スポーツ膝の臨床
史野 根生
月刊スポーツメディスンでも登場していただいたことのある史野先生による臨床家向けの本。膝のスポーツ外傷について、著者が実際に経験したものだけを取り上げ、著者の診断プロセス、治療方針の決定、手術や保存療法を含む治療方法について全ページカラーで示されている。
スポーツ医学というジャンルでは、多数の執筆者がそれぞれの専門を担当し、それをまとめた本が多い。専門分化していく世界なので、そうならざるを得ないところもある。だからこそ、1人の執筆者が1冊を書く、いわゆる単著の価値は大きいとも言える。
この本は、本文は80ページ程度で、簡潔にまとめられているが、随所に著者の哲学が現れる。冒頭の「序」でも、いきなり「傷害された人体の組織には治癒能力があり、医療はその治癒能力を最大限に引き出すべきである、というのが医療人としての筆者の哲学であります」という一文から始まる。個性にあふれ、哲学に富み、臨床家としての姿勢を感じることのできる1冊。こうした本が次々に生まれることを期待したい。
2008年1月20日刊
(清家 輝文)
出版元:金原出版
(掲載日:2012-10-12)
タグ:膝 整形外科 スポーツ医学
カテゴリ スポーツ医学
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スポーツ膝の臨床
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運動・からだ図解 運動器・整形外科の基本
石井 賢
試験勉強をするにあたって2つの要素があると考えています。それは「覚えること」と「整理すること」です。やみくもに暗記しても覚えた知識をどこでどう使っていいのかがわからなければ、使い道がわからない知識だけが増えるだけで効率が著しく悪くなります。洋服でも夏物・冬物、インナー・アウター、トップス・パンツなど整理して収納されていると組み合わせが想像しやすいはずです。
ブックレビューの冒頭にふさわしくない文章かもしれませんが、本書をめくると筆者の言葉として「医療従事者の皆さんにとって、整形外科の基礎を短期間で学ぶための導入書」であるとされ、中を読んでいくと注釈に「試験に出る語句」や「キーワード」という項目があります。察するに本書は国家試験の勉強をより確かなものにするための参考書としての役割を意識して執筆されたのではないでしょうか。それぞれの国試において覚えておかなければいけない項目は膨大な量でしょうが、それらをコンパクトに整理されているのが本書の特徴だと言えそうです。詳しい解説は他の書籍に任せて本書は「知識の整理」が目的であると感じました。
特筆すべきは整理の仕方。解剖学的な見地からの解説、整形外科疾患及び治療法からの解説、部位ごとの疾患とそれぞれの区分がとても分かりやすいので、引き出しをしっかり分けた上での構成になっていますので読む側の頭の中での整理もしやすくなっていると感じました。
ひと通り読んでみて私自身しっかりと把握できていない箇所も少なくないことに気づきました。何となく覚えたつもりでも抜け落ちている箇所を認識できるのは受験生にとってはありがたいことかもしれません。本書は整形外科という絞られたジャンルではありますが、本書のような手法で全体を整理しなおすことも可能かもしれません。
もちろん受験生だけではなく現場で活躍されている方にも過去に勉強した知識がどうなっているかを確認できます。多くの方に価値のある一冊になりそうです。
(辻田 浩志)
出版元:マイナビ出版
(掲載日:2025-03-10)
タグ:整形外科
カテゴリ 医学
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