための「昔チョキ」(親指、人差し指、中指を伸ばす)での腕振りなどが紹介される。
そして、長く走るためのドリルでは、ストレッチングのほか「仮想ロープ引きウォーキング」「仮想マリオネットウォーキング」でよい姿勢で体幹部の移動感覚を身につけ、四肢の協調運動ができるようなエクササイズを紹介。
最後に、速く走るドリルとして、バウンディングなど。この3分類、計20種類が写真つきで紹介されている。動作をイメージでインプットすることを目指したDVDも付属。姿勢づくりを中心とした「走らない」エクササイズで、段階的に上達していくことで、誰でもどこでもできるドリルであるという。
(月刊トレーニング・ジャーナル編集部)
出版元:主婦の友社
(掲載日:2009-01-10)
タグ:マラソン 走り方
カテゴリ 運動実践
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瀬古利彦 マラソンの真髄
瀬古 利彦
トップレベルの競技者だった著者が、現役時代に何を考え、練習に取り組んでいたのか。
「練習は、レースで勝つために行うもの」
なぜその練習をしているのか、あるいはなぜする必要があるのか。試行錯誤をしながら、自分で考えられるようになれば、世界に近づけるかもしれない。
世界を目指している競技者は、種目を超えてぜひ読むべき一冊である。
(澤野 博)
出版元:ベースボール・マガジン社
(掲載日:2012-10-13)
タグ:マラソン
カテゴリ 指導
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目からウロコのマラソン完走新常識 だから、楽に走れない!
飯田 潔 牧野 仁
マラソン指導者である牧野氏と、シューズやインソールに関する専門家である飯田氏の共著。一般のランナーがマラソンの練習を健康的に続けるためのアドバイスを、それぞれの経験に基づいてコンパクトにわかりやすく解説している。
走り方については、走り方の基本となる腕の振り方や呼吸法、チョキで走るなどの方法が紹介されている。さらに実際のレースで役立つ「裏ワザ」として、レース参加に関する年間の組み立てから、当日の移動、トイレに関してまで細かくまとめられている。
なお、シューズは買うのは夜がよい、とこれまで言われてきたが、実際には違うそうだ。本当の自分の足に合うサイズのシューズをどのように選ぶか、納得のいく説明がしてある。ほかにも足の指が黒くなってしまう理由など、身近な疑問に答えてくれている。
(月刊トレーニング・ジャーナル編集部)
出版元:実業之日本社
(掲載日:2010-01-10)
タグ:マラソン
カテゴリ 運動実践
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楽して走ろうフルマラソン
牧野 仁
より速く、より楽に、そしてより楽しく走ることは多くの市民ランナーの願いである。それを実現するには効率のよいランニングフォームを身につけることが近道である。具体的には体幹が安定していること、手足(腕と脚)は肩甲骨と股関節によって動くこと、重心を高い位置に維持できることなどがある。本書では、これらが自然にできるように簡単なドリルが紹介されている。
本書には著者自身がランナーとして、また多くの市民ランナーを指導してきた豊富な経験が詰まっている。記録向上を目指すランナーやより快適に走りたい人にはお勧めの一冊である。
(村田 祐樹)
出版元:ランナーズ
(掲載日:2012-10-13)
タグ:マラソン
カテゴリ 運動実践
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フランク・ショーターのマラソン&ランニング
フランク・ショーター 日向 やよい
本書の著者であるフランク・ショーター氏は、1972年にドイツのミュンヘンで行われたオリンピックのマラソン競技で金メダルをとり、さらに1976年のモントリオールオリンピックでは銀メダルを獲得、また日本でも福岡国際マラソン4連覇という業績をもつ、世界的に有名なトップアスリートである。そのフランク・ショーター氏が、効果的なマラソン&ランニングのトレーニング方法を伝授しているのが本書である。
ショーター氏は心理学士、弁護士の資格も持ち、スポーツウエアの開発を手がけるなど、その活躍は幅広い。そうした経験もふまえ書かれた本書は、ランニングについての基本的な内容から、やる気を引き出すプログラム、減量プログラム、栄養、正しい靴やウエア選び、障害予防のアドバイスなど、日々のランニングを楽しむ初心者から、レースに参加して記録を更新したい上級者まで、実践的に役立つ内容がオールカラーで解説されている。
手にとって読んでいるだけでも、速く走れる気にさせてくれる一冊である。
(田口 久美子)
出版元:ガイアブックス
(掲載日:2012-10-13)
タグ:マラソン
カテゴリ 運動実践
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メロスたちの夏
夜久 弘
マラソンを走る人は、精神力が強いのだと思っていた。ましてやウルトラマラソン(100㎞)である。しかし、どうもそうでもないらしい。
以下著者の言葉である。
「レース前にはトレーニング不足は精神力で乗り切ってみせる、と意気込み、本気でそう思っている。実際には疲れ切った身体の中からは精神力は湧き上がってはこない。精神力はトレーニングに比例して培われていくものなのだ。精神力が身体のどこかの引出しに別個にしまわれていて、いざというときに取り出して使うというシステムにはなっていない」
強い精神力は、当たり前だが努力した結果生まれる。そういえば、プロゴルファーの青木功さんは、「体・技・心」であると言う。まずは練習する体力をつくる。するとたくさん練習できるから、技術力が上がる。そして初めて、強い精神力がつくのだと。
トップアスリートもスポーツ愛好家でも、等しく流れているものがある。それは時間である。そして、時間のかかった分だけの、見返りの量も等しく流れているようである。
ウルトラマラソンからもらえる見返りを、著者はこう表現する。
「今日という1日は単独では存在しない。つらかったあの日、悲しかったあの日、努力したあの日の連なりの中にやってきた日なのだと」。いつでも、近くにおいておきたい言葉である。
(森下 茂)
出版元:ア-ルビ-ズ
(掲載日:2012-10-14)
タグ:ウルトラマラソン
カテゴリ エッセイ
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一歩60cmで地球を廻れ 間寛平だけが無謀な夢を実現できる理由
比企 啓之 土屋 敏男
「私が未来について語ったらおかしいかしら?」というような内容を老婦人が語るテレビCMがあった。「否」見た者にそう思わせる独特の説得力があった。
だが還暦を迎えようとする男性が自分の足とヨットだけで世界一周しようとしたら、それは明らかにおかしい。
本書はタイトル通り、芸人・間寛平氏のワールドマラソン挑戦を描いたドキュメントとなっている。氏は現在まだ挑戦を続行中であり、本書ではこのおかしい挑戦スタートに至るまでのプロセスが主に描かれている。
地球一周というのは、たんに約4万kmの距離や途中のケガや病気の危険だけが問題になるのではない。地平線しか見えない場所、剥き出しの岩肌が見える場所、さらには政治的に不安定な紛争地域もある。そのような場所を車や飛行機で迂回することはせずに、自分の体だけで走ってみたい。テレビ局の企画としてはリスクが大きすぎて誰も思いつかなかっただろう。
ただ、間氏はふと「やってみたい」と思いついてしまった。意外にも本気だったので、だんだん周囲が実現に向けて動き、後づけで企画となった。
誰から見ても無謀だと思うことを実現するために1つ1つのハードルを越えていき、各方面多くの人にさまざまな形での応援を受けてスタートにまで漕ぎつけた。無理だと思われるモノへの挑戦はスポーツの真髄であり、実現化へのプロセスは各方面への手本となりうる。とくに“文化”という言葉に頼る一方で、メジャー化できていない競技の関係者にとっては一読の価値があろう。
(渡邉 秀幹)
出版元:ワニブックス
(掲載日:2012-10-16)
タグ:テレビ 企画 マラソン
カテゴリ エッセイ
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目からウロコのマラソン完走新常識 だから、楽に走れない!
飯田 潔 牧野 仁
マラソンが、依然ブームである。もはやブームを通り越して一種の嗜みと言うかナンと言うか、ある種の習いごとのようなものとして定着してしまった感すらある。都会ではランナーズステーションなるものが設置され、ピアノ教師やバレエインストラクター同様、ランニングインストラクターという肩書きのプロまで活躍中という昨今である。
が、底辺が広がれば、その分悩みの種類も増える。アクシデントも増える。そして、マラソンにおけるそれは「タイムが縮まらない」「足が痛い」といった切実なものから、「似合うウェアがない」「やせない」といった微笑ましい(失礼!)ものまでまさにピンキリなのだ。
本書は、そんなマラソンにおけるさまざまな悩みや“なぜ”に2人のスペシャリストが明快な答えを提示してくれる、How to 本ならぬ裏ワザ本。自らのクラブを「日本一走らないランニング教室」と自負する指導者と「シューズと足とインソールの専門店」の代表者が、文字通り目からウロコの解説とともにマラソンに関する疑問を小気味よく解き明かしてくれている。
たとえば、路上でよく目にするタオルオンネック(タオルを首にかけるスタイル)。こんな些細な事柄に関しても、のっけから正攻法でサラリと解説、注意を促してくれる。また、一方ではシューズ選びの際の「爪先にプラス1cmの余裕を」と言われる定説に対して、豊富な専門的データと実例をもとにしっかりとした否定的見解を示しつつ、ではどうするか? といった点にまで踏み込んでなるほど、というアドバイスもしてくれている。
こうした愛情あふれる専門的解説や根拠のない定説に対するツッコミのオンパレードに通底しているのは、著者たち自身も語る“なぜ?”を大切にする視点や、「マイナスのものをまずはゼロにする」というシンプルなスタンスに他ならない。著者の一人はさらにこうも語る。情報が氾濫する世の中で、「カラダとシューズがあれば気軽に楽しめるスポーツ」だからこそ、そのカラダとシューズを侮らず、正しい知識を持ってほしい、と。
一般から本格派まで、ランナーは読んでおいて損はない一冊。新書判というのも手に取りやすくて嬉しい。
(伊藤 謙治)
出版元:実業之日本社
(掲載日:2012-10-16)
タグ:ランニング マラソン
カテゴリ 運動実践
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フランク・ショーターのマラソン&ランニング
フランク・ショーター 日向 やよい
本書著者は、1972年ミュンヘンオリンピックのマラソン金メダリストで、大学時代の指導教官から学んだランニングのためのトレーニングとその要素を我々読者に伝えてくれる。
初心者でもわかりやすくウェアやシューズの選び方、どこを走るかなど、ランニングに取りかかる以前の問題から入り、無理のないプログラムでまずやってみることから目標を立てるまでの道筋が明確になる。準備運動やレジスタンストレーニング、クールダウンの目的、方法などもオールカラー写真で解説されておりわかりやすい。
さらにランニングテクニック、継続してレベルを上げるための栄養面やメンタル調整、障害・外傷予防についても詳しく書かれているが、所々で著者の豆知識的なアドバイスが面白い。
中級者・上級者レベルの内容では上記の各内容がレベルアップされ、レースに出るまでの目標がプログラム例と共に掲載されているので最終的にフルマラソンを完走できるようになっている。
ランニングを始めたいと思っている健康志向の方から、フルマラソンを速いタイムで完走したいと思っている人まで読みやすい内容の一冊である。
(安本 啓剛)
出版元:ガイアブックス
(掲載日:2012-10-16)
タグ:マラソン ランニング
カテゴリ 運動実践
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マラソンの科学 安全に速く走るために
山地 啓司
タイトルが示す通り、マラソンという競技を科学的に、しかもわかりやすく解説した書である。
全体は9章から成り、第1章の“マラソンとは”では、マラソンの起源、女子マラソンの歴史、マラソンの魅力について、さらにマラソンのルールまで概説する。
第2章以下は、マラソンにおける体力、技術、トレーニング、コンディショニング、健康、事故と障害など、スポーツ医科学の基本的な内容を総合的に取り上げている。各章のなかの1つ1つの項目をみるだけでも読者の興味を引く内容が多いので以下に抜粋しよう。
競技マラソンでは何歳でベスト記録を出すか/健康マラソンを目指すには何歳からがよいか/スポーツ選手と一般人の最大酸素摂取量/酸素摂取水準はマラソンの記録を左右する/マラソンと集団──欧米人と日本人の違い/ランニングと空気抵抗──先頭よりも二番目を走るべきか/最大酸素摂取量を高めるトレーニングとは/よいウォーミング・アップの方法/暑さ・寒さと記録──君原・寺沢選手の違い/マラソン・ランナーは長命か/心拍数の少ない動物ほど長命/ランニングは高血圧症にきく/糖尿病はランニングでどうなるか/欧米人と日本人のランニングへの取り組みの違い/ランナーは攻撃的性格か/ランニング中毒とは/アベベ選手と高地トレーニング/ショーター選手と科学嗜好/マラソンは月経に悪影響を与えるか
興味深い一例を挙げよう。ミュンヘン・オリンピックの金メダリスト、ショーター選手は、最大酸素摂取量は普通の選手並みであったが、酸素摂取水準がズバ抜けて高く(世界の一流ランナーが75〜80%であるのに対し、85%あった)、体脂肪率も極端に低かった(1.7%)。しかも彼は、高地トレーニングや炭水化物ローディングなどをすでに採り入れていたという。ここで出てきた最大酸素摂取量や酸素摂取水準などの語句もわかりやすく説明が加えられているし、それらを高めるトレーニングはどういうものがよいかという点まで取り上げてある。
マラソンやジョギングを行う人でなくとも、興味深く読める書である。一読をお勧めしたい。
(月刊トレーニング・ジャーナル編集部)
出版元:大修館書店
(掲載日:1984-06-10)
タグ:マラソン
カテゴリ スポーツ医科学
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見つける育てる生かす
中村 清
「精神論だけで勝てる──とんでもございません。一所懸命トレーニングする選手に、それなりのトレーニング法を与えられなかったら、コーチ失格です。レースにおいて戦術を練る、このことも日頃の情報、分析、研究が大きくモノをいうのであります」
瀬古、佐々木七恵を初め、世界、日本のトップ・ランナーを育ててきた著者、中村氏の言葉である。本書は「半世紀以上におよぶ陸上競技行脚の道」を歩んできた著者が、自分の信じて行ってきた指導についてを率直に語った書である。
中村氏の指導がマスコミで取り上げられるとき、そのほとんどが、「天才は有限、努力は無限」という言葉に代表されるような、“精神論”に関するものばかりである。『正法眼蔵』や聖書などの言葉から、選手たちに“精神論”を説くのは、実際、練習の1つとでもいえるもののようだ。しかし、冒頭に引用した言葉からもわかる通り、中村氏自身、“精神論”で勝てるなどとは決して思っていない。むしろ誰よりも、情報収集・分析・研究、そして科学的トレーニングに熱心であり「中村はまた、世界の一線級のいかなる選手の練習法、理論といったものもみな知っております」という言葉のなかにも、そのことがよく現れている。
中村氏の場合、いわば方法を知り、実践を行うなかでの“精神論”なのだということが、この本からよくわかる。もっといえば、方法を知り、実践をするなかでこそ、“精神論”が真にその意味を持ってくるのである。実践の伴わない“精神論”の多いなかで、この本は、“精神論”だけでは何も成り立たないということを解き明かしてくれていると読むこともできるだろう。
選手を「見つける育てる生かす」ための指導書であるとともに、陸上競技に打ち込んできた中村氏自身の“自伝”でもある。
(月刊トレーニング・ジャーナル編集部)
出版元:二見書房
(掲載日:1984-09-10)
タグ:マラソン
カテゴリ 指導
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最強ランナーの法則
伊東 浩司 鈴木 博美 山口 典孝
レースを続ける中で、自分の身体との対話が、記録向上には不可欠であると強く感じた伊東浩司氏。短距離種目では、正しい姿勢でバランスよく走ることを基礎に、ストレッチングやトレーニングを紹介する。マラソンの項目には鈴木博美氏が登場。こちらも正しい姿勢を保って極力ロスを少なくする走り方を会得するために役立つ、フォームのチェック方法やドリルなど、さまざまなノウハウがまとまっている。
(月刊トレーニング・ジャーナル編集部)
出版元:MCプレス
(掲載日:2007-04-10)
タグ:短距離 マラソン 走り方 ランナー
カテゴリ 運動実践
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楽して走ろうフルマラソン 正しいフォームづくりは走りの基本です
牧野 仁
ボクシング経験を持つ筆者は、かつて「どうせ出るならフルマラソンにしよう」といきなりマラソンに挑戦。本番まで2カ月間の練習の中で、事前にフルマラソンの距離を体験しようとして腸脛靭帯損傷してしまう。これを機にスポーツ医科学を学んだという。
本書の面白いポイントは、「ランニングフォームは走るだけではよくならない」と最初に述べ、基本的動作の練習が必要であると説いていることである。本当に必要なのは「走らない練習」であるそうだ。フォームを意識すると変な走り方になってしまうため、無意識的な(小脳のコントロールによる)動作ができる必要がある。体幹をしっかり固定することで安定させ、四肢をうまく動かすために肩甲骨と股関節の動きを出す方法について、わかりやすく解説している。楽に走るための具体的な方法として6項目のチェックと9ステップのドリルが紹介されている。
(月刊トレーニング・ジャーナル編集部)
出版元:ランナーズ
(掲載日:2008-05-10)
タグ:ランニング マラソン 走り方
カテゴリ 運動実践
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マラソンランナー
後藤 正治
マラソンといえば、勝手なイメージではあるが、オリンピックであります。私の記憶が存在するオリンピックはロサンゼルスオリンピックからなのですが、この本の中でも登場する瀬古利彦さんのイメージは非常に強いインパクトが残っています。みなさんのマラソンのイメージはどうでしょうか?
時代は戦前、戦後、経済成長、バブル崩壊、現在と移り変わっています。本書は8章にわたってその時代を浮き彫りにする8名のマラソンランナーを紹介されています。
金栗四三「日本のマラソンの父」
孫基禎「ハングリースポーツとしてのマラソン」
田中茂樹「アトムボーイ」
君原健二「ブレない偉大なマラソンランナー」
瀬古利彦「マラソン界の貴公子」
谷口浩美「コツコツ 記憶力を示すマラソンランナー」
有森裕子「生きている事への手段としてのマラソン」
高橋尚子「走る事が好き、頑張る事としてのマラソン」
本書はマラソン史というわけではありませんが、時代背景とマラソンを照らし合わせてみるととても興味深いところであります。つまり、体力養成、国の権威、戦争、アマチュアイズム、バイオリズム、我慢強さ、目標そして手段、練習などキーワードは様々でありますが、その時々の葛藤や信念や流行をも表しています。
この8名のうち瀬古利彦氏以降は実際に目の当たりにし、それ以前の方は自叙伝などで存じ上げていました。さらに本書と向き合って、私はマラソンについて単なるオリンピック種目という観点から脱することができました。
私はマラソンランナーが、泥臭く感じます。なぜなら、体力としてのタフさもさることながら、メンタルの強さが問われることや、培われる土壌があることをあたかも当たり前のことのようにやってのけるからであります。それがもう一歩のところを頑張れる理由ではないかと本書から感じました。このアスリートたちの泥臭くて地味だけど、ズッシリとした重みのある信念を垣間みてみませんか。
(鳥居 義史)
出版元:文藝春秋
(掲載日:2014-05-02)
タグ:マラソン
カテゴリ スポーツライティング
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ヒート
堂場 瞬一
私の人生に影響を
自分の考え方、大げさに言えば自分の人生に影響を与えた本は? と問われたら何を挙げるだろうか。何かにつけ影響を受けやすい私は、どれを挙げればよいか迷ってしまうほどたくさんある。『北の海』(井上靖)、『燃えよ剣』(司馬遼太郎)、『永遠のセラティ』(山西哲郎・高部雨市)、『ブラックバッス』(赤星鉄馬)、『マネー・ボール』(マイケル・ルイス)、『水滸伝』(北方謙三)、『のぼうの城』(和田竜)などなど。そこに、もしかして本書『ヒート』も加わるかもしれないと感じている。こういうことは後になってわかることなのだから、今はまだ「かもしれない」段階なのだが。
本書はベストセラーとなった「チーム」で異彩を放ったオレ様ランナー・山城悟をキーマンとして、男子マラソン世界最高記録の樹立を目指す物語である。
世界最高記録を狙える大会として、神奈川県知事の鶴の一声で新設されることになった「東海道マラソン」。日本マラソン界の至宝と言われる山城悟に世界最高記録を「出させる」ため、元箱根駅伝ランナーの行政マン音無太志は県知事の特命を受け、超高速コースを設定し、日本人による世界最高記録の樹立をお膳立てしようとする。そして30kmまでならトップレベルの甲本剛にラビットとして白羽の矢を立てる。この3人がそれぞれの矛盾を抱えながら、奇跡の42.195kmに挑むというストーリーだ。
現在の男子マラソン世界最高記録は、ケニアのパトリック・マカウの持つ2時間3分38秒。1km2分55秒ペースで走ればフルマラソンは2時間3分4秒。計算上は世界最高記録である。もしそれが実現できたら、とんでもない記録が生まれる。もちろん「机上の空論」である。山城も「そんなに簡単に計算できるなら、苦労はしない」とにべもない。それでも、企画担当者の音無は「机上の空論」を現実のものにするため、次々と対策を講じてゆく。しかし、本番ではそんな計算を全てふっ飛ばしてしまうような、まさしく「HEAT」が繰り広げられる。
なぜ私は本書に惹かれるのだろうか。まず、山城の意外な純粋さ。傲慢で、自分の身近にいたら大変困る奴だが、走ることに対しての純粋な気持ちには心を打たれる。そしてもう1つは、登場人物たちが抱えているさまざまな、決して解消されない矛盾。私という人間が元来ヒネクレているのかもしれないが、そういうのが好きなのである。
山城は言う。「客寄せパンダはごめんですよ」。
「走りもしないで応援だけしている連中の心境がどうしても理解できない」山城は、沿道の観客を「本当はこちらを『見世物』として見下しているのではないか」と断じる。だが、「沿道の観客」の一人である私はこう思う。実業団チームに所属している山城は、その時点で客寄せパンダであり、だからこそ給料をもらっているのではないのだろうか、と。それは甲本も同じである。現役マラソンランナーでありながら、金のためにペースメーカーを引き受けるが、常にそういう状況を後ろめたく感じ、「ブロイラーの気持ちがわかるような気がした」と自嘲している。本当はどこかの実業団チームから誘いを受け、マラソンランナーとしてもう一度勝負したいのだ。しかし、実業団で走るということは金のために走るということにほかならないのではないのか?
そういえば、冒頭に列挙した私の人生に影響を与えたと思われる本も、さまざまな矛盾をはらんでいるものばかりである。読むたびに、違った角度から物事を考えさせられ、刺激を受ける。
現実をもとに生まれる熱
本書からも多くの矛盾や疑問が投げかけられてくる。ペースメーカー、人為的要素満載の高速コース、スポーツと金、スポーツを利用しようとする政治家…。これらにモヤモヤした感じを常に抱きながらも、ストーリーに引き込まれて一気に読破してしまった。
本書は小説である。フィクション、つまりつくり話である。「あり得ない」と一笑に付してしまう人もいるだろう。だが、それならば、『燃えよ剣』の土方歳三も『のぼうの城』の成田長親も実在の人物ではあるが、ストーリーは脚色を加えたつくり話である。『水滸伝』の豹子頭林冲や青面獣楊志などの登場人物に至っては実在したかすら疑わしい。しかし、人々の心をとらえ続けて離さない。事実かどうかはさして重要ではない。現実をデフォルメしたリアルなフィクションが一番面白い、と思う。本書はまさにそんな一冊ではないだろうか。
(尾原 陽介)
出版元:実業之日本社
(掲載日:2012-06-10)
タグ:マラソン
カテゴリ フィクション
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マラソンは上半身が9割
細野 史晃
専門家や競技経験者でない限り、マラソンと言えば走る、イコール下半身が重要と考えるだろう。筆者はその思い込みを取り除き、正しいフォームで走る「楽RUN」メソッドに導くべく筆を取った。
ポイントとして「重心」と「姿勢」を挙げ、まずは物理学や解剖学などの側面から仕組みを解説。そして、それらを無意識に行えるようなトレーニングを、肩甲骨回しといった基礎から応用まで紹介している。
走ることは、さまざまなスポーツ動作に通じるため、マラソンに限らず参考になる。また、感覚的なものをいかに伝え、修正していくかというアプローチの例としても活用できるのではないだろうか。
(月刊トレーニング・ジャーナル編集部)
出版元:東邦出版
(掲載日:2014-06-10)
タグ:マラソン 姿勢
カテゴリ 運動実践
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なぜ皇居ランナーの大半は年収700万以上なのか
山口 拓朗
この本を読み進めている途中、私は皇居でランニングがしたいと思い、実際に走ってきている。本書の中で『本書を閉じた直後に、「ランニングって面白そう」「ちょっと走ってみようかな」と思ったなら、本書の目的は達成したといえるだろう』と述べている。筆者のこの言葉を読む前から、私はまんまとランニングに行っている。目的は達成されたのだ。
私がランニングに駆り出された理由は、皇居ランナーならご存知、花の輪プレートを見るためだ。皇居外周の歩道には「花の輪プレート」と言われる47都道府県の花、千代田区の花、花の輪記念のマークがプレートになり100mごとに50枚、皇居外周の全長5kmにわたり埋め込まれている。私も皇居を何度か走ったことがあったが、実はこのプレートの存在を知らなかった。だったら走って確認だと思い、行動に移したのだ。
筆者の本当の思惑とは違うかもしれないが、この本をきっかけにランニングに行ったことは間違いない。私にとってはそれがランニングのモチベーションになったのであって、他の方が読んだときには他にきっかけが見つかるかもしれない。なぜならば、本書には他にも走りに行きたくなるような情報が詰まっているからだ。
まずタイトルにもあるようになぜ皇居ランナーになぜ高収入者が多いかを検証している。皇居で走ることの魅力がよく分かるので、皇居近くに住んでいる方にはそそられる情報だ。そして、皇居ランナーでなくてもランニングをすることで得られるビジネス能力や、脳・健康への効果、やりがいを丁寧に分かりやすい言葉で説明している。中でも印象に残っているのはランニングで養われるビジネス能力で「逆境を克服する力」が身につくと説明されている部分だ。
ランナーの力発揮の場としてマラソン大会がある。もちろん自分のペースで走るのだが、フルマラソンであれば42.195kmをより短い時間で完走したいと思うのが出場者の本音だ。身体が重く、足も痛む、苦しさや辛さが何度訪れても、なんとかしてそれを乗り越えようとする。マラソン中に自分に都合のいいことなんてほぼほぼない。それでも諦めずにゴールに向かう。折れない心が身につくのだ。
誰もが想像できるようにマラソンは苦しいものでもある。それでもランナーは走りたがる。ランニングを友人に勧める。それはランナーがランニングのよさを知っているからだ。苦しさの先の楽しさを味わったことがあるからだ。ランニングに挑戦しなければ、それを知ることはできないのであろう。ランニングの価値とは一体どんなものなのか。この一冊で頭で理解する。そしてランニングをして身体で感じていただきたい。
最後に、運動指導者として読んだ私としては、ランニングも含め運動をより多くの方に楽しんで実践していただくために、どう伝えたら分かりやすいのか本書で学ばせていただいた。本書との出会いで、ランニングや運動を始める方が増えることを、私も願う。
(橋本 紘希)
出版元:メディアファクトリー
(掲載日:2016-06-11)
タグ:ランニング マラソン
カテゴリ 運動実践
CiNii Booksで検索:なぜ皇居ランナーの大半は年収700万以上なのか
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マラソンは上半身が9割
細野 史晃
近年では、マラソンが各地域で開催されるようになりブームというより文化に近くなってきたのではないかと思えるくらい盛んになっている。
マラソンは他の競技と違い指導者がいなくてもできることで、身近な反面、無理なフォームで走ってしまいケガにつながることも多い。走り方について教えてもらうのは親や学校の先生になるが、だいたい「脚を上げなさい」「腕を振りなさい」「あごを引きなさい」「かかとから足をつきなさい」という指導になる。
本書によると、よい走りをするためには「姿勢」「重心」「上半身」ということで、上半身を意識して動かすとよい走りができることを物理学や機能解剖学から考察している。また姿勢に関しては、いろんな姿勢の人がいることで一つの指導では対応できないことが多いが、姿勢を分類し、各姿勢に対する対処法や走法なども提案している。
ただ、上半身といっても体幹で走るということにフォーカスしてるのでは? と感じることが多かったことと、後半はマラソン一般書籍と同じようなトレーニングやマラソン小話になっていることがタイトルの割に残念に思える。マラソン愛好家の方々が走り方を見直したいとき、専門家に教わっておらずタイムに伸び悩むランナーなどにお勧めな一冊である。
(安本 啓剛)
出版元:東邦出版
(掲載日:2016-06-25)
タグ:マラソン 姿勢
カテゴリ 運動実践
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マラソン哲学 日本のレジェンド12人の提言
小森 貞子 月刊陸上競技
世界と戦った人たち
昨年、フルマラソンに初挑戦し、何とか完走できた。タイムは4時間14分。中間地点では、世界のトップならそろそろゴールかな、と考えるだけの余裕があった。その後、楽しかったのは30km過ぎまで。あとはひたすら、早くゴールについて休みたいと考えていた。
さて、本書。12人の“レジェンド”たちが、2020年東京オリンピックで、日本選手がマラソンでメダルを取るために必要なことを語るというもの。登場するのは、宗兄弟をはじめとする一時代を築いてきたそうそうたるメンバー。 内容は提言というよりも体験談という印象。マラソンが強くなる直接的な方法は示されてはいないが、世界と戦ってきた人たちが肌で感じたことを読むことができるよい本だと思う。
余裕をもって、走れるか
本書には、大きな大会前に行った練習メニューが紹介されている。僕のような長距離の素人には、悲しいかな「ものすごくたくさん走っているな」という感想しか浮かばない。一つ一つのメニュー自体には目新しいものはないように思う。しかしその組み合わせ(距離や時間、ポイント練習の内容、ポイント練習とポイント練習との間隔など)が、レベルの高いことを余裕をもってできる力をつけるためのキモなのだということはおぼろげにわかる。
そう、この“余裕をもって走る”ということが、それぞれが共通して発信している重要なメッセージだ。余裕を持って走り続けられるペースを少しずつ少しずつ高めていく。そしてそのためには、矛盾するようだが、限界ギリギリでトレーニングをする。本書の中で、高橋尚子さんがこんなことを言っている。
「『今日の練習、きつくてイヤだな』と思う気持ちが芽生えた時こそ、実は一番伸びるとき。乗り越えなければならない壁にぶち当たって、その壁を乗り越えたら、一段上に行ける。」
そういえば、私が以前レビューを書いた『ウサイン・ボルト自伝』にも「乗り越えるべき瞬間」という言葉があった。「それは、身体があまりの痛みに耐えられなくなり、アスリートに向かってやめろ、休めという信号を発してくる瞬間のことだ。それこそが、成功への秘訣を手にできる瞬間なのだ。もしもその選手がその苦しみを乗り越え、もう2本いや3本余計に走ることができたら、そこから身体能力は向上して、それから選手はどんどんと強さを増していく。」
山下佐知子さんも、指導者としての立場から、もどかしさを吐露している。「トレーナーや栄養士がチーム内にいるのが当たり前になっている中で、本来どんどん踏み込むためにケアするはずが、何かを守る方に行き過ぎている気はする」と手厳しい。「今の選手は・・・」という言葉が多く出てくる。それは、ありがちな若者批判ともとれるのだが、それだけではないと思いたい。
為末大さんは著書『諦める力』のなかで、「スポーツはまず才能を持って生まれないとステージにすら乗れない」と書いている。レジェンドたちは、今の若い選手たちが、せっかくステージに乗れるだけの才能を持っているのに限界ギリギリの練習をしていない、もったいないと歯がゆく思っているのだ(もちろん反論はあるだろう)。私も数あるスポーツの才能の中で、壊れない身体というものがとても重要だと思っている。限界を乗り越えてなお、走り続けられる頑丈な身体というのは、どんな高度な技術よりも優先的に獲得すべき能力だと思う。
準備して楽しみたい
私は本書に登場する選手たちの活躍をリアルタイムで見ていた世代である。中山竹通選手は、ソウルオリンピックで4位入賞を果たしたレース後に「1位になれなければ4位もビリも一緒」と言ったと伝えられる反骨の人。“Qちゃん”高橋尚子選手は、これまでの歯を食いしばって根性でゴールにたどり着くという日本女子マラソン選手のイメージをガラリと変え、風のように駆け抜けた姿が印象的だった。そんな個性的な選手たちが現役時代に何を考え、どのように走っていたかに触れることができる、心躍る一冊である。
さて私はというと、前回のマラソンのゴール直後は「もう2度としない」と思ったはずが、またもやフルマラソンにエントリーしてしまった。走りに余裕など持ちようがないのだが、どんなにレベルは低くとも、走るからにはしっかり準備してマラソンを楽しみたいと思っている。
( 尾原 陽介)
出版元:講談社
(掲載日:2016-08-10)
タグ:マラソン
カテゴリ 指導
CiNii Booksで検索:マラソン哲学 日本のレジェンド12人の提言
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マラソンは三日坊主で大丈夫!
細野 史晃
強い決意とともに何かをやり遂げる人はスゴイです。ところがいざ自分がやってみたら長続きせず尻すぼみに終わることがほとんど。始めるときの意気込みはどこへやら。数日でやめてしまう人を「三日坊主」と呼びます。
最後までやり遂げる人の方が少なくて、三日坊主が大多数なんじゃないかなと思ったりもします。多くの人が意志の弱さを嘆き、どうせ長続きしないだろうとやる前から諦め、いつしかチャレンジすることさえやめてしまう人もいます。
それでも「三日坊主でもいいじゃないか」なんて言われたら半信半疑でも話を聞いてみたくなります。本書はあえてハードルを下げ、三日坊主を肯定するところからマラソンへの扉を開けようとします。三日坊主の正体を分析し、逆に三日坊主をうまく利用してマラソンを長く続けるように導く発想は素晴らしいです。読んでいると何か自分の三日坊主ぶりが長所のようにも感じられ、ついついマラソンをやってみようかなという気にさせるあたりは人の心理を知り尽くした方だと思います。
考えてみたら「頑張る」という精神状態はそんなに長続きしないものですからね。身の丈に合った練習法を設定することで、気が付いたら長年続いていたというのがアマチュアランナーにとっては一番いいのだそうです。どんなスポーツでも継続することで力をつけるわけですから楽しくマラソンが続けられ、それに伴い走力が身につくようです。
ただこの本の凄みは「気楽に走りましょう」というニュアンスではなく、あくまでも合理的にマラソンという競技に取り組み、技術や体力を向上させるというスポーツの本来の部分が根底にあるわけですから、競技能力の向上に関してはシビアな姿勢が一貫してあります。
昨今スポーツ界では話題になっている認知心理学からの視点や、マラソンの7大要素というのを挙げ、それぞれの要素を押さえたトレーニング方法はかなり本格的できめ細やか。
マラソンをされる方にはぜひお読みいただきたい本ですが、前半の三日坊主の分析と克服方法はマラソンをなさらない方にもお勧めします。
(辻田 浩志)
出版元:東邦出版
(掲載日:2017-06-10)
タグ:マラソン モチベーション
カテゴリ 運動実践
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クレージー・ランニング
高部 雨市
マラソンという競技は3時間弱で競いますが、その時間のために途方もない時間・人・金が必要です。私たちはレースの中継を見て熱狂します。しかしそれに至るエピソードに触れる機会はあまりありません。それがあったとしても、たいていは勝者にまつわる美談です。勝者がいれば必ず敗者もいます。オリンピックに出場できる者がいれば、選考に漏れる者もいます。本書はあまり語られることのない舞台裏の物語を包み隠すことなく書いたものです。「暴露」という言葉を使えばスキャンダラスになりますが、選手の気持ちに対し真摯に向き合う様子は「人間模様」と表現したほうが正しいかもしれません。
走る選手にもそれぞれの事情があります。走るのが好きな選手もいれば、走るのが好きではなくビジネスとして走る選手もいます。心に刃を持ち復讐のために走る選手までいたなんて、夢にも思いませんでした。ランナー一人一人のバックボーンの違いが、レースに対する姿勢・考え方に色濃く反映するのでしょう。普段競技について語られることはあっても、ビジネス的な側面からマラソンを見る機会なんてありませんが、選手・監督・選手が所属する企業、そしてメディアなどそれぞれの立場にそれぞれの利害があるそうです。そこから生まれる葛藤や妬みなど人間社会ならではのあり様は、神聖化されがちなトップランナーにも同じくあることを知らされました。それぞれの時代を代表するランナーたちの赤裸々な生きざまは、有名な選手であるからこそ余計に生々しさが伝わってきました。
レースを演出するメディアとスポンサーの思惑。スポーツを商品として高く売り買いしたい当事者。我々が興奮しながら見ている中継は、多くの人間の利害によってつくられていることがわかりました。読み終えて初めて納得したのは『クレージー・ランニング』というタイトル。一生懸命に走るランナーに「クレージー」は失礼だと思いましたが、レースに関わる人たちによるマラソン狂想曲ということだったのでしょう。
(辻田 浩志)
出版元:現代書館
(掲載日:2019-09-12)
タグ:マラソン
カテゴリ スポーツライティング
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復刻新装版 ランニング
金栗 四三 増田 明美
著者の名は「かなくり しそう」と読む。日本マラソンの父と呼ばれ、日本人初のオリンピック選手である。大河ドラマ『いだてん』の主人公といえば、ご存じの方もいるのではないだろうか。私は彼を、100年先の未来から来たトップアスリートと呼びたい。
本書は1916年(大正5年)に発刊された「ランニング」の復刻版である。マラソンに関する技術的な解説以外にも、食事や休養、運動時の服装やシューズにいたるまで事細かに書かれているが、その内容は100年前に書かれたとは到底信じられないほど「最新」であった。その一部を引用して紹介しよう。
「さてこの心身の調和したる発育を達成するには、単に駈歩(走る練習)ばかりでは不足する傾向がある。この他にもなにか運動をして各筋肉や、関節を動かすことが大切である」
「脚は駈歩には直接他(上半身など)よりも関係があるから、十分脚の筋肉や関節を強くし自由に運動をできるようにしておかねばならない」
なんと金栗は今から100年も前に、競技練習以外に筋力トレーニングやストレッチを行い、筋力や柔軟性を向上させる重要性について認識していたのだ。それも長距離走でである。これが私が金栗四三を「100年先の未来から来たトップアスリート」と呼ぶ理由である。
本書はただ当時の技術解説書の枠を越え、金栗から私達へのスポーツ発展を願うメッセージと言えよう。私達が未来へ何を残していくべきか。本書を読めば見えてくるかもしれない。
(川浪 洋平)
出版元:時事通信社
(掲載日:2020-10-24)
タグ:ランニング マラソン
カテゴリ スポーツ医科学
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君ならできる
小出 義雄
高橋尚子選手がシドニー五輪女子マラソンで優勝することを信じて疑わなかったかのように、その後すぐに発刊された。小出監督の選手育成法から髙橋選手とともに歩んだシドニーまでの道のりなど、一般読書向けにリズミカルなタッチで描かれている。同監督の次なる夢は「銀座マラソンの開催」とまた華やかだ。
(月刊トレーニング・ジャーナル編集部)
出版元:幻冬舎
(掲載日:2001-01-10)
タグ:マラソン
カテゴリ 指導
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21世紀のマラソントレーニング 成功への道しるべ
前河 洋一 鈴木 彰 山本 正彦 石井 好二郎 山内 武
マラソンを愛する5人の著者が、「トレーニング」「ステップアップ」「ランナーの知恵袋」「からだの中から走ってみよう」の項目で、ランナーとランナー予備軍にわかりやすく解説。
(月刊トレーニング・ジャーナル編集部)
出版元:ランナーズ
(掲載日:2003-02-10)
タグ:マラソン
カテゴリ トレーニング
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初心者から中級ランナーまでマラソン・ジョギングQ&A
山際 哲夫
初めて走る人にも、もっとタイムを上げたい人にも、最新の科学的ランニングの方法をQ&A方式でわかりやすく解説。スポーツ医学、体育学、整形外科、循環器科、トレーニング理論、栄養学まで網羅。
(月刊トレーニング・ジャーナル編集部)
出版元:ミネルヴァ書房
(掲載日:2003-03-10)
タグ:マラソン
カテゴリ 運動実践
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瀬古利彦 マラソンの真髄
瀬古 利彦
「君なら世界一になれる」
「瀬古、マラソンをやれ。君なら世界一になれる」「ハイ」
この会話は、後に瀬古の師となる中村清との初対面の場で交わされたものだ。漫画のようだが、これを機にマラソン選手としての瀬古利彦が誕生した。漫画といえば、そもそも瀬古が走り始めたのも中学時代に見た「巨人の星」で飛雄馬の父ちゃんが「ピッチャーは走れなければ駄目だ。地道に努力しろ」と言ったのを信じたのが始まりらしい。一見、些細な会話の中に人生を大きく展開させるキッカケが含まれている。
ところで、当時はインターハイチャンピオンでも大学浪人するのが珍しくない時代だった。1974年、福岡インターハイで中距離(800m、1500m)2冠しかも2連覇という瀬古でさえ、その例外ではなかった。浪人中、アメリカに陸上留学をするが「練習を指導してくれる先生がいて、言われた通りに練習をこなしさえすれば、大きな舞台で結果を残すことができた」順風満帆な高校時代と違い、「信頼できる指導者」のいない留学先での生活は「思い出したくもないほどつらい毎日」へと一変する。そして「何を信じたらいいのかわからず、(中略)走ることがつらくて、つらくて、たまらなく」なってしまったという。
失意の中で帰国し、二度目の受験で早稲田大学に入学を決めた瀬古が、大学でも中距離で頑張ろうと思いつつ、競走部の合宿に参加した初日に冒頭のような会話がなされた。人生にリセットは利かないが、リスタートなら何度もあり得るのだ。
マラソン選手としての瀬古の活躍は多くの人が知るところだろう。本書には、それを支えた練習や、幻に終わったモスクワオリンピック代表から立ち直る過程、ケガからの再起、などなどについて詳細に語られている。「瀬古利彦の百カ条」と、当時の練習メニューまでついた豪華版だ。
どう読むか
この「走りの哲学」書をどういう気持ちで読んだらよいのか? これが問題だ。まず、書評するつもりで読んでみる。すぐに挫折した。本が付箋紙だらけマーカーだらけになってしまった。
次に現役のマラソン選手になったつもりで読んだ。瞬時に挫折した。競技に対する真剣さが違いすぎる。
今度はミーハー親父(死語かも?)となって読んだ。これなら読了できるかもしれない。40歳代以降の人にはたまらなく懐かしい面々が現役選手として登場してくるのだ。また、現在では当たり前になっているが当時はまだ導入されていないか珍しかった事柄もたくさん出てくる。マラソンレースにおけるペースメーカーの存在などはよい例だろう。他にも、アスレティックトレーナーやストレッチングという概念も草創期であり、皆手探りで実施していたし、スポーツドリンクに至っては運動中に水を飲むなど根性がないからだ、という極端な反感の態度を表す者も当時はいた。ストップウォッチも、ラップ計測機能がついたものはほとんどなく、腕時計タイプのものなど夢のまた夢のような時代だった。
しかし、その分「時計に頼らず、体内時計を研ぎ澄まし、ペース感覚を磨く」ことができる時代でもあった。科学的知識の浸透や便利な機能の開発はよいことだが、利用する主体である選手の知恵のほうが重要であることに、今も昔も変わりがない。
人生読本として
マラソンを人生にたとえることがあるが、マラソン選手の人生が書かれた本書は、人生読本としてそのまま十分に使える。たとえば「報われないケガはない。人間は駄目だと思ったときが始まりであり、乗り越えられない壁は与えられない」という一節の「ケガ」を“挫折”や“試練”に置き換えてみるとすぐわかる。
本書は人によっていかようにも読める内容だが、現代のマラソン選手や長距離選手に、早くオレたちを乗り越えろ、という厳しくも温かい愛情が最も大きなメッセージとして込められている。そして瀬古自身が新しい何かにリスタートをする決心が込められている一冊なのではないかと思う。
(板井 美浩)
出版元:ベースボール・マガジン社
(掲載日:2007-04-10)
タグ:マラソン
カテゴリ 指導
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メロスたちの夏 夜久弘のウルトラマラソン
夜久 弘
最初は病から逃れるように走っていたのが、やがて100kmを走破するウルトラマラソンにまで出場するようになるほどのめり込んでいく。ベテラン市民ランナーならではの視点で綴られ、トレーニング観も経験に裏打ちされた独自のものがあり、たとえば「うどん打ち」のたとえにあらわれている。これはトレーニング量という小麦粉をたくさん集め、それを打って細く長く麺にしていくことが完走の秘訣であるというもの。
ランナー仲間に励まされる様子も描写され、孤独に走っているのではないことがよくわかる。読み終えたとき、筆者の走り続けた27年間をともに走った気持ちになる。
(月刊トレーニング・ジャーナル編集部)
出版元:ランナーズ
(掲載日:2008-10-10)
タグ:ウルトラマラソン
カテゴリ 人生
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マラソンは三日坊主で大丈夫!
細野 史晃
ランニングに限らず、運動は「始めること」と「続けること」が難しい。細野氏はまず情報収集を勧める。どんな準備が必要か、またどのように進めればよいかがわかれば、自分にもできると思える。その上で身体の構造や走りのメカニズムを解説し、重要な要素をフォーム・コーディネーション力・支持力・全身持久力・スピード持久力・パワー・食事と整理。この7つをバランスよくトレーニングしていけば、タイムも伸びやすい。その際、注意すべきはケガだが、ここで三日坊主の性質が逆に活きる。痛みや疲れがあれば休む。そうすれば、モチベーションも保ち続けられるので「大丈夫」というわけだ。
(月刊トレーニング・ジャーナル編集部)
出版元:東邦出版
(掲載日:2016-10-10)
タグ:マラソン モチベーション
カテゴリ 運動実践
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正しいマラソン どうすれば走り続けられるか? タイムを縮めるロジックとは?
金 哲彦 山本 正彦 河合 美香 山下 佐知子
マラソンをするのに、走りやすい恰好と靴以外、特別な道具は要らない。だがトレーニング理論は複雑で、レース攻略にもさまざまな要素が絡み、続けるほど奥が深くなると金氏は言う。選手として、そして指導者として集めてきた最新の知見を惜しみなく、わかりやすくまとめたのが本書だ。金氏が豊富な経験をもとにトレーニングの方法や計画の立て方を紹介するだけでなく、呼吸が苦しくなる仕組みなど生理学に関するトピックは山本氏、食事法や水分補給など栄養に関するトピックは河合氏、そして緊張感のコントロール、ラストスパートの計算など元選手ならではのトピックは山下氏がそれぞれアシストしている。
(月刊トレーニング・ジャーナル編集部)
出版元:SBクリエイティブ
(掲載日:2017-04-10)
タグ:マラソン
カテゴリ 運動実践
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