最新スポーツ医科学ハンドブック
坂本 静男
英語のタイトルは“Benefits and Hazards of Exercise”。
この訳が副題(スポーツの効果とリスク)に該当する。
「スポーツ医科学ハンドブック」と解するより、副題のままだと思ったほうがよい。
内容もほとんどが内科的な問題を扱っている。
例えば、キーワードで拾うと、健康増進、身体活動、プライマリケア、突然死、高齢女性、高血圧、糖尿病、オーバートレーニング、ウイルス疾患など。
監訳者の坂本氏は本誌の連載も執筆中で、その第1回(2月号)で本書の内容について触れ、「スポーツ施設での運動より、むしろ家の周辺で自由にできる運動を勧めたほうが継続性が高い」という叙述を挙げている。
このように、本書は「効果とリスク」のみならず、身体活動について心理学的側面からもアプローチしている。
また、カコミ欄の内容が面白い。
例えば「米国および英国の公衆衛生責任者は、……“すべての成人は1週間のうちほとんど毎日(5日間)、中等度の強度の身体活動を30分間以上行うべきで ある”という、健康メッセージを奨励してきた。このメッセージにもかかわらず、英国人(70%)、および米国人(60%)の多くは非活動のままである」 (P.42)。
各章には問題と解答が用意され、理解を助けるのに役立つ。"
(月刊スポーツメディスン編集部)
出版元:ナップ
(掲載日:2001-11-24)
タグ:内科 スポーツ医学 リスク
カテゴリ スポーツ医科学
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基礎から学ぶ!スポーツ救急医学
輿水 健治
強烈な原体験
高校時代に所属していたラグビー部は弱小の割に練習は厳しく、毎日早朝練習も行っていた。その日もあくびをこらえながら最寄り駅から電車に乗り込もうとしていたら、近くに住むチームメイトの母親がそんな時間に電車から降りてきて、私の姿を見るなり泣き崩れた。そしてそのチームメイトが明け方に泡を吹いて全身痙攣を起こし、病院に救急搬送されたと聞かされた。
彼はその1週間ほど前に練習で頭を打ち脳震盪を起こしていたが、その後も頭痛をこらえて練習に参加させられていた。慢性硬膜下血腫、と今ならわかる。この仲間としての罪悪感を伴う強烈な事件が、アスレティックトレーナーを目指した私にとっての原体験と言っていい。
重篤な障害への処置
さて、埼玉医科大学総合医療センター救急科の輿水健治氏による本書は、基礎から学ぶスポーツシリーズの一冊で、RICE処置を中心にした応急手当の本とは一線を画し、選手の命に関わる重篤な傷害に対する救急処置に多くのページが割かれている。「基礎から学ぶ」シリーズとはいえ、CPRの方法やAEDの使用法、突然死や心臓振盪などその内容は、少なくとも日本赤十字社や消防署が主催する救急救命講習会に参加したうえで読むほうが、なるほどとうなずくことは多いはずだ。あるいは本書に出会うことでそのような講習会に参加しようと考える人が増えればなおいい。また、事故防止についての一説も必読である。
確かに、スポーツ現場で起こる傷害のほとんどが、簡単な創傷の手当やRICE処置でまかなえるものである。しかしスポーツ現場に関わるものは、本書に書かれた内容は熟知しておくべきである。冒頭の話は今から30年近く前の話であり、真夏の炎天下でも水分補給がほとんどないまま練習していたあの頃に比べれば、選手の健康や運動に伴うリスクに留意する指導者が圧倒的に多いと言えるだろう。しかし時折報道されるように不幸な事故はいまだに起こり、指導者にもっと知識と自覚があれば、あるいは準備されるべきものがあれば、もしかしたら防ぎ得たのではないかと感じることもあるのだ。
アスレティックトレーナーの役割
アスレティックトレーナーはそのようなアクシデントを未然に防ぐことがその重要な役割であり、何か起こったときには最善の対応ができなければならない。そのためには知識と技術を身につけることは言うまでもないが、さらに重要なことはそのような状況において最善の判断をし、よどみなく動けるかということだ。
1989年、NHLのあるゲーム中にゴールキーパーであるClint Malarchukの喉元を対戦チームの一選手のブレードが襲い、頚動脈が損傷されるという事故が発生した。
噴出した血液が氷上にみるみる血溜まりをつくる中、彼のチームのアスレティックトレーナーは一瞬の迷いもなく、出血部に手を入れ止血を試みた。そして他の幸運も重なり、奇跡的に同選手は命を取り留めた。
この事故について学んだとき、果たしてこの動きが自分にできるかどうか、戦慄を持って覚悟させられた。そして現場にいるときには、先の原体験も併せて、良くも悪くも常にある種の怖さを感じていた。一生このような状況に出会わない指導者やトレーナーのほうが多いだろう。しかし選手の命を預かっているという自覚の元に最善の対策を講じておくことが必要だ。
蛇足ながら、緊急開頭手術をうけた冒頭のチームメイトだが、結婚を2回もし、子どもを3人ももうけているくらい元気に過ごしていることは幸いである。
(山根 太治)
出版元:ベースボール・マガジン社
(掲載日:2010-03-10)
タグ:スポーツ医学 救急処置
カテゴリ スポーツ医科学
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スポーツ障害予防のための最新トレーニング
福林 徹 今井 純子
本書は、今までのアメリカ流のスポーツトレーニングやスポーツリハビリテーションとは異なり、バランスや人と人とのコンタクトを重要視するドイツ的な障害予防のためのトレーニング本である。ドイツのリハビリテーショントレーニングと聞くとアウフバウトレーニングを思い浮かべるが、アウフバウトレーニングを行うにあたり本書を理解しておくと、より深く処方・実践できると思う。
内容は大きく2部構成されていて、前半は解剖・予防措置・リハビリなどの理論的内容と、後半は多数の写真と図表を用いて運動指導者にもわかりやすく解説した実践内容となっている。障害の頻度に応じ、重点を下肢・体幹においているが、上肢・その他にも応用ができるものである。
前半では基礎解剖や予防措置、主な障害と問題を説明しているが、わかりやすいように逐一実際の例も掲載されていてイメージしやすい。実践の手引きとして障害後の総合的トレーニングプランとして段階を踏んだプロトコルも掲載されており、後半の実践編から目的のトレーニングをピックアップできる。
後半は実践編となり、トレーニングとストレッチが写真と図表を用いて説明されている。目的が明確に示されており、また一つ一つの動きについて繊細で指先までに注意が払われているところはドイツらしい感じがする。特殊な手技や高価な器具を使う必要がなく、どんな現場でも行えるものとなっており、障害予防やリハビリに携わる方は一読されることを勧める。
(安本 啓剛)
出版元:文光堂
(掲載日:2011-12-13)
タグ:トレーニング 傷害予防 リハビリテーション スポーツ医学
カテゴリ トレーニング
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スポーツトラブルの初期治療ガイド
アメリカ医師会 American Medical Association 名越 茂彦
著書は、アメリカ医師会によって編集されたもので、スポーツ障害の知識や応急処置・治療について書かれてある。正直に申し上げると、治療者向けとは言えない作品である。しかし、一般の方にはとてもわかりやすく書かれているので、アスリート本人、コーチ、そして今からスポーツ医療を勉強しようとしている人にとって適した著書であると言える。
ケガとその治療について書いてあるだけではなく、そのケガが起こりやすい身体の部位についても述べられているところが面白い。たとえば脱臼が起こりやすい「肩関節」はどんな関節で、どんな特徴や役割を持った部位なのかまでが載っている。とても小さいポケットサイズなのに、なかなかの情報量だ。編集に関わったドクターが本当に必要と思うものを選択し、コンパクトにわかりやすく書いたのがよくわかる。
(宮崎 喬平)
出版元:診断と治療社
(掲載日:2011-12-13)
タグ:スポーツ医学 入門 外傷 救急処置
カテゴリ スポーツ医学
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知っておきたいスポーツ傷害の医学
シルヴィア ラックマン 石河 利寛
本書はイギリスのスポーツ障害研究所で9年間、6000人もの患者を診てきた筆者の経験を持って執筆されたものである。
第1部では、骨や筋、靱帯や神経の機能解剖や創傷治癒の過程に始まり、そのような過程に対する理学療法や薬物の適応方法について説明してある。さらに、各組織(皮膚・筋・骨など)に対する一般的な処置方法が載っている。ところどころにボールペンで書いたような図が出てきて分かりやすい。
第2部では、診断や検査の方法から始まり、足から頭までの障害について部位別に皮膚・筋・腱・靱帯・滑液包・関節・骨・神経の順で述べてある。これを読んでいたとき、目の前で応援していた選手が鼻を骨折した。本書では「患者に腫脹が起こる前に耳鼻咽喉科医を訪れると鼻骨折を直ちに処置することができます。…遅れて骨が定着し始めると、処置が困難になったり、処置不能となります」とある。おかげで何科に行くべきなのか、どのような救急対応が必要で選手にどう説明するべきなのか判断することができた。
スポーツを行っていると、どうしても避けられない外傷・障害はあるだろう。しかし、ある程度減らすことはできると思う。そのためには選手、そしてコーチ・医師・トレーナー・理学療法士を含めたスポーツに関わる我々が、根拠に基づいた医療(Evidence-based medicine、EBM)を理解し、適応できるかが、ことを大事に至らせないために大切である。本書はそのような外傷や障害を予防し、また適切な治療を行うための根拠がわかりやすく解説してある。自分の身体を理解し、スポーツをより多くの人に長く楽しんでほしいという筆者の思い、この本とともに広めたい。
(服部 紗都子)
出版元:ベースボール・マガジン社
(掲載日:2012-01-18)
タグ:スポーツ医学 傷害予防 理学療法
カテゴリ スポーツ医学
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鍼灸の挑戦
松田 博公
著者の松田博公氏は、自身も鍼灸師としての資格を有するジャーナリスト。この著書では、多くの高名な鍼灸師の先生方へのインタビューや自身の経験を通して、鍼灸治療の基本概念や歴史、技術について書かれている。
当然であるが、初めから最後まで東洋医学絶対優位の立場で書かれていたため、西洋医学をバックグラウンドとして持つ私にとっては「本当かよ」というような話もいくつかあった。しかし、文章自体は面白く退屈させないものであったため、読み進めていくうちにどんどん引き込まれていく本でもあった。
本当に興味深い内容もたくさんあり、とくに「中医学理論の問診・脈診・舌診・体表観察・腹部の診察による診断法」や「鍼灸のEBM」「アメリカで鍼灸に保険が使える理由」などの話は大変面白かった。さらに、局所的治療に固執しがちな現代の西洋医学に対して、天候や心理なども考慮した身体全体の治療を行っていく伝統的な鍼灸治療の考え方には学ぶべきところが多いなと感じた。
東洋医学に興味がある方はもちろん、患者が治ることを第一に考えている医療従事者にとって、広く柔軟な考え方を持つためにも一読して損はないはずである。
(宮崎 喬平)
出版元:岩波書店
(掲載日:2012-01-18)
タグ:東洋医学 鍼灸
カテゴリ 人生
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なぜ人は砂漠で溺死するのか? 死体の行動分析学
高木 徹也
砂漠で人が溺死する? 砂漠では、脱水で死ぬより溺水で死ぬ人のほうが多いらしい。年間降水量30~40㎜、年間降雨日数7日程度しかない町に年間降水量の2倍近い雨が短時間で急に降ったら、道路はたちまち冠水し、市街地を鉄砲水が流れていく、砂漠という土地柄では泳ぎに習熟している人が少なく、多くの人が濁流に呑み込まれ命を落とす結果となった。
本書は上記の内容を詳しく書いているわけではない。杏林大学医学部法医学教室准教授、東京都監察医務院非常勤監察医、東京都多摩地区警察医会顧問であり、不審遺体解剖数日本一の法医学者高木徹也氏による「不慮の死」をめぐる医学ルポである。
タイトルは人は死にやすいということを示しているのだろう。日本の死亡者の約20%は異状死であり、意外な場所、意外な原因で多くの人が死んでいる。本書を読んでいくと、こんなことで死んでしまうのかと気づき、状況だけで判断して一方的に決めつけられない死の分析がドラマのようで引き込まれていく(著者は『ガリレオ』『コード・ブルー』などのドラマ監修者でもあるようだ)。
我が国日本では、交通事故で死ぬより風呂場で死ぬ確率のほうが2倍も高く、風呂溺大国なんていう皮肉で書いているが日常での意外な場所での死亡内容が印象に残る。他にも多様な自殺、性行為での死など、死について改めて考えされられる。現場などで活躍する人が本書を読んでいるとこのサインはこの症状の表れなんじゃないか? と考え死を未然に防げる内容になっているところもあり、お勧めの一冊である。
現在の日本では犯罪や事件性がなければ解剖が行われない地域がほとんどとあるが、解剖もしないで犯罪や事件性がないとするのは危険な判断。死を身近に感じられる教育や死因から目をそらさない環境づくりができれば、日本人はもっと生を大事にできると著者はいう。
(安本 啓剛)
出版元:メディアファクトリー
(掲載日:2012-01-18)
タグ:法医学 リスク 死生観
カテゴリ 人生
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武藤教授の転ばぬ教室 寝たきりにならないために
武藤 芳照
「お年寄りは、転ぶと骨折、それっきり寝たきり」というストーリーが一般に広く流布している。実際、そういう例も確かに見聞き、あるいは身近に経験する。
だが、著者は言う。「老人の骨折が治らないのではなく、『治らない』という思いが、治らないような方法を選択しているのです」。
老人でも手術など、きちんと対応すれば、骨折は治る。「手術はかわいそう」と、結局「治らない」方法をとり、それが寝たきりにつながっていく。
そのきっかけが転倒。では、人が転ぶとはどういうことか、どういう人が転びやすいのか、転ばないためにはどうすればよいか、転んでも起きればいい、これがこの本の主旨である。転倒予防教室を実践してきた著者らが、「暮しの手帖」の世界で、わかりやすく、それを語る。スポーツ医学は人をハッピーにするものである。
「人が転ぶ」という事実に目を向け、転ばない教室にまで育て上げた。
本誌の主旨でもあるが、社会に貢献できるスポーツ医学がここにもある。だが、そうなると「スポーツ医学」という言い方もそろそろ変えたほうがよいのか、そういうものがスポーツ医学だと認知されるか、どちらか。
いずれにせよ、「転ぶ」「転ばぬ」とスポーツ医学は大いに関係がある。
A5判 192頁 2001年6月21日刊 1619円+税
(月刊スポーツメディスン編集部)
出版元:暮しの手帖社
(掲載日:2002-10-03)
タグ:転倒予防 スポーツ医学
カテゴリ 運動実践
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こころと体に効く漢方学
三浦 於菟
東邦大学附属大森病院・東洋医学科教授の三浦氏が、漢方学の基本と実際を紹介した本。第1章「漢方外来へようこそ」では便秘、下痢、風邪、更年期障害、花粉症など症状別に患者との問診のやりとりを再現し漢方の処方例を挙げ、第2章「東洋医学の生命観」ではその考え方を、第3章「Q&Aあなたの悩みに漢方学が答えます」ではさまざまな患者の悩みと、東洋医学的なアドバイス方法を記している。
現代はストレスの多い時代と言われているが、こころの問題がからだに影響を及ぼしていることは多くの人が実感しているだろう。漢方を始めとする東洋医学では、年齢や生活習慣、季節、住環境などの要因から、こころの問題を含めてひとりひとりの体質・症状に合わせた治療を施し、症状を起こさない、つまり「未病」のうちに「養生」して健康を維持する手助けをしてくれる。
からだの不調はあるけど、病院に行くほどではない。しかし、気になる。漠然とした不安やつらさを持っている人には、まず手にとってほしい本である。
2005年5月25日刊
(長谷川 智憲)
出版元:新潮社
(掲載日:2012-10-09)
タグ:東洋医学 漢方
カテゴリ 身体
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医学は科学ではない
米山 公啓
医療費抑制の文字が新聞やテレビで頻繁に流れる。「抑制」はわからぬでもないが、「削減」と言われると、必要でも削るというニュアンスが生じ、それでよいのかと思わせられる。その医療費抑制に「科学的根拠」が乏しいものに医療費は使えないという考え方がある。いわゆるEBM、科学的根拠に基づく医療というものである。これに対して首をかしげる人は多い。科学的根拠があるに越したことはないが、それだけで医療は成立するだろうか。そこに現れた本書。いきなり「医学は科学ではない」ときた。新書なので、あっという間に読めるが、医学、医療、科学について、医師でもある著者がかなりはっきりと書いている。「医学という科学的に十分確立できていない、不安定な科学といえる学問では、病気というものを十分にはとらえきれず、それが患者に不安を抱かせるのだ」(第5章医学を科学と誤解する人たち、P.132より)。
医療は患者のためにあるのだが、医学は誰のためにあるのだろうか。
2005年12月10日刊
(清家 輝文)
出版元:筑摩書房
(掲載日:2012-10-10)
タグ:医療 科学 医学
カテゴリ 医学
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スポーツ膝の臨床
史野 根生
月刊スポーツメディスンでも登場していただいたことのある史野先生による臨床家向けの本。膝のスポーツ外傷について、著者が実際に経験したものだけを取り上げ、著者の診断プロセス、治療方針の決定、手術や保存療法を含む治療方法について全ページカラーで示されている。
スポーツ医学というジャンルでは、多数の執筆者がそれぞれの専門を担当し、それをまとめた本が多い。専門分化していく世界なので、そうならざるを得ないところもある。だからこそ、1人の執筆者が1冊を書く、いわゆる単著の価値は大きいとも言える。
この本は、本文は80ページ程度で、簡潔にまとめられているが、随所に著者の哲学が現れる。冒頭の「序」でも、いきなり「傷害された人体の組織には治癒能力があり、医療はその治癒能力を最大限に引き出すべきである、というのが医療人としての筆者の哲学であります」という一文から始まる。個性にあふれ、哲学に富み、臨床家としての姿勢を感じることのできる1冊。こうした本が次々に生まれることを期待したい。
2008年1月20日刊
(清家 輝文)
出版元:金原出版
(掲載日:2012-10-12)
タグ:膝 整形外科 スポーツ医学
カテゴリ スポーツ医学
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まんが 医学の歴史
茨木 保
この本は医学史を紹介しているものだが、その特筆することは「まんが」で書かれていることである。しかも、そのまんがは、婦人科の医師である著者の茨木氏ご自身で書かれていること。医学部の学生の頃に同人誌や投稿用のまんがを書いていたそうで正真正銘のプロなのである。
本書は、月刊誌『看護学雑誌』で「まんが医学の歴史」という連載をはじめたものを、本書の前半を雑誌連載(2003~2005年分32話)、後半書き下ろし(20話)でまとめられたもの。医学のはじまりから、東洋医学の考え、解剖学のはじまり、顕微鏡の発明、日本医学の歩み、抗生物質の発見、DNAの発見、移植医療の進歩、生殖医療の進歩と目次の一部をみていっただけでも、過去から現代の医療まで壮大な物語が1冊にまとめられている。現代の医学がどのように発展し、どのような人たちが関わってきたのか、356頁にぎっしりとまとめられている。
2008年3月1日刊
(田口 久美子)
出版元:医学書院
(掲載日:2012-10-13)
タグ:医学史 マンガ
カテゴリ 医学
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よくある症状への手技治療 経絡を用いた按摩・指圧の実技
田中 勝
臨床家が日常的に診ることが多い「肩こり、五十肩、腰痛、膝痛」について、臓腑と経絡の関連に着目して行う手技治療を解説。田中氏の行う按摩は、中国古典医学の臓腑経絡説を重視している。これは胸腹部には12の臓腑があって、それぞれの臓腑が気を発生することによって、胸腹部の募穴、背腰部の兪穴、顔面の感覚器官、上肢に6経、下肢に6経と経絡に気が回ることで人体は生命活動を行っているという考え方からきている。田中氏は募穴を診断に用い、背部兪穴、膀胱経2行線の経穴を治療に用いていると説明する。これらをもとに基本的な治療手順を紹介し、1つの痛みの部位に対し、「患部+背部兪穴+手足の要穴」の3つに治療ポイントを絞り、日常臨床で役立ち、活用できるように紹介している。
2008年7月1日刊
(田口 久美子)
出版元:医道の日本社
(掲載日:2012-10-13)
タグ:東洋医学 手技治療 徒手療法
カテゴリ 東洋医学
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臨床スポーツ医学
Peter Brukner Karim Khan 籾山 日出樹 赤坂 清和 河西 理恵 黒澤 和生 丸山 仁司
オーストラリアで出版された、Peter Bruknerらによる『Clinical Sports Medicine 第三版』のパートA~Fのうち、Bまでが翻訳されている。
パートAでは、基本原則として傷害予防や診断、リハビリテーションの原則、バイオメカニクスや注意点などについてまとめられている。パートBでは、身体の部位ごとに発生しうるさまざまな問題について、痛み、外傷などに注目して詳しく述べられている。その問題点が何に起因するか、臨床診断、診断、検査、治療方法などについて豊富な写真、カラーイラストで解説。手術の紹介、リハビリテーションプログラムについてもわかりやすく記述されている。整形外科医のほか、PT、アスレティックトレーナー、鍼灸マッサージ師向け。
Peter Brukner、Karim Khanほか著、籾山日出樹、赤坂清和、河西理恵、黒澤和生、丸山仁司 総監修
(月刊トレーニング・ジャーナル編集部)
出版元:医学映像教育センター
(掲載日:2009-05-10)
タグ:スポーツ医学 リハビリテーション
カテゴリ スポーツ医学
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スポーツ少年のメンタルサポート 精神科医のカウンセリングノートから
永島 正紀
まず、著者は序章で自分の立ち位置をこう規定している。
「スポーツをすることそのものより、スポーツとの取り組み方により、さまざまな精神的問題や心理社会的問題が生まれることを示し、とくに現代の子どものスポーツのあり方や現状について精神科医の目を通して考えてみたいと思います」。
精神科医である著者が、少年スポーツの現場にいる指導者とは違った視点で、スポーツについて語っている。
現場の指導者やプレーヤーの家族の方々にもぜひ読んでいただきたい本である。おそらく、本書で語られていることにはなかなか同意しづらいという人も大勢いることと思う。とくに、勝ち負けの価値観については、そうだろう。だが、だからこそ読む価値もあるのだといえる。
スポーツは、そのとらえ方により、さまざまな顔を持つ。身体運動を通した人間教育、人と人とのコミュニケーション・ツール、健康・体力づくりの手段、レクリエーションの場、自己実現の舞台…。これらの共通項は「スポーツは遊び」だということである。「たかがスポーツ」なのである。プレーヤー本人も指導者も保護者も、それくらいのスタンスがちょうどいいんじゃないの、と著者は主張している。
本書を読んで、私のような一般社会人のボランティア指導者の役割について、ふと思ったことがあるそれは、「たかがスポーツ」という価値観を子どもたちに示すことではないだろうか、ということである。「スポーツができるからといって、それが何か世の中の役に立つのか?」。時にはそう言って、プレーヤーにスポーツとの関わり方について、疑問を抱かせることも必要かもしれない。子どもたちがさまざまな職種のコーチたちとの交流を通じて、多様な価値観に触れることにより、スポーツとの距離感や自分の立ち位置を確認するのだ。
数年前に90歳で他界した私の祖母の面白いエピソードがある。彼女がまだ働き盛りのころ、近所の高校の校庭で学生たちがバスケットボールをしているのを見て、こう言ったそうだ。「あんな穴のあいたカゴに何回球を入れたって、落ちるに決まってる。高校生にもなって、あの子ら大丈夫だろうか…」
スポーツなんて、所詮そんなもの。「たかがスポーツ」であり、「遊び」であり、「世の中の役に立たないこと」なのである。だからこそ、おもしろいのだ。だからこそ、熱く、真剣に、夢中になれるのだ。
(尾原 陽介)
出版元:講談社
(掲載日:2012-10-13)
タグ:スポーツ精神医学 メンタル 部活動 ジュニア
カテゴリ メンタル
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医の倫理と法 その基礎知識
森岡 恭彦
体で育む、体育
体育は“体で育む”と読みたい。そのほうが“体を育む”より生命の根源に近いところに触れられそうな気がするのである。
そもそも人が運動をするのは、そこに“心地よく感じる”何かがあるからだ。競技での成功を目指して、健康のため、あるいは痩身を決意してなどなど、運動やスポーツを行う目的や動機は人それぞれだろう。しかし1つ“気持ちよい”という身体の感覚が、もっと根本的な動機として皆にあるのではないだろうか。
汗を流してスポーツすることだけではない
この“快感”という身体感覚を頼りに、“体で育む”ことのできることは何かと考えてみると、せっせと汗を流してスポーツすることだけが体育の範疇(本質)ではないということに考えがたどり着く。もっと多様な身体活動、あるいはもっと幅広い身体状況の(たとえば何らかの理由により動くことが困難な)人たちを対象にできる可能性が体育にはあって、たとえば“伸びをする”ことや“触れてみる”ことだけでも、体育の授業は成り立つのではないかとさえ私には思えるのである。
体力には限界があり、命にも限界がある。体力をつけるため、あるいは維持するために運動をすることはQOLの向上に望ましいというのを否定するつもりはさらさらないが、人はいずれ老化し、不可逆的な病に罹ることさえある。失われていく機能を取り戻すことに限界はおのずと存在するのである。
しかし、たとえ歩けなくなったとしても、家族と手を握り合うことで、あるいは介護者の優しい手技や言葉に触れることで“気持ちよい”を体感することは可能であろうし、またその身体感覚をとおして互いの“体で”何かを“育む”ことができるのではないだろうか。それゆえ体育とは、命をより積極的に生きるための手助けができるもので、人は命ある限り体育を行うことが可能であると考えることもできよう。
そんなことを考えながら体育教師として日々学生と接しているわけだが、しかしながら“命ある限り”などといいつつ、そもそも何をもって生命の始まりとし、何をもって生と死を区別するのか、あるいはまた、自らの意思を表すことや外界からの刺激に反応できなくなってしまった人、いわゆる「植物状態」や「脳死状態」になってしまった人に“体育”は成り立つのだろうか、実は明確な解答を持つまでに私は至っていない。
ときに求められる厳しい選択
私の担当する学生たちは、いずれ医師となって地域医療の現場に立つ使命を背負っている。場合によって、いわゆる山間へき地や離島と呼ばれている地域で医師一人の診療所に派遣され、村一つ、島一つの命を支えなければならない状況におかれることもある。
医師とは「人の命を直接的に扱う」ことのある職業である。それだけに医師にはとくに「倫理的に厳しさが求められる」のである。「『倫理』(ethics)とは簡単にいえば『人の行うべき正しい道』ということ」であるが、しかし「医学が進歩しその力が増大するにつれて社会に大きな影響を及ぼすようになり、また医学や医療についても国際化が進行してきたこともあって」「倫理は国や民族などで異なっており、特に人々の持つ文化や宗教、国家のイデオロギーなどの影響に左右されていて複雑なところがある」。とはいえ「医療の現場ではしばしば相反する倫理的原則のいずれかを選択しなければならない事態がおこる」のであるから、心して学生時代を過ごしてほしいと願っている。
ともあれ「医の倫理と法」と銘打ってはあるが、生命の始まりや、生と死の境目の話題などは医師だけでなく我々体育を生業とする者にとっても、また一市民の立場でも関わり深いところであり多くのヒントを与えてくれ、一読の価値がある。
なお、著者の森岡恭彦は昭和天皇の執刀医としても知られる。その文体は簡明であるが揺るぎなく、周到に押し進めていく力強さには読後の“心地よさ”を感じずにいられない。
(板井 美浩)
出版元:南江堂
(掲載日:2010-10-10)
タグ:医学 医療
カテゴリ 医学
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DANCE Anatomy
Jacqui Greene Haas
著者のJacqui Greene Haas氏はピラティスインストラクターであり、アスレティックトレーナー。著書は9つの章から成り立っています。
1 ダンサーの動き
2 脊柱
3 肋骨と呼吸
4 コア
5 肩甲帯と腕
6 骨盤と股関節
7 脚部
8 足首と足部
9 ダンスのためのカラダ全体のトレーニング
1章は骨や関節の動き、骨格筋(主働筋、拮抗筋、共働筋、固定筋)の説明の他に動きの基本面(矢状面、前額面、水平面)やメンタル面、コンディショニングにおける原則(オーバーロードの原則、特異性の原則、ウォーミングアップ&クールダウンの重要性など)などが記載されていてトレーナーの方にとってはよい復習になりそうな内容になっています。 2章から9章に関しては、各章ごとの筋肉の名前や関節の動きの説明と一つのエクササイズに対して見開き1ページでじっくり説明がされています。
左側のページはエクササイズのイラスト(主働筋が色分けされている)で右側のページが実際にそのエクササイズはダンスのどの動きで使われるのかというのがイラストつきでの解説。そのほかに、エクササイズの注意点やエクササイズのバリエーションの説明がされています。
著者は前書きで以下の言葉を残している。「筋肉がつくりだす動きをわからないままで、あなたはどうやって効率的なコンビネーションをやるんですか?」「間違った筋肉の使い方を続けることは、オーバーユースによるケガの原因になりますよ」
この言葉を聴くと、著書が少し専門的で難しいと(ひょっとしたら)思っているダンサーは身が引き締まるのでないでしょうか。
そして、トレーナーの方は著者のこの力強い言葉に共感を覚えるのではないでしょうか?
(編注:本書は英語で書かれています)
(大塚 健吾)
出版元:Human Kinetics
(掲載日:2012-10-16)
タグ:医学 解剖 ダンス
カテゴリ 身体
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知っておきたいひざのケガ
玉置 悟 ジェームス・M・フォックス リック・マクガイア
一通り読むと、単なる専門書ではないことがはっきりわかる。箇条書きのように症状や原因だけを述べているわけではなく、痛みや動作などの表現が上手にたとえられていたりして小中学生でもわかりやすい表現になっていることが読みやすくしている。
ただ初版から時間が経っているので、手術の詳細や表現の一部が時代を感じる部分があるのは否めない。
それを含めても、わかりやすさという点で整骨院や整形外科、あるいはクラブの部室にでも1冊あると重宝する本だと感じる。
(河田 大輔)
出版元:ベースボール・マガジン社
(掲載日:2012-10-16)
タグ:膝 スポーツ医学
カテゴリ スポーツ医科学
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スポーツ医学の実証 30歳からの自己トレーニング あなたの方法は間違いだらけ
森 健躬
健康ブームが訪れて久しい。スポーツ人口も増え、それ自体は誠に結構なことである。しかし、科学や医学の正しい認識をもってトレーニングをしている人はまだまだ少ない。この本は、「30歳からの……」とうたっているが、何歳の人にでも読んでいただきたい。著者は、東京厚生年金病院の整形外科部長であり、自らジョギングを行い、学生時代には陸上競技を行っていたという森健躬(もり・たけみ)氏である。
このページで本書を紹介するのは、得てして新書判のこの種の本は「これであなたも健康に」とか「これを読めばグングン体力がつく」といったニュアンスの表現で読者の目を引こうとするものだが、本書は、あくまでトレーニングにおけるスポーツ医学の重要性を強調し、医師の立場から多くの警告と注意を促し、スポーツを行う人全員に、正しい見識を与えてくれるからである。
「プロローグ」で著者はこう語る。「人体の医学というものは、大変に複雑で、すべてが完全にはわかってはいない。その上に厄介なことに、一人一人の持つ条件も大変違っている。とくに、スポーツの世界では、体の科学の研究が始められたのが、まだ新しいので、トレーニングの科学もまだまだはっきりしていない。そのために、一種の直感でやってきたトレーニングが、たまたまある人にうまく合うと、それが正しい方法と簡単に判断されて、それを他の人にも指導するということが、これまで行われてきた。しかし、それぞれ、体力や能力が違う人に、こんな方法では正しい効果を生むわけはないのだ。それどころか、それこそ合わない人にとっては、“トレーニング”ではなくて“しごき”に過ぎなくなっていたり、体力をつけるどころか、体力をなくすことになってしまう。最近、私達臨床医が病院へくる患者さんをみていると、科学性を無視した間違ったトレーニングによって、体力をこわした人がなんと多いことか!」
これはスポーツマン全員に関係する発言である。この前書きのあと、第1章「自己トレーニングかん違いの恐さ」で「ランニング中、水を飲むな、は大きな誤解」とか、「うさぎ跳びは百害あって一利なし」とか、「過熱した少年野球の知られざる障害」など20項目にわたり、誤った考えを指摘している。また第2章「この“スポーツ医学”だけは知っておこう」では、「水泳がかえって皮下脂肪を増やす」「テニス肘は無理の証拠だ」「千本ノックは野球を下手にする」など興味深い項目を18並べて解説している。第3章「体を強くするトレーニング術」は、競技選手向けではないがトレーニングのヒントは豊富にある。第4章「この自己チェック法も忘れないこと」ではトレーニング商品の正しい使い方、選び方を述べている。そして最後の第5章ではお医者さんらしく「“応急手当”この方法を知っておけ」と題し、運動中よく起こる怪我に対する応急手当てを簡潔に述べている。「捻挫は冷湿布しすぎると治りが遅い」とか、「つき指は指をひっぱって治すのは大間違い」など、8項目で解説している。
スポーツ医学の観点からトレーニングについて述べる一般書はほとんどないが、その意味で非常に意義ある本であるといえよう。スポーツ医学をスポーツマンのものとしても定着させるという点でこの種の本がこれから多く世に出されることが望まれる。
(月刊トレーニング・ジャーナル編集部)
出版元:青春出版社
(掲載日:1980-11-10)
タグ:スポーツ医学
カテゴリ スポーツ医科学
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スポーツ外傷と障害
中嶋 寛之
今さら紹介するまでもない、本誌ではお馴染みの中嶋寛之氏による編著の書。まず全体の構成と執筆者を挙げよう。
I. スポーツ医学序論(黒田善雄)
II. 運動生理学(石河利寛)
III. 部位別外傷と障害
1. 頭部(馬杉則彦)
2. 脊柱(頸部)(有馬亨)
3. 脊柱(腰部)(有馬亨)
4. 骨盤(中嶋寛之)
5. 大腿(中嶋寛之)
6. 膝(中嶋寛之)
7. 下腿・アキレス腱(横江清司)
8. 足(横江清司)
9. 足関節(横江清司)
10. 肩・鎖骨(萬納寺毅智)
11. 上腕(萬納寺毅智)
12. 肘関節(萬納寺毅智)
13. 前腕(萬納寺毅智)
14. 手・手関節(山内裕雄、井上久)
15. 顔面(眼・鼻・耳)(大畠襄)
IV. スポーツ別外傷と障害
1. ランニング障害(横江清司)
2. 水泳障害(武藤芳照)
3. 野球障害(渡会公治)
4. サッカー障害(星川吉光)
5. テニス肘(渡会公治)
6. スキー外傷(藤巻悦夫)
7. ラグビー外傷(増島篤)
V. 年齢・性別による障害
1. 年齢による障害(高沢晴夫)
2. 女性とスポーツ(中嶋寛之)
VI. スポーツ外傷・障害の予防(黄川昭雄)
VII. スポーツに関するテーピングの実際(その例)(山本郁榮)
VIII. アスレチック・リハビリテーション(鹿倉二郎)
IX. スポーツ・マッサージ(村井貞夫)
X. スポーツと応急処置(近藤稔)
上記から分かる通り、スポーツ外傷・障害をスポーツ整形外科の範疇に限らず、運動生理学やマッサージ、テーピングなどについてもわかりやすく、しかも専門的に編集されている。写真・図も多い。
執筆陣、頁数とも充実したこの大著は医師のみならず、指導者やトレーナー的立場の人など広く読まれるべきだろう。
(月刊トレーニング・ジャーナル編集部)
出版元:文光堂
(掲載日:1984-01-10)
タグ:スポーツ医学 外傷 障害
カテゴリ スポーツ医科学
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スポーツ医学I けがをふせぐ
市川 宣恭
スポーツ医学の本は、どちらかというと高価であることが多い。ところが、最近は新書判のものものチラホラ出てきた。比較的低価格で刷り部数も多いということは、それだけ読者がいるだろうということであり、5〜6年前に比べると隔世の感がある。つまりは、スポーツ医学が一般に普及してきたことを示している。それでも「文庫本」にはスポーツ医学の入る余地はなかった(新潮文庫に『ベスト・ジョギング』下條由紀子著があるが、これはスポーツ医学というよりジョギングへの誘いの書)。
ところが、保育社のカラーブックスから、その名もズバリ『スポーツ医学I』が、定価500円で刊行された。このカラーブックス、文字通り、カラー頁が多い。カラーと白黒ページの見開きが交互に続く印刷形式である(152頁)。
カラーブックスは、昭和37年に始まり、この本出で715巻を数える。全巻で3500〜4000万部売れているという。写真を多数用いたもので、どこかで1冊や2冊はみたことがあるはずのシリーズである。これまで医学全般のもの、たとえば腎臓病、糖尿病、心臓病などのものは刊行されていたが、スポーツ医学は初めてで、このあと続刊として来年に『スポーツ医学II──けがをしやすいところ』『スポーツ医学III──けがをなおす』の2冊が出される予定である(著者は同じ)。
全体的にカラーブックスの特徴でもあるが、写真や図が多く、文庫本ということもあって、比較的短時間で読み終えることができるが、なにも読み通す必要はなく、それぞれ関心のあるところだけを読んでも十分役に立つ。
著者は本誌10月号の「スポーツドクター・インタビュー」で紹介されている市川宣恭氏。著者についての詳細はそちらに譲るが、「私は整形外科医として30年間、大学病院で臨床経験を積んで参りました。また、大阪市身体障害者スポーツ・センターで、身体の不自由な人たちのスポーツと身体的な効果および障害について相談にのり、指導をしてきました。それらの体験を通じて、元気のよいスポーツ選手から中高年のスポーツ愛好家に至るまで、けがを防ぎ、事故をなくすための助言をしたいと思って執筆しました」(まえがきより)という言葉通り、肩肘張らずにスポーツ医学、とくに外傷・障害が各スポーツ別に語られている。
もとより文庫本であるから、一般読者向けにできるだけ平易簡明に記されているが、スポーツ医学も医学という専門内であるから、どうしても解剖学や用語の点で理解しにくいところがあるかもしれない。もちろん、著者はその点にも配慮し、「基本的な用語の解説」の項を設け、下肢、上肢、下腿、筋、腱、靭帯、脊柱、椎骨、仙骨、頚椎、膝蓋骨などについて説明している。
どんなに一般を意識し、平明をモットーに書かれたスポーツ医学の本でも、実際には「難しそう」と敬遠される場合が少なくない。解剖図や表が出てくると、それだけで「対象外」とされてしまうものだ。しかし、筋肉名や解剖はある程度頭に入れておいてもらわないと、著者としては説明のしようがない。その辺りが、この種の本を書く最も難しいところだろう。
アメリカの一般向けスポーツ医学書は、その点で工夫がしてあったり、できるだけ負通の言葉で語ろうとしていることが多い。思うに、「テニス・エルボー」も「ランナーズ・ニー」もそういう言葉であろう。昔、20年くらい前、テニスで傷めた肘なら「テニス・エルボー」、野球で傷めた指なら「ベースボール・フィンガー」で十分だと習ったことがある。それは、決して「スポーツ医学」の話ではなく、一般の会話の話である。
さて、本書だが、ジョギングの項を例に取ると「例えば、運動不足があっても息苦しくなったり、心臓の動悸がなかなか治まらない状態が続くことがあります。何とか走れても、心肺系の故障は、重大事故につながる可能性もあります。また、下肢の関節や腰などの運動器官にも疼痛や動きの制限が出現したり、下腿の筋肉(ふくらはぎ)などに痙攣を起こす場合もあります」といったように、スポーツドクターが一般の人を前にして語りかける調子で全体が貫かれている。こういう書き方は簡単そうで実は難しい。平明を心がけると肝心なことがうまくいえなかったり、正確さを欠いてしまうこともある。その難しさをこの本はうまく克服している。「このような大きな力がかかっても足を痛めないで長時間にわたって走ることができるのは、土踏まずをつくっているアーチのある足の構造によるものです。(中略)ちょうど足の凹みの部分に、コイル・バネが入っているような仕掛けになっています」というように。この説明には、もちろん、カラーのイラストが何点もついている。
文庫本であるがゆえに、ややスペースが狭い気もするが、そんなことよりも、カラーの写真や図を多数用い、文庫本というよく普及し、しかも低価格な形で「スポーツ医学」をまとめたことのほうが高く評価される。スポーツ医学が家庭の医学に近づいたといえる。
●走る
ジョギングの障害/歩く・走る場合の機能解剖/ジョギングと痛み/靴の問題/走りによる急死/ひざのしくみ
●トレーニングを始める前に
トレーニングの原則/運動処方のやり方
●市民スポーツ実施上の注意点
1. 年齢的要因/2. 局所の過度使用について/3. 環境や用具の問題
●泳ぐ
スイミング/スイミングの障害/とび込み/水上スキー/潜水(スノーケリング、ダイビング)/サーフィン、ウィンド・サーフィン/溺水/処置
●テニス
1. テニス肘/2. テニス肩/3. テニス脚/4. テニス足指
●ダンス
●ゴルフ
1. ゴルフ骨折/2. ゴルフ肘/3. 腰痛/4. 手および手関節の障害
●野球・ソフトボール
1. 野球肩/2. 野球肘/3. 野球指(槌指、マレットフィンガー)/4. その他の外傷、障害
●サッカー
1. 足首のけが故障/2. その他の下肢、腰部の障害/3. ヘッディングによる障害/4. ラフ・プレイによる外傷
●バレーボール
●バドミントン
●ボーリング
●スキー・スケート
スキー/スケート
●ラグビー
1. 肩周辺の外傷/2. 膝関節の外傷、障害
●柔道
1. 頭部および顔面の外傷/2. 肩甲帯および上肢の外傷、障害/3. 腰部の外傷、障害/4. 下肢の外傷、障害
(清家 輝文)
出版元:保育社
(掲載日:1986-12-10)
タグ:スポーツ医学 入門
カテゴリ スポーツ医科学
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痛くない体のつくり方 姿勢、運動、食事、休養
若林 理砂
本書は、痛みに不安を抱えている方が何をすればよいか、東洋医学を中心にわかりやすく教えてくれる一冊である。治療家の方なら経験があると思うが、患者はもちろん、友人からも身体や痛みに関わる相談事を受ける。相談の内容により簡単に答えられるが、今後のためにも身体に対する考え方など伝えたいことは山ほどある。そのときに、本書の存在を知ってしまった私は、この一冊をまず読んでほしいと言ってしまいそうだ。
身体についてわかりやすく人に伝えるのが私の仕事なのだが、活字に慣れている方なら本当に読んで貰うかも知れない。そのくらい綺麗にまとまった内容なのだ。本書に「痛みリテラシー」という言葉が出てくる。これは、痛みを冷静に受け止め、適切に対処できるようになることをいう。この痛みリテラシーには、学習と訓練が必要で、それを教えてくれるのが本書ということだ。
痛みのメカニズムから、ペットボトルや爪楊枝を使った家庭で簡単にできる東洋医学的治療。ニュートラルな姿勢づくり、生活習慣の改善。治療をする上で患者にも理解しておいていただきたい部分が網羅してある。患者へは自身の身体の取り扱い説明書として、治療家へはアドバイスの参考書として、本書をお勧めしたい。筆者が出会った患者の話や、古武術の考え方にも触れられるのもまた興味深いところである。
(橋本 紘希)
出版元:光文社
(掲載日:2016-04-18)
タグ:東洋医学 養生
カテゴリ 身体
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スポーツ医科学キーワード<臨床スポーツ医学>
臨床スポーツ医学編集委員会
同社によりすでに出版されている『スポーツ医学基本用語ゼミナール』から、さらにアップデートな情報に対応できるよう編まれたキーワード集。お馴染みの顔ぶれとともに、若手を思い切って起用しており、執筆者は270名に上る。学際的であるスポーツ医科学に関わる人への共通用語を取りまとめた。
(月刊トレーニング・ジャーナル編集部)
出版元:文光堂
(掲載日:2000-03-10)
タグ:スポーツ医学
カテゴリ スポーツ医学
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スポーツ医学II 健康と運動
池上 晴夫
「生命を支える能力を維持・強化していこう」。これを著者は健康への第三の道と説く。さらにこの道を支えるのは、運動のみならず、栄養、環境、ストレスあるいは近代化に対する個々のスタンスであり、そのアプローチの工夫が必要とも。そうした観点をもとに、第2章から専門的な内容に入っていく。
(月刊トレーニング・ジャーナル編集部)
出版元:朝倉書店
(掲載日:2000-06-10)
タグ:スポーツ医学
カテゴリ スポーツ医学
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スポーツ指導者のためのスポーツ医学
小出 清一
「スポーツ指導者のための」というコンセプトに則り、スポーツ医学に関する基礎を網羅すると同時に、非常にわかりやすい形で提供している。スポーツを実践させるうえで最低限知っておくべき内科的知識、使いすぎ症候群の予防と対処など、アスリートに限らず、一般のスポーツ愛好家にも活かされるべき知識体系。
(月刊トレーニング・ジャーナル編集部)
出版元:南江堂
(掲載日:2000-12-10)
タグ:スポーツ医学
カテゴリ スポーツ医学
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スポーツ外傷学III 上肢
黒澤 尚 星川 吉光 高尾 良英 坂西 英夫 川野 哲英
治療のゴールをスポーツ復帰に置き、日頃からスポーツ外傷に関わる医師、理学療法士、トレーナー等に直接的、具体的な診療指針を提供する「スポーツ外傷学全4巻」のうちの一冊。この本では、上肢の外傷におけるテーピング、運動処方、再発防止までを見やすい図とともに懇切丁寧に解説している。
(月刊トレーニング・ジャーナル編集部)
出版元:医歯薬出版
(掲載日:2001-02-10)
タグ:スポーツ医学
カテゴリ スポーツ医学
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新・スポーツ医学 改訂新版
メディカル・フィットネス協会 藤本 繁夫 大久保 衞
2002年に「やさしいスチューデントトレーナーシリーズ」全9巻が、2013年に9巻中4巻が新シリーズとして刊行された。そのうちの「新・スポーツ医学」が2020年に改訂された。20年弱の間に、スポーツ医科学が発展し、社会におけるスポーツのあり方も変わった。改訂新版では、パラスポーツとコンディショニングの章が設けられている。スポーツ選手に起こりやすい外傷・障害や内科的障害から、リハビリテーション、スポーツと生活習慣病、遠征時のチェック点、救急処置まで、時代が変わっても変わらず知っておくべき内容を網羅している。
(月刊トレーニング・ジャーナル編集部)
出版元:嵯峨野書院
(掲載日:2021-08-10)
タグ:スポーツ医学
カテゴリ スポーツ医学
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現場の疑問にきちんと答える 子どものスポーツ医学入門
ライフサポート協会 大島 扶美
いまどきの子ども、いまどきの親
最近の子どもの体格には目を見張るものがある。近所を歩いていても大人顔負けの体格を持つ子どもに出会うことが多い。実感として子どもの体格がよくなったと感じる。そんなときは「いまどきの子はみんな大きいね」などと言ってみたりする。しかし、こと基礎体力の話になると、「全くいまどきの子は体力がなくてダメね」とか「昔よりからだを動かさなくなったからじゃないか」と言っている人が多い。
器は大きくなったが、中身が整わない。すでに世間的に定説となりつつあるこの問題は、発育・発達期のお子さんのいるご家庭にとって重大な意味を持つ。なぜなら、発育・発達期の心身にどんな刺激を与えるかは、その子の将来にとっていろいろな意味で重要な鍵になることを、いまどきの親はしっかり認識しているからである。そこで、ひとつの回答としてスポーツが選択される。しかし、この時点で親たちはスポーツさえしていれば子どもたちが間違いなく健やかに成長すると安心したわけではない。質の問題、つまりいかにスポーツを指導してくれるのかによって大きく結果が違ってくることも十分承知だからである。
だから最近の親は昔のように、子どもたちに「ともかく外へ行って遊んで来い」とは言わない。どうせ行くなら正しく指導するところに行きなさいと言う。これはこれで決して悪いことではない。問題は、スポーツを指導する側にある。指導する側がいつまでも「理由はともかく、いいから走れ」ではいまどきの子どもも親も走らない。「多少痛くても練習は休むな」も同様にいまどきの子どもと親には説得力に欠ける。つまり「なぜそういう指導になるのか?」に答える必要が近年顕著になっていることに指導者は早く気がつくべきだ。親たちはとっくに気づいていて、そういう指導者が少ないことにちょっぴり不満だ。では、これに気がついた指導者はどこに救いの手を求めたらよいのか。答えは、この本にある。本書は、スポーツ栄養学、スポーツ外傷学、そしてトレーニング学や薬学を網羅し、そこから各スポーツ種目に見合った栄養の知識やそのスポーツ種目にありがちなケガとその予防について等、より身近に感じられる「なぜ」に対して科学的根拠をベースにしてピン・ポイントで説明している。
「子どものスポーツ」の最前線を知る
スポーツという身体運動は、もともと日常生活動作からかけ離れた特殊な運動の集まりだ。つまり、速く走る、遠くへ物を投げる、強く蹴るなど、どれも身体に対して強いストレスになるものばかりだ。これは同時に、スポーツをすることによってケガする可能性が十分あることも意味するのだ。したがって、ケガを未然に防ぐには日頃の栄養摂取により強く関心の目を向け、トレーニング方法の適否を確実に判断し、ケガの原因となりうる運動を極力排除できるだけの指導力が必要なことぐらい誰にもわかる。大切なことは、こういったしどうを科学的根拠に基づいて適切に、しかも誰もが納得できる形で平易に説明ができることである。これからのスポーツ指導者に求められるのはこういった指導力だということを痛感すべきである。
「中学生でプロテインを飲むのは早すぎる?」「整形外科で捻挫と診断され、冷シップをたくさんもらってきたけど、復帰の目安を教えて?」「小学校高学年から中学校にかけての成長期にしてはいけないトレーニングはある?」こう聞かれたらどう答える、コーチ? もう一度申し上げある。答えは、本書にある。
(本書は『新装版 現場の疑問にきちんと答える 子どものスポーツ医学入門』として、ラピュータより刊行。 ISBN: 9784947752871)
(久米 秀作)
出版元:山海堂
(掲載日:2003-11-10)
タグ:スポーツ医学 子ども
カテゴリ スポーツ医学
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スポーツ精神医学
日本スポーツ精神医学会
スポーツと精神医学。かつては関連づけて考えられることが少なかったように思う。しかし、本書においてはスポーツにおける精神医学という観点から、オーバートレーニング症候群やうつ、摂食障害などの競技を続ける中で起こる精神科領域の問題にスポットを当てている。これが「精神医学のスポーツへの応用」である。
一方で「スポーツの精神医学への応用」も提唱されている。精神疾患の治療にスポーツの側面を取り入れるというものであり、うつ病、統合失調症、睡眠障害における治療の一環としてスポーツを行っている例が多数紹介されている。ほかに精神障害者スポーツについて、また最近の研究手法についてなど、スポーツ精神医学のさまざまな分野を網羅している。
(月刊トレーニング・ジャーナル編集部)
出版元:診断と治療社
(掲載日:2009-11-10)
タグ:スポーツ精神医学
カテゴリ スポーツ医科学
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やさしいスチューデントトレーナーシリーズ 新スポーツ医学
メディカル・フィットネス協会 藤本 繁夫 大久保 衞 岡田 邦夫 吉川 貴仁 柳田 育久 橋本 祐介 小松 猛 大槻 伸吾 小林 章郎 山添 光芳 笠次 良爾 日下 昌浩
メディカルフィットネス協会の「スチューデントトレーナー」認定資格の教科書となる一冊。
スポーツ医学といえど、スポーツによるケガや障害に関する内容だけではなく、その手前のコンディショニング、炎天下などの環境との関係性、健康のためのスポーツや運動を行う者に対しても活用できる内容になっているので、学生スポーツに携わる者以外でも知っておきたい内容になっています。
部活動をしている子どもたち、健康のためにランニングをしている人、ジム通いをしている人、など様々な形でスポーツや運動に取り組んでいる人が訪れる一般の治療院で臨床に携わっており、スポーツに特化した教育を受けていない場合には、スポーツ医学を知るために手元に置いておくことをお勧めします。
遠征でのスポーツ医学など、読まなければなかなか目が向かないようなことも解説してあります。
以前の知識の確認やアップデート、これからアドバイスするための知識などスポーツ医学に関する内容が満遍なく含まれているので、一冊でだいぶ網羅できると思います。
また、ところどころにあるコラムがそれぞれ興味深い内容になっており、そこを読むだけでも一気に知識が増えるのが面白いところです。
(山口 玲奈)
出版元:嵯峨野書院
(掲載日:2022-02-15)
タグ:スポーツ医学
カテゴリ スポーツ医学
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まんが医学の歴史
茨木 保
医師であり、漫画家でもある著者が、医学史的エポックメーキングな事件とともに、個性的な人物を取り上げる。
取り憑かれたような解剖学者ヴェサリウス。
患者を想う気持ちから、愛護的な治療法を確立したパレ。
好奇心の塊のような「実験医学の父」ジョン・ハンター。
産褥熱撲滅のため、手洗いを励行したゼンメルワイスの孤軍奮闘。
オランダ語辞典もない中、手探りで「ターヘル・アナトミア」を訳しきった杉田玄白と前野良沢。
麻酔薬「通仙散」開発にまつわる華岡青洲の母と妻の献身。
秀才ではあるものの、放蕩ぶりを存分に発揮していた野口英世などなど。
キーワードでしか知らない過去の偉人たちの、人間らしい部分がいきいきと活写されている。現代医学の恩恵に浴している身としては、ゾッとするエピソードも多いが、きっと何十、何百年後の人々には、現代の最新医学もそう思われるのだろう。
同著者の、疾病がイラストつきで解説されている『ビジュアルノート』、解剖生理学を楽しく学べる『まんが人体の不思議』も合わせておすすめしたい。
(塩﨑 由規)
出版元:医学書院
(掲載日:2022-04-18)
タグ:医学史
カテゴリ 医学
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ドクターも納得! 医学統計入門
菅 民郎 志賀 保夫
n数、t値、p値、標準偏差、信頼区間、リスク比、オッズ比、ロジスティック回帰分析…。
これらの単語、よく見るものの、正直全然わかっていない。論文を読んでも、わかるところだけを飛ばし読みしていた。数学なんか将来使わないでしょ! と、たかをくくっていたダメ学生の典型だった自分。しかし! 伊能忠敬の人生のように、あるいはスタンリー・ボールドウィンが言ったように、志を立てるのに遅すぎることはない。ということで、本書を手にとった。
t値は棒高跳びのバー。p値はリンボーダンスのバー。そこで、グッと心を掴まれた。噛み砕き方が秀逸だ。いや、そもそもわかっていないので、それが正しいのか、適切なのかは判じかねるものの、たとえがイメージしやすく、忘れにくい。MRとドクター、統計学の講師が登場し、レクチャーと質疑応答が展開される。全体的に字数はかなり少なめだ。章末には練習問題もついている。
これなら、今まで統計学の本に挫折してきたひとも、読み通せるのではないかと思う。自分も繰り返し読んで理解に努めたい。
(塩﨑 由規)
出版元:エルゼビア・ジャパン
(掲載日:2023-06-23)
タグ:統計 医学統計
カテゴリ その他
CiNii Booksで検索:ドクターも納得! 医学統計入門
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NHKテキスト 100分de名著 中井久夫スペシャル
斎藤 環
著者曰く、中井久夫の功績のひとつは、統合失調症の状態を過程と読み替え、回復の希望を見出したことにある。その「希望」は当時、閉鎖病棟の劣悪な治療環境に絶望しかけていた著者にも「処方」された、ともいう。
中井久夫が言ったことを復習すると、S親和者、心の生ぶ毛、普遍症候群に対する文化依存症候群や個人症候群、標準化志向型・近代医学型精神医学SMOPなどが特に印象に残っている。
S親和者は統合失調症的気質を持つひとのことをいう。その微かな兆候を読み取り、感じ取る能力は、時代や状況が異なれば、有益な能力であるという仮説を、中井久夫は提示した。そして誰もがなりうる可能性があり、まるで人類にとっての税のようなものだという。
この本で読むかぎりでは、当時、統合失調症(分裂病)は不可逆的に進行し心理的に荒廃してしまう、治らない病気としてとらえられていたようだ。そのようなスティグマを取り除くことに、中井久夫は尽力した。
中井久夫は、普遍や標準化などの医学モデルに異を唱える。精神科医にはどこか“まっとう”でない医療であるという意識があり、だからこそ、そういった医学的な診断法や体系化された方法論に固執する向きがあるという。しかし、それらの考え方は、正常に戻す、あるいは矯正する、という治療方針と結びつきやすいのではないだろうか。それは暴力的に映ることさえある。心の生ぶ毛を守り育て、やわらかく治す、医師に治せる患者は少ない、しかし看護できない患者はいない、いずれも中井久夫の箴言であるが、改めて治療とはなにか、と考えさせられる。
フロイトは、医者は患者の弁護士である、患者以外の何ものをも弁護してはならない、と言った。徹底的に寄り添うことで、つまり、そのひとの熟知者であるからこそできる治療がある。それが世界の様々な文化とコミュニティのなかで行われていることだ、と中井久夫はいう。著者曰く、中井久夫は一貫して自身の考え方を理論化し体系化することを嫌った。それが権力と結びつくことを懸念したからだ。そのかわり多くの断片的な箴言を残した。体系はしばしば視野を狭くするが、すぐれた箴言には発見的な作用がある。それを著者は、体系知にたいする箴言知、と表現する。
合気道の高位有段者でもある施術家の先生と、身体の使い方についてよく話す。しかしいつも話題になるのは、こうだ、とした瞬間に、いやそうではないという、禅問答のような事態になってしまうことのむつかしさだ。そのコツやカンについて、その先生によれば合気道という型を共有しているひとたちの間でも、感覚は全然違うのだという。体系化した途端に間違えること、言葉にした瞬間ズレていくこと。それってどうすればいいんだろう、といつも思う。
(塩﨑 由規)
出版元:NHK出版
(掲載日:2023-08-03)
タグ:精神医学
カテゴリ メンタル
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二つ以上の世界を生きている身体 韓医院の人類学
キム テウ 酒井 瞳
2024年が始まってから数カ月が経ち、ほんのりと温かい日差しを肌で感じるようになってきた頃、私はとある身体上の不調を理由に、病院(正確には「診療所」)へと赴くことになった。しかし、病院にまだ向かってすらいないにもかかわらず、私は既に四苦八苦していた。というのも、私は病院という空間が非常に苦手だからである。注射が怖いとかそういった子供じみた理由でないということを予め断っておきたい。基本的には、あの空間に感じる独特な「何か」が苦手なのである。大抵は白だったり薄い水色だったりクリーム色だったりする壁に囲まれた空間、いかにも「ここは衛生的ですよ」と言いたげに清潔感を演出する空間、働いている人みながパリッとしたピンクや黒、多くは白の制服を身に纏っている空間、そして日常生活ではあまり耳にしない語彙が飛び交う空間、あるいは番号がモニターに表示され、それに従って行動する空間、そこに何かしら過剰な同一性を感じるのだ。それは決して「病院」という空間に限ったことではないだろう。学校や会社といった空間も同様に、私としては居心地がよくないと感じている。行ったことはないのであるが、おそらく刑務所といった空間も同様であろう。しかし、病院という空間ほどそれを強く意識させられる場所は他にないと言ってもよいほどなのである。
そんなことをあれやこれやと考えながら病院へと向かう道すがら、ある考えが私を襲ってきた。それは「なぜ病院に行こうと思ったのだろう? なぜ、あそこではなくここ、つまり整骨院や鍼灸院、カイロプラクティックの施術所やその他民間療法と呼ばれる類いの治療が受けられる場所や教会などといった宗教的空間などではなく、他でもないこの『病院』というところに行こうと思ったのだろうか」という考えである。それと共に、なぜ病院はこうなっているのであって、ああではなかったのか、という疑問もあった。つまり、なぜ医師はこのように語り、このような語彙を使用し、このように検査し、このように治療するのだろうかという疑問である。これに対して「それが効果的だと実験で確認されたからだ」と答えることは、この疑問を些かも動揺させないと私は考えている。それについても「なぜそうなのか」と問うことが依然として可能であり、この問題はそっくりそのまま残っているからである。このような説明で満足できるのは、合理的に展開される歴史という一つの神話を前提せずには不可能であるという思いも私を襲っていたのだ。
一度気にかかると歯止めが効かない質である私としては、病院の前についたときも、初診だということで問診票にある空白を一つ一つと埋めていっているときも、受付の方に呼ばれて診察室に入ったときも、医師による早口の説明を聞いた後に検査室に案内されたときも、検査結果と医師の病態把握が説明されているときも、受付で会計を待っているときも、薬が手渡されたときも、常に「なぜああではなく、こうなのか」という疑問が私の頭を埋め続けていた。このときの私を襲っていたのは「歴史の天使」(ベンヤミン)の眼差しであると言ってもよいかもしれない。私はある意味では、過去に目を向けていたが故に、他でもありえたかもしれない現在に思いを馳せていたのである。そのような眼差しを内面化した私に対して、歴史は多くの「謎」をその顔に浮かべながら近づいてくることとなった(大澤真幸)。この問いに対する答えは一筋縄にはいかないだろう。いやむしろ、この問いそのものを問いに付すことさえも必要となるかもしれない。普段、何気なく生活しているときには気にも留めないもの、でも、何らかの機会に顕現し、目線を逸らすことを拒むような何か、それらにこそ注目すべきなのではあるまいか。当たり前とされ、そのことがあるということの偶然性が覆い隠されて不可視になったそれをこそ、問いに付すべきなのではあるまいか。そんな思いに駆られていた。
こういう問いは、これまでにも私の注目を集め続けてきたのではあるが、今回、このような問いに対する一つの語りが世に出たと知り、私はすぐにそれを手に取った。それが本書、『二つ以上の世界を生きている身体 韓医院の人類学』である。本書は、医療という実践がなされる様々なフィールドへと「旅」を行ってきたキム・テウ氏による旅行の記録、いわば「旅行記」である。旅をするとは、異なる空間に身を置くことである。現地の空気を感じることである。そして、他者に出会うことである。それはまさに、キム氏が述べる「人類学」の営みそのものである。本書が人類学的研究の実践を「旅」と呼ぶのは、そのような意味においてである。それは、他なるものに対する想像力を養ってくれることにもなるかもしれない。
本書の特質は、言葉に対する慎重な態度だと言っても間違ってはいないだろう。キム氏は「語ること」に慎重である。本書の最後に「付言 用語解説、または用語解明」という項目が独立して設けられていることが、そのことを端的に表している。そこでは、言葉と知の繋がりが主題とされている。これは非常に重要な視点だと言って差し支えない。
現代の日本社会においては、西洋近代医学なるものが支配的である。故に、鍼灸に代表される東洋医学的なるものは、どこか怪しい雰囲気を帯びたものとして眼差されている。ともすれば、それは非科学的なものとして糾弾されることもあるだろう。それは、非合理的なものとして扱われることもあり、容易に打ち捨てられることにもなりかねない。しかし、本書はそのように安易に事態を投げ捨てることを拒む言葉で埋め尽くされている。そこには、同一性を追求する実践ではなく、差異に目を向ける実践が積み上げられているのだ。
本書を読むと、医療について問うことの意味の広大さを再認することができる。医療について問うことは、単にそれだけには収まらない射程を秘めているのだ。なぜなら「医療は人間の存在に対する根本的な問いとつながっている」からである(33頁)。医療は、人間の存在論的な土台である身体と繋がり、そこ身体の理解は身体の外にある世界の理解と接続されている。つまり、「さまざまな医療に対する人類学の議論は、各文化が積み上げてきた人間の存在と、世界に関する多様な理解をひも解く機会を与えてくれる」(35頁)のであり、「医療は、健康のための知と行為の体系以上の意味を持つ」のだ(39頁)。このことを理解する機会を提供してくれているというだけでも、本書が「ある」意味は小さくない。そこには、閉じている空間を開くことの可能性が現前している。実のところ「医療のあいだには差異がある」のである(204頁)。近年は、東洋医学の西洋医学的解釈が流行となっている。東洋医学的実践が西洋化されつつあると言ってもよいかもしれない。それは東洋医学的実践を、西洋医学的な語彙でもって語ることである。差異を自ら解体し、西洋的なるものに同一化しようとする動きが活発化しているのだ。本当にそれで良いのだろうかという疑問はありえるが、本書はそのような東洋医学の西洋化に待ったをかける停止線ともなるだろう。東洋医学は、今一度自身の差異に目を向ける必要があるのかもしれない。
そんなとき、「医療が一つでなければ身体も一つではなく、身体につながっている存在も二つ以上なのだ。したがって世界も一つではない。複数の世界で私たちも、また異なるノーマルを実践することができる」と声を上げる本書は良き伴走者となってくれることだろう(227頁)。それは、医学的実践が、必ずしも一である必要はないことを確認させてくれる。同一性の確保に躍起になるのではなく、差異を引き受けることを推奨しているのだ。本書は、アネマリー・モルに代表される「存在論的転回」以降になされた医療人類学的研究の結果であり、「多」へと目が向けられている。医学的実践が一となるとき、それは他の実践を排除することになるだろう。もはや起源の偶然性は忘却され、それだけが唯一の歴史となる。そこにおいては、西洋医学の政治的な全面化が果たされている。本書は、そのような画一化を拒絶し、多様にありうる「異なるノーマル」に目を向けさせる。一ではなく多に目が向けられるとき、医療実践には決定的な変更が迫られることだろう。そのような可能性の追求は、決して意味なきことではない。しかし、注意せねばならないのは、ここでは優劣が志向されているわけではないということである。西洋医学的な視点から東アジア医学を見ることは、ときに植民地主義的な志向性を内包する。本書は、そのような視点を拒絶し、両者の特質を明らかにせんとしているのだ。
同一性から差異へのシフト、優劣の二元対立ではなく、異なる多の体系への志向性、そういったものの可能性が追求されているのが本書である。キム氏の旅行記を読むことで、異なるものに出会い、その空気を感じ、自身の外へと逸脱する機会が与えられる。是非とも読者の皆様にもその言葉を、その語りを感じていただきたい次第である。
(平井 優作)
出版元:柏書房
(掲載日:2024-09-06)
タグ:人類学 東洋医学
カテゴリ 身体
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