スポーツ障害予防のための最新トレーニング
福林 徹 今井 純子
本書は、今までのアメリカ流のスポーツトレーニングやスポーツリハビリテーションとは異なり、バランスや人と人とのコンタクトを重要視するドイツ的な障害予防のためのトレーニング本である。ドイツのリハビリテーショントレーニングと聞くとアウフバウトレーニングを思い浮かべるが、アウフバウトレーニングを行うにあたり本書を理解しておくと、より深く処方・実践できると思う。
内容は大きく2部構成されていて、前半は解剖・予防措置・リハビリなどの理論的内容と、後半は多数の写真と図表を用いて運動指導者にもわかりやすく解説した実践内容となっている。障害の頻度に応じ、重点を下肢・体幹においているが、上肢・その他にも応用ができるものである。
前半では基礎解剖や予防措置、主な障害と問題を説明しているが、わかりやすいように逐一実際の例も掲載されていてイメージしやすい。実践の手引きとして障害後の総合的トレーニングプランとして段階を踏んだプロトコルも掲載されており、後半の実践編から目的のトレーニングをピックアップできる。
後半は実践編となり、トレーニングとストレッチが写真と図表を用いて説明されている。目的が明確に示されており、また一つ一つの動きについて繊細で指先までに注意が払われているところはドイツらしい感じがする。特殊な手技や高価な器具を使う必要がなく、どんな現場でも行えるものとなっており、障害予防やリハビリに携わる方は一読されることを勧める。
(安本 啓剛)
出版元:文光堂
(掲載日:2011-12-13)
タグ:トレーニング 傷害予防 リハビリテーション スポーツ医学
カテゴリ トレーニング
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スポーツ障害予防のための最新トレーニング
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スポーツ傷害のリハビリテーション
山下 敏彦 武藤 芳照
本書はアスレティックリハビリテーションについて書かれている。アスレティックリハビリテーションの定義やアスレティックトレーナーについての説明から始まり、基本となるストレッチ、トレーニング、有酸素運動、水中運動、物理療法、アイシング、テーピングなどの基礎知識が事細かに書かれている。
とくにスポーツで傷害が起きやすい腰部、膝、下腿・足部、肩、肘・手といった部位について安静期や回復期などの時期にどういったことを行えばよいのかが書かれている。さらに各部位に関しても非常に多くの写真が掲載されており、どういったエクササイズやストレッチを行えばいいのかが一目でわかる。
全体的な印象としてアスレティックトレーナー専門科目テキストの第七巻「アスレティックリハビリテーション」をより詳しく説明している内容である。途中で挟むコラムも「運動中に水を飲むな!の誤り」や「スポーツ傷害とドーピング」などがあり、非常に面白い内容となっている。
(三嶽 大輔)
出版元:金原出版
(掲載日:2011-12-13)
タグ:アスレティックリハビリテーション 傷害
カテゴリ スポーツ医学
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スポーツ傷害のリハビリテーション
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うおつか流 台所リハビリ術
魚柄 仁之助
うおつかファンのひとりである。『台所リストラ術』から、今度は『台所リハビリ術』である。副題は「脳をみるみる活性化させる生活改善講座」。ふと、これは言いすぎかと思うが、改めて考えるとこれでよいことがわかる。
この本にも書かれているが、まだ何とか自分で食べることができる人にチューブをつけると、とたんに目から生気が失われるとか。自分で食べる、はたまた自分が食べるものは自分でつくることの大切さを忘れていることが多いのではないか。いつも誰かがつくってくれるものを食べるのは「恵まれている」ことかもしれないが、生きるという意味でははなはだ頼りない。
魚柄さんは、料理をつくっている人、たとえば飲み屋のおやじさんやおかみさんは、歳をとっても元気なことを発見し、料理がリハビリになることに思い至る。軽い筋力トレーニングでもあるし、ストレッチでもあるし、何より段取りが料理のできを決めるので、頭(脳)を働かせることになる。
魚柄さんは『ひと月9000円の快適食生活』という本で有名になったが、今は7000円でできるそうだ。でもカツオ節はちゃんと自分で削って使う。新しくて、うまくて、安くて、からだにもよい。そういう料理である。また、包丁を自分で研ぐことも挙げ「こういった手の感触や勘ってボケないためのリハビリなんスね」と言う。健康も長生きもみんな基本はここにあるだろう。
2005年5月9日
(清家 輝文)
出版元:飛鳥新社
(掲載日:2012-10-09)
タグ:リハビリテーション 食 料理
カテゴリ 食
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スポーツ傷害のリハビリテーション
ジェリー・リンチ 水谷 豊 笈田 欣治 野老 稔
昔読んだ原書に「スポーツ医学とは結局リハビリテーションのことである」というようなくだりがあった。言いすぎではあるが、的を射たところもある。診断・治療・予防というなかで、近年は「予防」への関心が高まりつつある。右に紹介するACL損傷の予防に関する本もその流れにあると言ってよいだろう。
だが、実際にはケガしたアスリートや愛好家の治療が優先する。受傷の瞬間からリハビリテーションは始まるという考え方もあり、アスリートにとっても競技復帰にはいかにリハビリテーションを適切に行い、その後のトレーニングを行うかがキーになる。
本書でも、「特に重要な位置を占めるのがリハビリテーション」と言いながらも、医師と理学療法士をはじめとするリハビリスタッフの意思の疎通が十分でない点を指摘する。また、リハビリの手法や方針がともすれば経験的・慣習的なものに頼っていたり、独善的なものに陥りがちだと言う。
そこで、「科学的理論や根拠」を大事にし、神経生理学、バイオメカニクス、運動生理学などの側面から最近の知見を解説し、アスレティックリハビリの実際について、部位ごとに、整形外科医が解説し、それを受けて理学療法士が手技やストラテジーを解説するという形式をとっている。326図、2色刷り(一部4色刷り)でわかりやすい。
(清家 輝文)
出版元:大修館書店
(掲載日:2012-10-13)
タグ:リハビリテーション
カテゴリ スポーツ医学
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寡黙なる巨人
多田 富雄
著者は、世界的に知られた免疫学者。『免疫の意味論』『生命の意味論』などのご自身の専門の著書のほか、新作能の作品も多い。
その著者が2001年5月2日倒れた。その前に乾杯のとき、「ワイングラスがやけに重く感じられた」。「重くてテーブルに貼りついているようだ。なんだかおかしい。それが後で思えば、予兆だったのだ」。
脳梗塞で右半身不随になり、しかも嚥下障害と言語障害を伴った。動けない、話せない、食べたり飲んだりできない。何かしてくれた人に「ありがとう」とも言えない。
この本の最初の章、書名と同じ「寡黙なる巨人」はその闘病録である。著者はもちろん医師でもある。奥様も内科医。自分のからだについて、リハビリテーションの内容について、詳細に、時に厳しく記していく。その文章も入院してから教わったワープロで1字1字打って書いたものである。その闘病生活、リハビリテーションのなかで、著者の内部に「巨人」と呼ぶべきものが生まれてくる。
理学療法、作業療法、言語療法についても著者の経験から、鋭い意見が述べられる。医療とその制度についても真摯な意見が述べられる。誰しも他人事ではない。ぜひ、ご一読いただきたい。
2007年7月31日刊
(清家 輝文)
出版元:集英社
(掲載日:2012-10-13)
タグ:闘病 リハビリテーション
カテゴリ 身体
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臨床スポーツ医学
Peter Brukner Karim Khan 籾山 日出樹 赤坂 清和 河西 理恵 黒澤 和生 丸山 仁司
オーストラリアで出版された、Peter Bruknerらによる『Clinical Sports Medicine 第三版』のパートA~Fのうち、Bまでが翻訳されている。
パートAでは、基本原則として傷害予防や診断、リハビリテーションの原則、バイオメカニクスや注意点などについてまとめられている。パートBでは、身体の部位ごとに発生しうるさまざまな問題について、痛み、外傷などに注目して詳しく述べられている。その問題点が何に起因するか、臨床診断、診断、検査、治療方法などについて豊富な写真、カラーイラストで解説。手術の紹介、リハビリテーションプログラムについてもわかりやすく記述されている。整形外科医のほか、PT、アスレティックトレーナー、鍼灸マッサージ師向け。
Peter Brukner、Karim Khanほか著、籾山日出樹、赤坂清和、河西理恵、黒澤和生、丸山仁司 総監修
(月刊トレーニング・ジャーナル編集部)
出版元:医学映像教育センター
(掲載日:2009-05-10)
タグ:スポーツ医学 リハビリテーション
カテゴリ スポーツ医学
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リハビリの夜
熊谷 晋一郎
厳しいリハビリ
体育とは“体で育む”ことである(本欄10月号)。あえて“何を”という目的をつけない。そうすることで、体育の可能性がより大きく広がり、生命の根源に近づくことができるような気がする。本書を読んで、その思いがいっそう強くなった。
著者、熊谷晋一郎は「新生児仮死の後遺症で、脳性まひに。以後、車いす生活となる。幼児期から中学生くらいまでのあいだ、毎日リハビリに明け暮れ」、東京大学医学部卒業後いくつかの病院勤務を経て、現在は東京大学先端科学技術研究センター特任講師を務める小児科医である。生まれるとき「胎児と母体をつなぐ胎盤に異常があったせいで、出産時に酸欠になり、脳の中でも『随意的な運動』をつかさどる部分がダメージ」を受けたため『イメージに沿った運動を繰り出すことができない状態』となった。そのため「健常な動き」ができるよう、厳しいリハビリを受けることになったのである。
「互いの動きをほどきつつ拾い合う」
人の身体は一般に「これからしようとする運動にふさわしい緊張を加え、制御し続け」るため「たくさんの筋肉がいっせいに協調的な動きをすること」ができる『身体内協応構造』を持っている。しかし彼の場合、「『過剰な身体内協応構造』を持っている」ため、「両足は内股になって、ひざは曲がり、かかとが浮いている。両腕も同じように回内して、ひじ、手首は曲がっている」姿勢になる。「ある部位を動かそうとすると、他の部位も一緒に動いてしまう」ため、パソコンを打つにも「全身全霊で」臨まなければならない。この緊張でこわばった身体を「ほどく」ためにもリハビリは必要なのである。
介助者「トレイナー」と彼「トレイニー」の息が合えば、二人の間にあった「壁のようなものは徐々に薄らいでいき、二つの身体がなじみはじめ」「互いの動きをほどきつつ拾い合う関係」が築かれる。しかしトレイナーが「健常な動き」を彼に与えようとし、さらに彼がトレイナーの思うような動きになっていなかった場合、二人の関係は一変する。「『もっと腰を起こして』。私は自信のないまま腰を起こそうと動かしてみるのだが、すぐに、『違う!ここだよ、ここ!』」と否定され、「命令に従おうともがけばもがくほど」「体はばらばらに散らばって」「私の体は私のものではなくなってしまった」。ここにおいて二人の間柄は「加害/被害関係」となり彼の身体はかたくなに閉じたままになってしまうのである。
始めのうちは“からだで育む”関係ができていたのに、トレイナーが「健常な動き」にあてはめようと“体を育もう”としたことが失敗の原因と思われる。この部分、トレイナーとトレイニーの関係を、教師と生徒・学生、監督・コーチと選手、親と子、これらに置き換えて読んでしまい背筋が凍った。
知力に脱帽
身体感覚のパースペクティブ(遠近法・透視図法)を自在に操り、身体という宇宙を大旅行した気分にさせてくれるところが本書の醍醐味といえる。自身の体を客体化して観察し、または観察した他者の運動を自身の内部の感覚として仮想し、それを言葉におこして他者の身体を借りて再現し、感覚と運動の摺り合わせをする作業から学んだ(感じた)ことをさらに文章化する知力には、ただただ脱帽するしかない。バドミントンなどでメッタメタにやられた後の、快感すら感じるようなあの敗北感にも似ている。
運動やスポーツを行うのは“気持ちいいから”という動機がまずはじめにあると思う。この、“快”、“快感”という身体感覚をキーワードに“体で育む”ということを考えてみると、激しい運動やスポーツでなくとも、伸び(ストレッチ)をする、手を握り合う、身体の一部を触れ合う、場合によっては優しい言葉に触れるだけでも“気持ち良い”を体感することは可能で、それらの身体感覚を通して互いの“体で何かを育む”ことができる。“何か”とは、愛かもしれないし、信頼関係かもしれない。これこそが“体育”をすること、であると思うのだ。
(板井 美浩)
出版元:医学書院
(掲載日:2010-12-10)
タグ:リハビリテーション
カテゴリ 身体
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リハビリの夜
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それでも、前へ 四肢マヒの医師・流王雄太
高橋 豊
本書は、高校生の時にラグビーの試合で頸椎脱臼・頸髄損傷の大ケガを負って両上肢と両下肢の機能を失い、その後高校復学、医学部入学を経て、現在は精神科医として電動車椅子で診療を行う流王雄太さんについて書かれたものである。
「それでも、前へ」――15歳で四肢の自由を全て失い、自分で動くこともままならない重度の身体障がい者であるにもかかわらず、彼にはこの言葉がとてもよく似合う。とにかくポジティブで、前へ進もうとする姿勢が伝わってくる。一般高校への復学から、2度の大学受験、そして医師へ。身体は動かなくても、心は動く。旺盛な好奇心と、それを支える積極的な行動力と努力。手も足も動かせる自分が負けてはいられないと、こちらが勇気づけられた。
本書を読み終えた後に、車椅子のプロテニスプレーヤー国枝慎吾選手が17年ぶりに自分の足で立ったというニュースをみた。アメリカで脊髄損傷からの回復に関して専門の勉強をしてきた方が、日本に帰国して開業されたとのこと。流王さんをはじめ、このような方々の活躍により、健常者と障がい者が同じように夢と希望を持てる世の中になることを、願ってやまない。
(石郷岡 真巳)
出版元:毎日新聞社
(掲載日:2012-10-16)
タグ:リハビリテーション
カテゴリ 人生
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ゆっくりあきらめずに夢をかなえる方法
桧野 真奈美
短大の卒業を前に、区切りとなるような「これをやった」というものがほしかったーーふとしたきっかけで新人発掘テストを受けてみた。これがすべてのスタート地点となり、日本代表として世界で戦うことになる。この本には、そこに至る過程と、悔しさや楽しさがつまっている。
そもそも陸上競技で膝を痛めていたため、手術を受け、リハビリテーションという辛い日々から始まり、スポンサー獲得の苦労、コーチングを受ける大変さが描かれている。そして上達していくというスポーツが本質的に持つ楽しさに触れ、真剣に競技に打ち込むようになるという成長の様子もうかがえる。夢をかなえるために必要な明るさや工夫、タフさ、あきらめの悪さは普通ではない。ボブスレーに限らず、さまざまな分野でこの姿勢を見習うことができる。
(月刊トレーニング・ジャーナル編集部)
出版元:ダイヤモンド社
(掲載日:2012-10-16)
タグ:ボブスレー リハビリテーション
カテゴリ 人生
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うおつか流 台所リハビリ術
魚柄 仁之助
毎日の台所仕事を脳の活性化および老化予防という視点から改めて見直し、長い人生を無理なくボケずに楽しみながら食生活習慣の知恵を、笑いという味付けとともに紹介したのが、この“うおつか流台所リハビリ術”。
料理をする上で必要とされる能力は脳を活性化させる。台所リハビリ術で紹介するその能力とは、思い出し力、想像力、準備力、段取り力、決断力、調理力、もてなし力。日常ごく当たり前にする炊事は、お年寄りが今の機能を失わないようにしながら、この先何があってもひとりでまかなえる力をつける。私たちにとってもメンタルトレーニングとして、料理は手軽な手段だと思った。
これらの力の中で、私が魅力に感じたのが「もてなし力」。人に見られる仕事、人をもてなす仕事をしている人は、心に張りがある。その張りがその人を前向きにさせる。そして、人をもてなすことで自分も癒されると作者は考える。そう思うと、料理は本当に幸せなリハビリだ。 リハビリというと、病院でセラピストやトレーナーの下、目的とする機能回復のために機器を使い、個別で特別なプログラムを行うことと、多くの人は認識しているだろう。落語調で軽く書かれたこの本を読むと、そんなに難しいものではないなと再認できた。病気で倒れてからリハビリではなく、倒れる前の日常でリハビリすることで倒れずに済む。この本で提案されている台所リハビリは、まさにそれである。
(服部 紗都子)
出版元:飛鳥新社
(掲載日:2012-10-16)
タグ:リハビリテーション 料理
カテゴリ 食
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スポーツとリハビリテーション医学
佐藤 揵
「14年間携わってきた高次神経機能(とくに失語症)のリハビリテーションの臨床から、スポーツ分野のリハビリテーションの道へ移って」26年にして、「なるほどといえる体系化ができていないスポーツのリハビリテーションの分野に、一試論を投ずるのも意味がないわけではあるまいと独断し、まとめたのが本書である」。仙台大学教授、同大学健康管理センター所長・佐藤揵氏による『スポーツとリハビリテーション医学』(廣川書店)がそれである。
冒頭4頁にわたる文献リストが示す通り、多数の文献を駆使し、スポーツにおけるリハビリテーションの概観と実際について述べられている。著者も記している通り、これから体系化がなされる分野であり、この1冊を編むことは並々ならぬところがあったと思われる。内容は専門的だが、この分野に興味を持つ学生の方にも大いに参考になるだろう。この分野の書籍にしては価格も手頃だ。
(月刊トレーニング・ジャーナル編集部)
出版元:廣川書店
(掲載日:1986-09-10)
タグ:リハビリテーション
カテゴリ スポーツ医科学
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スポーツとリハビリテーション医学
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ROMナビ 増補改訂第2版
青木 主税 根本 悟子 大熊 敦子
自身にいつも言い聞かせていることの1つに、トレーニング指導員などという職業は、乱暴に言ってしまえば「バーベルの担ぎ方を教えるだけの仕事」だということがある。医師のように直接病気やケガを治療することもできなければ、理学療法士のようにリハビリを通じてその人の命や生活により密接にコミットすることもできない。
むしろ、そうした心身を“治す”人たちの世話になる機会を極力減らせるよう、強い身体を“つくる”サポートをさせてもらうのが、我々トレーナーやトレーニングコーチと呼ばれる専門職であるから、ある意味彼らとは対極の存在であるとも言えるだろう。
が、だからこそ我々はそうした人たちともできるだけ「通訳なし」でやり取りせねばならない。たとえば、自分の担当するアスリートの膝を診てもらった理学療法士から「腹臥位での屈曲を測ったら、軟部組織性のエンドフィールによる可動域制限は少しありましたが、まあ問題ないでしょう」と報告を受けた際に、可動域測定の様子やエンドフィールといった単語を知っているかいないかで大きな差があることは言うまでもない。
トレーニングコーチはメディカルスタッフと同じ仕事はできないし、するべきでもない。だが、同じ言葉で同じ目標に向かう必要があるのだ。
ご存知の方も多いだろうが、coachという語の語源は「(目標に導く)馬車」という意味である。装いも新たになった『ROMナビ』は、医療従事者のみならずスポーツの現場に携わる多くのコーチたちにとって、ますます有用な馬車となってくれるだろう。
(伊藤 謙治)
出版元:ラウンドフラット
(掲載日:2013-11-18)
タグ:測定 リハビリテーション 関節可動域
カテゴリ スポーツ医学
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回復力 失敗からの回復
畑村 洋太郎
筆者は東大の工学部の名誉教授である。工学という、失敗学とは一見全く違う分野の専門家として日本最高峰の領域で学生を教えた中で、失敗学を専門とした理由は深い。生死を分ける様々な失敗を身近で体験した筆者が、失敗した当事者がどのように失敗と付き合い、どのようにすれば復活できるかを伝授しているのがこの本だ。
彼が失敗談を聞いていく中で強く思ったのは「人は弱い」ということだった。人は失敗によってダメージを受けると、穴が開いたような状態になってエネルギーが漏れていってしまう。つまり、ガス欠状態だ。そんな時は自分の弱さを受け入れることがはじめの一歩となるというのだ。
また、失敗に立ち向かえないときの応急処置も載っている。面白いことに一番は「逃げる」、そして「他人のせいにする」「美味しいものを食べる」「お酒を飲む」「眠る」「気晴らしをする」「愚痴を言う」と続く。
今の日本では、頑張って正当性を主張したところで報われるほうが少なく、大抵はいびつな議論に負けて挫折してしまうことも多い。自分に非があると自覚しているときに、それを素直に認めることのほうが態度としては正しいだろう。しかし、この社会では失敗した人が非を認めると、そのときからそれが絶対的な真実として扱われる。そして、弱いものは徹底的に叩かれるのである。それに対して筆者は、周りからの責任追及に決して潰されないこと、必要に応じて逃げるなどの一時避難をして、何をおいても生き続けることが大切だと訴える。
人は誰でも失敗する。そして、誰もがそこから回復するための力を持っている。乗り越えるために必要なのは、そのものと正対して生きていくためのエネルギーをつくり出すための考え方。それを筆者は失敗学を通して導く。失敗も成長のために積極的に取り扱おう、とポジティブになれる一冊だ。
(服部 紗都子)
出版元:講談社
(掲載日:2014-08-08)
タグ:リハビリテーション 失敗学
カテゴリ 人生
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回復力 失敗からの回復
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イラストでわかる 寝たきりにさせないPNF介助術 家庭でできるリハビリテーション
市川 繁之
リハビリやスポーツの現場でひろく取り入れられているPNF。それを、家庭で家族に対して行えるようわかりやすくまとめた。イラストによって患者、介助者両方の姿勢が明示されているだけでなく、声掛けの例も載っており実施の際の不安軽減に役立ちそうだ。
毎日関われるわけではない専門家が、患者とその家族とどう協力するかというヒントも散りばめられている。
(月刊トレーニング・ジャーナル編集部)
出版元:医道の日本社
(掲載日:2016-02-10)
タグ:リハビリテーション PNF
カテゴリ スポーツ医学
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ランニング障害のリハビリテーションとリコンディショニング リスクマネジメントに基づいたアプローチ
増田 雄一
スポーツにおいて欠かせないランニング動作のバイオメカニクス、下肢を中心とした動作に関わる部位の構造などの基本情報がコンパクトにまとめられている。それを踏まえて障害ごとに列挙された発生メカニズムと診断、治療方法の流れは即現場で活用できるものだ。
また、リコンディショニングについても具体的に言及され、さらには予防についてもページが割かれており、メディカルスタッフに求められる知識が文字通り1冊に詰め込まれていると言える。
(月刊トレーニング・ジャーナル編集部)
出版元:文光堂
(掲載日:2013-06-10)
タグ:リハビリテーション ランニング障害
カテゴリ スポーツ医学
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新 スポーツ外傷・障害とリハビリテーション
魚住 廣信
ベースは1987年に始まった雑誌連載。改訂を重ね、障害予防とリハビリテーションの入門書となるよう構成されている。
冒頭に身体のつくりやRICEを始めとする基本処置、リハビリテーションの流れなどがわかりやすくまとめられている。続いて、足部や肩など身体を12カ所に分け、各部位の構造、起こりやすい外傷・障害、リハビリテーション方法を紹介。ケガが起こった後の対応だけでなく、予防のため暑熱環境時の対応などにも触れ、さらにリハビリの解説にはイラストが添えられケガの悪化や再受傷を防ぐ意図が見える。
現場で起こりうる主な外傷・障害について網羅されており、これから勉強を始める人や復習の際に最適な一冊だ。
(月刊トレーニング・ジャーナル編集部)
出版元:ナップ
(掲載日:2014-07-10)
タグ:リハビリテーション ケガ 外傷 障害
カテゴリ スポーツ医科学
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セラピストの動きの基本 運動器リハビリテーション新時代
山口 光國 春木 豊
溢れる情報を受け取り利用するのはセラピスト自身である。その自分自身をどう扱うかという切り口で、セラピストとしてのあり方を具体的に解説していく。編著の春木氏が体系化した身体心理学によると、頭で理解するだけでなく、実際に体験して「心と体の動き」に目を向けることが重要だという。
人の身体をみるプロとしての心構えが全編に詰まっている。
(月刊トレーニング・ジャーナル編集部)
出版元:文光堂
(掲載日:2014-10-10)
タグ:リハビリテーション
カテゴリ 身体
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ケガをさせないエクササイズの科学 トレーニングから運動療法まで
西薗 秀嗣 加賀谷 善教
競技力の向上、もしくは健康な毎日を送るうえでトレーニングやエクササイズは欠かせない。トレーニング指導者には、運動を継続させるだけでなく、ケガをさせないという役割もある。
前半の基礎編では、トレーニングにもリハビリテーションにも共通する理論が網羅されている。後半の応用編では、負荷量を調節すればさまざまな対象に行えるエクササイズと科学的根拠を紹介。
もちろん現場で起こることは理論通りではないが、立ち返るべきベースとなってくれる一冊だ。
(月刊トレーニング・ジャーナル編集部)
出版元:大修館書店
(掲載日:2015-06-10)
タグ:障害予防 トレーニング リハビリテーション
カテゴリ スポーツ医科学
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アスレティックケア リハビリテーションとコンディショニング
小山 貴之
スポーツ医科学の発展と、一般社会における認知度の上昇はめざましい。だが、専門知識を持つ人がいない現場もまだまだあると著者は指摘する。たとえば部活動顧問を務める教員など、現在専門外ながら指導にあたっている人、そして将来そういった状況をなくすべく取り組む学生のための入門書だ。スポーツ外傷・障害、コンディショニング、リハビリの基礎知識が網羅され、応急処置と部位別のリハビリが紹介される章は辞書のように使える。もちろんスポーツ現場で活躍する人にとっても、最新の知見を確認できるものと言える。
(月刊トレーニング・ジャーナル編集部)
出版元:ナップ
(掲載日:2016-08-10)
タグ:リハビリテーション コンディショニング
カテゴリ アスレティックトレーニング
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スポーツリハビリテーションの臨床
青木 治人 清水 邦明 鈴川 仁人
2018年に開設20年を迎えた横浜市スポーツ医科学センター。総新患数は12万人を超える。スポーツ(アスレティック)・リハビリテーションにおいて、かつてはプロ選手が手術のため海を渡ることもあったが、センターのリハビリスタッフは術直後の医学的リハ、一般的リハ、種目特異的リハの 3 段階を一貫して行い、多くの知見を積み重ねてきた。その集大成として、総論、部位別、競技別に治療について記述した。個人差が大きい中、医学的根拠に基づきどのような検査・評価・治療・予防に取り組んできたかがわかりやすく整理されている。画像も豊富で、臨床現場で困ったとき1つの指針になってくれそうだ。
(月刊トレーニング・ジャーナル)
出版元:メディカル・サイエンス・インターナショナル
(掲載日:2019-10-03)
タグ:リハビリテーション
カテゴリ スポーツ医科学
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スポーツリハビリテーションの臨床
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極めに・究める・スポーツリハ
相澤 純也 塩田 琴美
充実の一冊。
表紙からして一般向けの情報量かなと読み進めると、私の勘違い。
序文でも書いてある通り“手に取りやすい読みもの”として実現されつつも、理学療法士やトレーナーとして活動する人にとっては、選手や患者と接する際の一連の流れが網羅されている内容である。
それは、クライアントと接する際の心構えの話だけではなく、症例を交えた解説では評価から運動処方まで記載されており、現場での参考になるものがいくつか載っていた。また、SOAPカルテの記載例があり、直後から既に書き方を参考にしているくらい、すぐ実践できる内容もある。
障害者スポーツに関わるリハビリテーションも内容にあり、まったく関わったことがない部分で新鮮な気持ちで読ませて頂いた。
うつ病を患っている方への「一時的な気分転換を目的とした運動は勧めるべきではありません」という一文を読んだときには、運動が健康の一助となると言われている世の中では、知らずに運動を頑張ってしまい、症状を悪化させてしまう可能性が大いにあると感じた。うつ病はスポーツの現場だけでなく、私が日頃勤める鍼灸院でも患っている方もいるので、その点に関する専門知識はさらに学びを深めないといけないなと気づいた。
クライアントとの出会いは、巡り合わせで、どんな方を担当するかは分からない。本書は、スポーツリハに関わる上での総合書となるもので、これからスポーツリハに関わる理学療法士、トレーナー活動をしたいアスレティックトレーナー、鍼灸師、あマ指師、柔整師が事前に読んでおくのに相応しい一冊である。専門書なのに読みやすいことから、学生のうちから読むこともおすすめできる。
「極めに・究める・リハビリテーション」シリーズということで、ほかに運動器疾患編なども気になるところである。
(橋本 紘希)
出版元:丸善出版
(掲載日:2021-03-22)
タグ:リハビリテーション
カテゴリ スポーツ医科学
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極めに・究める・スポーツリハ
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アクアティックリハビリテーション
Andrea Bates Norm Hanson 山本 利春 日暮 清
リハビリテーション、リラクゼーション、疲労回復などの目的ですでに多くのチームが利用している「アクアエクササイズ」。これを正しく実践していくための基本的な理論が整理されている序盤、そして中盤からはスポーツで引き起こしやすい障害に対応したアクアティックリハビリテーションの実際が紹介されている。
(月刊トレーニング・ジャーナル編集部)
出版元:ナップ
(掲載日:2000-09-10)
タグ:アクアティックリハビリテーション
カテゴリ スポーツ医科学
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実践アスレチックリハビリテーション Text&CD-ROM
栗山 節郎 川島 敏生
アスレティックリハビリテーションの基礎から部位別疾患、その手技まで豊富な写真で書籍で紹介されているのみならず、150以上の部位別疾患プロトコルと手技の動画が収められたCDが付属されている実践書。
(月刊トレーニング・ジャーナル)
出版元:南江堂
(掲載日:2006-02-10)
タグ:アスレティックリハビリテーション
カテゴリ スポーツ医科学
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実践すぐに役立つアスレティックリハビリテーションマニュアル
福林 徹
1998年発行された『整形外科アスレティックリハビリテーション実践マニュアル』を大幅改訂。スポーツ選手に対するアスレチックリハビリテーションを、部位・疾患・種目別に分類し、医師、PT、トレーナーなどの専門家が詳しく解説。
(月刊トレーニング・ジャーナル編集部)
出版元:全日本病院出版会
(掲載日:2006-05-10)
タグ:リハビリテーション アスレティックリハビリテーション
カテゴリ スポーツ医科学
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アスレティックテーピングとリハビリテーションエクササイズ
David H. Perrin 梶谷 優 鶴池 政明
NATABOC公認アスレティックトレーナー(ATC)が、専門教育課程で学んできた原著の第2版翻訳本。初版の内容に加えカラーで詳細な人体解剖図や傷害の発生機序の説明と、関節と部位のテーピングとブレースの技術を表す約400枚の写真を掲載。
(月刊トレーニング・ジャーナル編集部)
出版元:ナップ
(掲載日:2006-08-10)
タグ:テーピング リハビリテーション
カテゴリ スポーツ医科学
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それでも、前へ 四肢マヒの医師・流王雄太
高橋 豊
医療の谷間に灯をともす
私の勤める自治医科大学は、医療に恵まれない地域における医療の担い手を育てるため、昭和47年に開設された大学である。現在のような医師の都市部偏在によるものと異なり、当時は医師の絶対数不足から、とくに山間へき地や離島、過疎地と呼ばれる地域の医師不足が深刻な時代であり、“医療の谷間に灯をともす”(校歌より)気概ある総合臨床医を育てることを目的に設立されたのである。毎年、日本全国47都道府県から来る入学者(2~3名ずつ)に修学経費を貸与し、卒業後の所定期間(おおむね9年間)知事の指定する公立病院などに勤務した場合は、返還が免除されることになっている。つまり、卒業後それぞれの出身都道府県に戻って地域医療に従事するという“義務”を背負う代わりに学費は各都道府県に払ってもらうという現在の“地域枠”制度に先駆けたシステムだ。それぞれの地域に赴任中は“総合医”の名のごとく、内科系外科系、急性期慢性期、重度軽度の別なく診療にあたる。場合によっては“地域”そのものの活性化のために働くこともあるようである。
義務年限を終了したその後の身の振り方は原則自由だが、地域の診療所に残ったり新たに開業するなど、多くの卒業生は引き続き地域医療の実践に取り組んでいる。もちろん、大学に戻って教鞭をとっている卒業生や、特定科の専門医になっている者も多い。特筆すべきは専門医を名乗るにあたって、地域でのあらゆる診療に対処したことによる幅広い知識と経験があり、その大きな地盤の上に専門科を掲げることができる点である。
地域での診療義務をこなしながら専門医の資格を取らなければならず、ほかの医学部卒業生より時間がかかるし大変だとの不安を在学中に持つ学生も中にはいる。あるいは、中央の情報が届きにくいイナカに飛ばされて不利になるという負の感覚を持つ人も(これは外部の人に多いが)いる。しかし、ハンディキャップのように思えるこの期間が、実は実践を通してモノスゴい力が蓄えられる場になっていることを、頼もしいお医者さんになっている卒業生たちを見るたびに実感するのである。
開拓者として
さて、本書に描かれている流王雄太は、四肢マヒというハンディキャップを持つ医師(精神科)である。15歳、彼が高校1年生のとき、ラグビーの試合中に起こった事故で頸髄損傷を被り、首から下のほとんどが自由に動かせない状態となったのだ。その彼が高校に復学し、短絡でない道のりを歩みながら医師となって活動している現在までの記録を綴ったものだ。
あらゆる「前例のない」問題と対峙し、開拓していかなければならなかった人生には、本文から読み取れること以上に大変な苦労や葛藤があったに違いないと思う。しかし(だから、というべきか)表紙にみられるような柔和な笑顔を浮かべている現在がある。一時の勢いや感情にいちいち流されていては大きいことは成しえない。肚(はら)に秘めた強い意志がある人ほどこういう表情になるのかも知れない。
新たに見えるもの
流王が「肉体的ハンディのためにできないことはたくさん存在しますが」「ハンディを持って社会の中で生きていくという、この状況でしか理解できないことや、共感できないことが数多く存在する」というように、人には何か自由が利かない状況になってこそ見える世界というものがある。とはいえ「自分がハンディを持っているからという、力みがなく、自然な態度で応じられる」かどうか、このことが非常に難しいことであることは容易に想像がつく。その中で発せられる次のような流王の言葉には重みがある。
「成功し続けることだけが、自分の支えで、何かにつまずいたり、失敗したり、地位を失ったりすると、人間としての人格そのものまで否定してしまう人が、最近、多いように感じます」
“自由”とか“幸せ”ということについて考え直してみたくなる一冊。文章のトーンも全編通して抑えた表現になっていて、感動を強要することは決してない。そこのところがまたよい。ぐいぐい引き込まれること請け合いだ。
(板井 美浩)
出版元:毎日新聞社
(掲載日:2009-04-10)
タグ:リハビリテーション
カテゴリ 人生
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スポーツ傷害のリハビリテーション 第2版 Science and Practice
山下 敏彦 武藤 芳照
2008年発行の初版から内容がアップデートされた。後半の各論に「股関節・鼠蹊部」の章が加わったほか、内容の改訂や執筆者の追加もあるが、各部位のケガについて医師が病態と治療方針を、それを受けて理学療法士がリハビリテーションの実際を解説する形式は変わっていない。科学的根拠のある知識と、ストレッチや物理療法などの基本プログラムが土台にあるからこそ、さまざまなスポーツ傷害への対応が可能になる。現場で起こりやすい傷害は網羅されており、すべての例が教科書通りにはいかないかもしれないが、頼れる相談役のような一冊であることは間違いない。
(月刊トレーニング・ジャーナル編集部)
出版元:金原出版
(掲載日:2017-07-10)
タグ:リハビリテーション
カテゴリ スポーツ医科学
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