スポーツニュースは恐い
森田 浩之
著者の森田氏は“スポーツマンニュース”にたびたび見られる日本人のイメージ作りが、ときに不自然に感じるという。たとえばシーズンオフに日本からMLBに移籍する選手に対して、「日本食が食べられるか」という食事の心配や、「言葉は大丈夫なのか」と、日本人だからこその心配をする。それをメディアは毎回のように取り上げ、情報を受け取る側の人間に対して私たちが日本人であることを確認させる。だが実際、MLBに移籍をすれば日本食に困るということはあまりないし、英語を話せない他外国の選手はいくらでもいるし、それはもう特別なことではない。だがそうした小さな心配をきっかけに、メディアは物語をつくり過剰に日本人を意識させ、イメージさせる。
著者が何を言いたいのかというと、スポーツに関するニュースをきっかけにメディアリテラシーを養っていくことが大事ということだそうで、楽しいスポーツニュースだけに限らず多くの情報の中には、ステレオタイプに、またサブリミナル的に「日本人」が供給されているという。だからこそ情報をうのみにせず、批判的に見ていく姿勢も必要となる。メディアリテラシーはもはや、学校教育に限定されたものではない。
2007年9月10日刊
(三橋 智広)
出版元:日本放送出版協会
(掲載日:2012-10-12)
タグ:メディア リテラシー 日本人
カテゴリ その他
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基礎から学ぶスポーツリテラシー(改訂版)
高橋 健夫 大築 立志 本村 清人 寒川 恒夫 友添 秀則 菊 幸一 岡出 美則
2012年に発行されたものの改訂版。スポーツに関する情報を科学的根拠に基づいて記述した教科書的な一冊だ。スポーツの歴史や文化、振興政策、競技力向上のためのトレーニング計画や代表的な種目のトレーニングメニューを各分野の第一人者が執筆している。さらに、スポーツ障害と救急処置、栄養、スポーツキャリア、スタッフ体制や情報戦略についても触れ、スポーツのさまざまな側面が網羅されている。巻末には最新情報の調べ方も載っており、適切な情報収集と活用の訓練にもなりそうだ。
(月刊トレーニング・ジャーナル編集部)
出版元:大修館書店
(掲載日:2017-10-10)
タグ:スポーツ医科学 リテラシー
カテゴリ スポーツ医科学
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競技力アップのフィジカルリテラシー キッズ・ユース期における動き&身体づくりの理論と実践
小林 敬和 森 健一
かつてはプレイヤーとして高い能力を有した者や競技成績が優秀だったものが指導者となり、彼らが持つ経験やノウハウを選手に与えるという指導者像が当たり前でしたが、近年の傾向としてはプレイヤーとしてのスキルと指導者としてのスキルを別のものとして捉える傾向が強くなりつつあります。もちろん実際に経験したスキル自体は否定されるべきものではありませんが、それ自体普遍性があるともいえず、チームや個々の選手に等しく当てはまるものではありません。とりわけ少年少女期は身体的・精神的に成長途上であり、彼らの成長を促進するという役割がスポーツに求められます。
本書はただ「勝つ」ということをスポーツというものの中心的な要素として据えるのではなく、人が人として健康に過ごし、スポーツという身体活動を通じて心理的・社会的に豊かになるための指導法が「フィジカルリテラシー」であると受け止めました。本書での「フィジカル」は、あくまでも身体活動という手段として捉えています。そして目的は、身体を、心を、考え方を、社会性を育むための取り組みであるとします。この考え方を強く意識してこそ、各論としてのエクササイズが生きてくるものだと感じました。おそらく理念ともいうべきここの部分が欠落すれば、現場で少年少女を指導する際に難しい選択を迫られたとき、大切な判断基準を失いそうな気がします。
正直に申し上げて、読み始めでは後半に掲載された具体的なエクササイズにのみ興味を持ちましたが、読むにつれてそれでは筆者の意図することが伝わらないと感じ始めました。こういった理念にのっとり、新しい時代のコーチングは身体能力や競技能力をアップすることが一番の目的とするのではなく、あくまでも「子供たちの成長」の一手段としての位置づけであることがはっきりと伝わります。「技術を教えてやる」というのではなく「子供たちの成長や時代の変化に対応するコーチング」という一文が本書全般に通じる考え方なのだと思います。
もちろんQRコードを利用して動画でエクササイズを見せる手法は今風で理解しやすいです。バランス、リズム、タイミング、フレキシビリティ、スタビリティ、モビリティという6つの要素を鍛える数多くのエクササイズは、鍛える目的がしっかり理解できるので納得したトレーニングで効果に直結しそうな印象が残ります。何となくやるトレーニングとは差が出るように思います。
少子化が問題となる昨今、健全なる青少年の育成には、スポーツを楽しんでみんなでやれる環境が不可欠な要素だと思います。そしてそれが一部の子どもだけではなく、多くの子どもたちにスポーツを楽しむ文化として広がることを願うばかりです。
(辻田 浩志)
出版元:ベースボール・マガジン社
(掲載日:2023-05-10)
タグ:フィジカルリテラシー
カテゴリ トレーニング
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