身体感覚を取り戻す
斎藤 孝
1960年代、アメリカのカウンターカルチャーは日本にも大きな影響を与えた。
「大人がつくった社会の抑圧や管理から自分の肉体を解放していくというのが、カウンターカルチャーの軸であった。文字通りそれは、すでにある権威に対してカウンター(対抗)としての性格をもつものであった」(序章より)。
この世代が親の世代になって、「親が親らしくなくなった」。その結果、生きていくうえでの基本をしっかりと躾けるという親の役割が軽視され、身体文化も伝統の継承が行われなくなったと言う。その日本の伝統的な身体文化が「腰肚文化」なのだと言う。
著者は「身体感覚の技化」という表現もとっている。歩く、立つ、坐る、そして息の文化。自ら、身体を用いて、様々な技法を経験したうえで語っていく。明治や昭和の人々の写真も巧みに引用しつつ、21世紀の身体をみる。
現在の日本人のからだには「中心(芯)感覚が喪失」しているという言葉は、身体のみならず社会全般にも言える。からだから考える。その意味がよくわかる本。おすすめ。
B6判 248頁 2000年8月20日刊 970円+税
(月刊スポーツメディスン編集部)
出版元:日本放送出版協会
(掲載日:2001-03-15)
タグ:身体感覚 伝統
カテゴリ 身体
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タイ式マッサージ タイ式伝統医療の理論とテクニック
Richard Gold 医道の日本社編集部
本書はタイの伝統医学のうち、身体的療法(ヌアッド・ボラーン)を取り上げている。
タイ式マッサージの特徴は、手技に足・膝・肘・前腕など術者自らの体の各部位を使う、マッサージオイルなどは皮膚に塗らない、ベッドではなく、床や低い台の上で行う、時間をかけてゆっくりと施術する、身体の治療を通じて肉体・精神・魂のバランスと調和をもたらす、などが挙げられる。
Section 1 ではタイ式マッサージの歴史や施術法に触れ、Section 2 では各部位・各体位・各手技を写真と禁忌の説明付きで詳しく解説し、治療への適用を学ぶことができる。Section 1 は割かれているページ数こそ少ないが、タイ伝統医学による患者へのアプローチ法やその思想について知ることができる。仏教の影響を受けたタイ式マッサージでは「愛に満ちた親切心」「慈悲」「人の身になって感じる喜び」「平静」の4つの神聖な心の境地を表現し、マッサージテクニックの多くは、瞑想やヨーガの実践を容易にするために開発されたという。
Section 2 は実際の手技やストレッチについて触れているが、解剖学などの説明はほとんどないので、全くの初学者が本書のみでマッサージをマスターすることは難しいと思われる。しかし、中級者以上が副読本としての位置づけで、施術の幅を拡げるためには大いに役立つだろう。
(西澤 隆)
出版元:医道の日本社
(掲載日:2013-10-25)
タグ:マッサージ タイ式マッサージ マッサージ 伝統医療
カテゴリ スポーツ医学
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