免疫・「自己」と「非自己」の科学
多田 富雄
『免疫の意味論』『生命の意味論』で知られる著者のNHKブックスの1冊。
能にも通じる著者は最近『脳の中の能舞台」(新潮社)という本も出しているが、本書は『免疫の意味論』をかみくだいた書とも言える。
1998年春に放映されたNHK教育テレビ「人間大学」での12回の講義がべ一スになり、大幅な加筆改訂に3年を費やして完成。
「『人間大学』は、一般の市民の方に学問や文化の現在をわかりすくお話しするというのが目的である。お引き受けしたとき私は、長年研究してきた免疫学なのだから、高校卒業ていどの若者や、文科系の人たちにも充分わからせることができるという自信を持っていたが、放送が始まってみたら、そうはいかなかった」(あとがきより)と記し、著者はこの反省から、学生やパラメディカル、生命科学に興味を持つ文科系の学生に必要で充分な免疫学の基礎知識を伝えることができる本になったと言う。
とは言え、免疫はそう簡単ではない。細かなところはわからなくても、いかに複雑で多様な系であるかがわかるだけでも見方が変わる。インフルエンザにかかって、治るまでを免疫学的に解説したところなどは、今度かかったらじっくり観察し、ヘタなことはしないでおこうと思わせる。生命のすごさ、それを発見してきた人間のすごさを知ることができる。
(月刊スポーツメディスン編集部)
出版元:日本放送出版協会
(掲載日:2001-11-25)
タグ:免疫
カテゴリ 生命科学
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免疫革命
安保 徹
著者は新潟大学医学部教授で1980年に「ヒトNK細胞抗原CD57に対するモノクローナル抗体」を作製、89年、それまで胸腺でのみつくられるとされていたT細胞が、肝臓や腸管上皮でもつくられていることを突き止め、胸腺外分化T細胞を発見。96年、白血球の自律神経支配のメカニズムを解明、00年には100年来の通説である胃潰瘍=胃酸説を覆す顆粒体説を発表という世界的免疫学者である。これは「著者紹介」に記されているところだが、この全体をわかりやすく説明したのが本書でもある。
「免疫療法が注目を浴びる一方で、現代医学は病気の治療に芳しい効果を上げているように思えないのが現状です。遺伝子だ、ゲノムだ、タンパク分子解析だ、と人間の身体のとてつもなく微細なしくみを解明する分野で、現代医学はたしかにめざましい成果をあげてきました。しかし、それらが直接的に、治癒をもたらす医療に反映されたという例が、ほとんど見あたらないのです。現代医学は病気を治せない、と非難されてもしかたがない状況にあると思います」と序文で述べる著者は、病気の本当の原因はストレスだとし、自律神経は、交感神経と副交感神経のバランスで成り立っている。しかし、精神的・肉体的ストレスがかかると、そのバランスが交感神経優位に大きくぶれ、それが白血球のバランスをくずして、体内の免疫力を低下させると説明する。終章「健康も病気も、すべては生き方にかかっている」を読むと、病気にならず、健康に生きるにはどうすればよいかを教えられる。
(清家 輝文)
出版元:講談社インターナショナル
(掲載日:2004-07-15)
タグ:免疫
カテゴリ 身体
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免疫・「自己」と「非自己」の科学
多田 富雄
「免疫」という言葉は、誰でも一度は耳にしたことがあるだろう。本書は、免疫の持つ“自己か非自己かを判断し、非自己(自分以外)を排除する”という特徴を、全体のテーマとして掲げている。
一言で「免疫」といってもその実態は実に複雑で難解である。ついつい敬遠しがちな分野であることは確かだ。だが、本書では一般の読者でもわかりやすいよう専門用語を極力減らし、細かくテーマ分けすることで少しずつ無理なく読み進めていけるような工夫がされている。生理学の教科書に書いてあるような少々お堅い内容だけではなく、「インフルエンザ」や「アレルギー」といった比較的身近な話題や、「臓器移植」・「クローン」など非常に興味深い内容も盛り込まれており、文系人間の私でも割り合いとっつきやすい一冊であった。
(藤井 歩)
出版元:日本放送出版協会
(掲載日:2012-10-16)
タグ:免疫
カテゴリ 医学
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