歩き始めと歩行の分析
江原 義弘 山本 澄子
“二足歩行”という移動手段は、非常に特徴的で複雑なものである。もちろん人間にはその他さまざまな動きが可能であるが、基本的動作能力(寝返り・起き上がり・座位保持・立ち上がり・立位保持・歩行)にも含まれる通り、歩行は人体がつくり出す動作の基本である。そして、これが正しく行えるかどうかで、その他の動作・活動に大きく影響が及ぶのである。高度な身体運動を必要とするスポーツ活動において、「正しい歩行が行えるかどうか」が大きく関わってくるのも当然である。
本書では、“歩き始め”を含め、歩行に関する人体のメカニズムを力学的見地から説明している。一般的に行なわれている動作観察では、身体の部位の位置変化を眼で見ることはできる。しかしそれ以前に、各部位へどのような力が加わり、重心がどう動き、どこの筋肉が収縮することによってその動きが起こっているのかは目に見えない。そこを力学的にわかりやすく説明してくれているのである。歩行というものをしっかりと理解したいとき、大変役に立つはずである。
(宮崎 喬平)
出版元:医歯薬出版
(掲載日:2012-06-04)
タグ:歩行 バイオメカニクス
カテゴリ スポーツ医科学
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美しい日本の身体
矢田部 英正
本誌(月刊スポーツメディスン)でも何度か登場していただいた矢田部さんの新著。矢田部さんの著書には『椅子と日本人のからだ』(晶文社)と『たたずまいの美学』(中央公論新社)があるが、この新書は、これまでの成果をまとめ、さらに深い考察を加えた感じがする。
1章「和服のたたずまい」以下、「『しぐさ』の様式」「身に宿る『花』の思想」「日本美の源流を彫刻にたずねる」「日本人の坐り方」「日本の履物と歩き方」「基本について」と計7章からなる。つまり、和服、動作、能の「花」、仏像の美、坐位を中心とする姿勢、ぞうりやワラジ、ゲタと靴、それによる歩行など、矢田部さんが研究し、また日々接しておられるテーマが並んでいる。面白いから読んでくださいと言うしかないが、一部だけ引用しておこう。
「一見、何の役にも立っていないようで、あらゆる物事の認識の基盤になっているのが実は人間の身体で、それは自分を取り巻く風や光や光に照らされた世界を感じ取るセンサーの役割を果たしてもいる。その感覚能力に磨きをかける一つの方法として、坐って姿勢を整えることを好んで選択してきた歴史が日本にはあり、その澄んだ感覚で世界を見つめる感受性こそが、実は日本文化を美しく秩序立ててきた基盤にあるものだと私は考えている」(P.148より)
2007年1月10日刊
(清家 輝文)
出版元:筑摩書房
(掲載日:2012-10-11)
タグ:歩行 履物
カテゴリ 身体
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高岡英夫の歩き革命
高岡 英夫 小松 美冬
本書では歩きをテーマにしてコリをほぐすメソッドを紹介している。
興味深いのが高岡英夫氏が展開する身体意識理論についても書かれていること。本書では「センター」と呼ばれる身体意識について書かれている。センターとは、よく言われる正中線や体軸と言われる身体の中心を通る線のことである。この身体意識を生み出すことにより姿勢や歩行の改善、身体のゆるみを得るというものである。詳細については本書または高岡英夫氏が身体意識理論について述べている書籍がいくつかあるのでご参照いただきたい。
一般的なスポーツなどのレッスン書との違いは、自身の身体の内面に働きかけるといったところではないだろうか。この身体の内面が非常に重要だと私も思う。人はどこかが痛いなど、自分の身体に今起きている結果的な不具合には敏感だが、その過程にある痛みの原因に目を向けないことが多い。自分の中にある不具合の原因や状態の変化に気づくことにより、身体を健康に導けるのではないだろうか。このメソッドの前後では自分の身体に対する意識の感覚が変化していることに気づくと思われる。
自分の身体の内面に気づきを与え、身体を改善するためのメソッドが豊富に書かれているのでぜひご一読いただきたい。
(三嶽 大輔)
出版元:学習研究社
(掲載日:2012-10-16)
タグ:歩行
カテゴリ 身体
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歩くだけで健康になる
主婦の友社
本誌(月刊トレーニング・ジャーナル)でもかつてアメリカでのウォーキング・ブームについて紹介したが、日本でも歩くことが注目され始めた。もちろんそれ以前に歩くこと、ウォーキングを実践する人は多かったが、医科学的な目が向けられたのは最近のことといってよいだろう。本書は、その歩くことも医科学の専門家の協力のもと、歩くことの科学をわかりやすく説明、さらに実際に歩くことで成人病を治した体験集(ドクターメモつき)と全国のコースガイドを加え編集されたものである。執筆・協力者として小野三嗣、小林太刀夫、黒木良克、中島寛之の著名な専門家たちを初め、日本歩け歩け協会、日本万歩クラブなど実践者も多い。なんとなく体調がすぐれないが、走り出す意欲もない人には、格好のガイドブックだし、成人病を抱えている人には、歩くという運動で健康を取り戻した人の体験談は大いに参考になるだろう。スポーツの基本であるというより、人間の営みの基本である「歩くこと」を本書を通じて学ぶのも意義深いだろう。自然に行っていることを私たちは意外に理解していないものである。
主婦の友社編
(月刊トレーニング・ジャーナル編集部)
出版元:主婦の友社
(掲載日:1982-01-10)
タグ:ウォーキング 歩行
カテゴリ 運動実践
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姿勢と歩行 協調からひも解く
樋口 貴広 建内 宏重
姿勢、そして歩行はあらゆる身体活動のベースとなる。ただ、どの筋がどのように働き...といった解説書ではない。筋骨格系それぞれの協力により調整される「協調」を切り口に、中枢神経系との相互作用、環境に応じた制御も含めた大きな視点で紐解いていく。人間の動きの複雑さ・絶妙さとともに、協調がうまくいかないとどういった障害が起きるかもよくわかる。
障害が起きた場合、また防ぎたい場合にどのようにアプローチすればよいかのヒントが詰まっており、対象がスポーツ選手であっても高齢者であっても、臨床における強い味方となってくれそうだ。
(月刊トレーニング・ジャーナル編集部)
出版元:三輪書店
(掲載日:2015-11-10)
タグ:姿勢 歩行 神経
カテゴリ スポーツ医科学
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