神戸スポーツはじめ物語
高木 應光
4つの兵庫県立高校に勤務し、各校でラグビー部監督・顧問を歴任した著者が定年退職を機にまとめた本。当時の神戸におけるスポーツの「はじめ」を歴史的にアプローチし、ゴルフ、テニス、バスケットボール、ラグビーなどの競技を通して日本と諸外国との関係を描き出している。
「スポーツ」は明治初期に日本へ入ってきたとされ、その後、日清・日露戦争を経て「体育」に変容した。当時の神戸ではスポーツ本来の形が存在していたとされ、それは自分たちで会費、会員制を用いることによってクラブを運営する取り組みであり、その教育理念も「アスレティシズム」(スポーツによる人格の育成)の影響を受けていた。
日本においてスポーツ=体育と認識されがちであるが、本書は両者の異なる点を再考することができる。
2006年4月17日刊
(長谷川 智憲)
出版元:神戸新聞総合出版センター
(掲載日:2012-10-11)
タグ:歴史 神戸
カテゴリ その他
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スポーツの源流
佐竹 弘靖
現代におけるニュースをきっかけとして、スポーツ種目のたどった道のりを掘り下げていく。源流を訪ねる旅である。野球、バドミントン、ポロ、柔道など、そしてオリンピックが取り上げられており、数々のエピソードや背負ってきた歴史が当時の社会情勢とともに描写される。
スポーツは、時代によって求められる形に変化することで今まで受け継がれてきたのである。各競技の特徴、あるいは特有の性格のようなものがどこに由来するのか、見えてくる気がする。視野を少し過去のほうへ広げてくれる本である。
(月刊トレーニング・ジャーナル編集部)
出版元:文化書房博文社
(掲載日:2009-09-10)
タグ:スポーツの歴史
カテゴリ スポーツ社会学
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肉体改造並びに体力増強のしかた
窪田 登
ウェイトトレーニングの第一人者である著者による、トレーニングに関してまとめた一冊。各種のトレーニング理論・実践方法の歴史的経緯に触れることができる。著者にとって身の回りに起こったこととして描写されているのが興味深い。自伝を交えた形式であるが、トレーニングの方法、原則、注意点などについても解説されている。
窪田氏がトレーニングを始めたのは1946年のこと。1930年生まれで80歳になろうとする今でも、トレーニングを続けている。その息の長い情熱には圧倒される。「ライフイズムーブメント」の意味が、重みをもって伝わってくる。
(月刊トレーニング・ジャーナル編集部)
出版元:スキージャーナル
(掲載日:2009-12-10)
タグ:歴史 自伝 トレーニング
カテゴリ トレーニング
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幻の東京オリンピックとその時代 戦時期のスポーツ・都市・身体
坂上 康博 高岡 裕之
題名にある「幻の東京オリンピック」とは、立候補したがリオデジャネイロに開催決定した2016年のものではなく、戦時中の1940年のものである。開催決定までの誘致活動の様子、そして返上に至る過程について、スポーツ社会学的な分析が行われている。
各地の大規模な運動公園など、さまざまな運動施設はスポーツを行うインフラを担っているが、すでにこの時期から計画・整備が始まっていたことが本書により明らかにされている。オリンピック誘致と連動して、さまざまな変化が起きていること、それが戦後にも大きな影響を及ぼしていることが興味深い。
そのほかの題材として、都市空間、広告における写真表現、学生野球、集団体操などが取り上げられ、当時どのような動きがあったのかが文献に基づいて立体的に浮かび上がる。
(月刊トレーニング・ジャーナル編集部)
出版元:青弓社
(掲載日:2010-04-10)
タグ:歴史 オリンピック
カテゴリ スポーツ社会学
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筋力トレーニング100年史
窪田 登
具体的なトレーニング例と同時に、そのバックグラウンドとなる理論がまとめられている。窪田氏の個人的なエピソードも紹介され、紀元前から近代にかけて、トレーニングに関する100年をみわたすことができる。さまざまなトレーニング方法が生まれ、普及していく様子がうかがえる。1986年の「筋力トレーニング法の変遷――100年史」を大幅に加筆訂正されたもの。
(月刊トレーニング・ジャーナル編集部)
出版元:体育とスポーツ出版社
(掲載日:2007-11-10)
タグ:トレーニング 歴史
カテゴリ トレーニング
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なぜ人は走るのか ランニングの人類史
Thor Gotaas 楡井 浩一
「ランニングの人類史」というサブタイトルの通り、「走り」の歴史が詰まった本です。古代はまさに命がけで走っていました。地球環境が変わり森の多くがサバンナになった時代、サバンナを走り獲物を追いかけたことが、活動領域という点において森にとどまった類人猿との決定的な分かれ目になったそうです。人類の繁栄に少なからず「走り」が関わっていたようです。
時代は変わり、交通手段がなかった頃、伝令という重要な役割が「走り」に課せられ、そこで命を落とした者を記念してレースという競技の起源だそうですが、その残酷さ過酷さゆえに人々の熱狂を生み、今に至るまで人気競技の座を得ていることには考えさせられました。
レースになり勝敗がかかる以上、人々は勝つためにあらゆる手段を駆使しました。お金も絡んでくるし、ドーピングの問題も発生するし、靴や時計などの関係用具の発達など、ランニングの光の部分と影の部分の双方が絡み合って様々な歴史を刻んできたようです。走りの歴史は人類の歴史とぴったり寄り添っているようにも見えます。
日本で人気の駅伝という競技は個人主義に走らず団体の和を重んじる日本人の国民性ゆえに定着したようです。そういう意味では「走り」には文化も反映されるようです。
歴代の有名ランナーのエピソードから一般人のジョギングの歴史まで、事細かに紹介されています。まさに「走りの百科事典」といえる一冊です。
(辻田 浩志)
出版元:筑摩書房
(掲載日:2015-07-22)
タグ:ランニング 歴史
カテゴリ その他
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近代スポーツの誕生
松井 良明
イギリス発祥のスポーツは数多くありますが、イギリスのスポーツの歴史を紐解くことでスポーツそのものの歴史が見えてくるかもしれません。スポーツといっても近代におけるスポーツとはずいぶんイメージが異なるものであることがわかります。本書においては「闘鶏」と「拳闘」に焦点を当て、近代スポーツとは異質なスポーツの原点を解説し、スポーツの変遷がまとめられています。
本書のカギとなるワードは「ブラッディ・スポーツ」。今の時代なら野蛮だと顔をしかめる方も多いとは思いますが、「流血」こそが人々が熱狂する要素だったようです。18~19世紀とは価値観も異なりますが、大っぴらに言えなくなっただけで人は血なまぐさいことが好きなのかもしれません。また今の時代、動物愛護の精神が社会規範にまで高まりましたが、キツネ狩りや闘牛などが行われてきたヨーロッパにおいてはアニマルスポーツは当然の存在だったようです。本書は単純にスポーツの歴史だけを見るものではなく、当時の社会の中のスポーツとして書かれていますのでスポーツを取り巻く環境がリアルに見えるのが大きな特徴となります。それとスポーツに向けられる興味が娯楽であったり賭博であったりスポーツそのものだけではなく付随する要素がスポーツのあり方に大きな影響を及ぼしているのがわかります。現代においても賭博という要素は法律上で枠組みが決められてはいますが、決してなくなったわけではありませんので現代にも通じる問題となります。
人間の野蛮な一面も、昔の問題として切り捨てることはできません。それでもジェントルマンとして理性を保とうとする社会的なジレンマは今の時代にも共通するのであり、人間の本性と理性が拮抗する中でスポーツが変化を伴いながら存在してきたという歴史。あくまでも過去のイギリスが舞台として書かれていますが、むしろこれからのスポーツのあり方にも関わる歴史なのかもしれません。
価値観は時代とともに変わります。未来のスポーツが現状のままではないことは本書に書かれた歴史を見れば想像できそうです。100年先200年先のスポーツがどのような変化を遂げるか気になってきました。
(辻田 浩志)
出版元:講談社
(掲載日:2021-06-15)
タグ:スポーツの歴史 闘鶏 拳闘
カテゴリ その他
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スタジアムの戦後史
阿部 珠樹
カクテル光線
誰がネーミングしたのだろうか。このまことに素敵な響きを持つ言葉を耳にすると、必ずといってよいほど私はある空間へと引きずり込まれていく。私の父は決して野球好きのほうではなかったが、小学生の頃私を何回か野球場へ連れて行ってくれた。今でも忘れない。初めて後楽園球場に連れて行ってもらったときのことである。確かオールスター戦だったと思う。父の後について球場のスタンド裏手の通路を歩き、自分の席に最も近い階段を上ってスタンドに出たときのことである。私は強烈で真っ白な、そして妙に暖かな光線に全身を包まれてしまい、一瞬目が眩んでしまったのである。それ以来、「目が眩む」という表現に出会うと、私の頭脳はこのときの情景を再現するようになった。初夏の、涼やかな、そしてまだ青みを僅かに残した空を背景に輝くこのカクテル光線の群れは、私が父と過ごした幸せな思い出とセットとなって、今でも私の中に大切に保存されている。
「1937年(昭和12年)に完成し、1987年(昭和62年)まで、本家後楽園の隣でプロ野球のホームグランドとして観客を集めた後楽園球場は、日本を代表するスタジアムだった」。こんな話から始まる本書だが、主役は決してスタジアムそのものではない。「最初は主だったスタジアムの来歴とそこで演じられた試合中心に話を進めるつもりだったが、調べてゆくうちに、選手や試合よりも、スタジアムを作った人物、そこを訪れた人々、そしてスタジアムの栄枯盛衰と時代の空気とのかかわりのほうに関心が移り、そうした話が中心になった」と“あとがき”にもあるように、本書は後楽園球場と正力松太郎、両国国技館と春日野理事長、東京スタジアムと“永田ラッパ”で名を馳せた永田雅一など、いわゆるスタジアム建設の立役者とその時代が主役なのである。
伝統と国際化の相克
1964年(昭和39年)10月10日に開幕した東京オリンピックは、日本の戦後の完全復興と国際社会への仲間入りを世界にアピールする役目を担って開催されたといっても過言ではない。そして、この大会で初めて種目に採用されたのが柔道である。「敗戦後、占領軍によって学校教育での実施が禁じられた武道(柔道、剣道、なぎなた、弓道)だが、徐々にその禁も解かれ、1950年代後半には中学、高校での科目にも取り入れられるようになった。こうした武道復興の動きの一方、1964年のオリンピックの東京開催が決まり、スポーツへの注目度が高まる。この二つの流れを受ける形で『武道の大殿堂』建設の声が国会議員の間で高まった」結果、現在の武道館建設が実現する。ところで、この武道館という建物は建築家山田 守の作品で「正八角形の床面に八面の屋根を持つ屋内競技場としては珍しい形状で、屋根の頂点には金色の義宝珠(ぎぼし)が置かれるユニークなもの」であるが、この武道館建設には東海大学創立者松前重義が大いに采配を振るったという。「富士の裾野を連想させるゆったりした流動美」を持つこの純日本的建物に、松前は「日本的テイストに彩られた山田の設計案のなかに、国際的にも通用する普遍性を見て」とり、彼が柔道の未来のためにぜひ必要と考えていた伝統的性格と近代的、国際的性格を合わせ持つスポーツへ移行させる考え方と合致すると踏んだようだ。まさに伝統と国際化の相克が、見事に武道館建設によって昇華されたわけである。
スタジアムの建設というものが始まったのは紀元前450年頃らしい。この古代ギリシャの1単位であったスタジオン(約180m)の競争路を持っていたことを語源とする建物は、以来、古今東西で数多くの人間ドラマを生んできたに違いない。本書もこうしたスポーツのハードウエアーとも言うべきスタジアムの建設をわが国で画策し、人生を賭した人々をテーマに据えている。そこには、カクテル光線に包まれたグラウンド上にはない人間ドラマがあることを、別の意味でのスポーツの魅力をわれわれに教示してくれているように思えてならない。
(久米 秀作)
出版元:平凡社
(掲載日:2006-01-10)
タグ:スタジアム 歴史
カテゴリ その他
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歴史を活かす力 人生に役立つ80のQ&A
出口 治明
テーマごとに問答形式で歴史を紐解く本書。
常に現代の状況との関連で歴史を見ていくので、教科書的な退屈さはなく、ついひとに話したくなるようなトピックが溢れている。
たとえば、なんで世界中に民族衣装はあるのに、洋服がベーシックになっているのか。これは産業革命がイギリスで発生したことに起因するという。それまでの主だった産業である農耕牧畜が天候の影響を受けやすかったのに比べ、工業生産は安定して生産物を供給できることから、自国にも工業生産を取り入れようと世界中からひとが集まり、洋服を着て帰国したため広まったらしい。
ほかにも、中華料理が世界中に広がっている背景には、アヘン戦争以降のイギリスの世界戦略に中国人の人びとが労働力として利用され、各地に離散したこと。また、石炭などを利用した火力革命によって、中華料理の特徴である、高温で食べ物を揚げたり炒めたりする技術が発明されたことで、どの国のどんな食材でも簡単に調理できるようになったことが理由だという。
意外だったのは、フランス料理の起源はイスラーム帝国にあり、一品一品出てくる様式はロシアの寒冷環境で、料理が冷めないように、という配慮から生まれたこと。フランス料理がフランスで大衆化したのは、フランス革命によって失業した宮廷料理人たちが、町で続々と開業したことで広がっていき、一部は当時相当なフランスかぶれだったロシアに流れ、今のフランス料理の形式になったという。
もっと前に遡れば1492年に新大陸を発見したコロン(編注:クリストファー・コロンブスのスペイン語読み)によって新旧大陸間で、動植物や食材の行き来があったことが、今の食卓の光景に影響を与えている(このときより前にはピザやパスタにトマトは使われていなかった!)。
ちなみに、この「コロン交換」によって新大陸に天然痘や麻疹、コレラなどの病原菌がもたらされ、免疫を持っていなかった大勢の原住民が命を落とす。その結果、農地や鉱山で労働力が必要になったヨーロッパ人は、アフリカ大陸から黒人の人たちを奴隷として連れてくることになる。
学校で歴史を習っているときに退屈だったのは、自分とは全然関係のない話だと思っていたからだと思う。ある程度、馬齢を重ねたことも、ほんの少し歴史に関心を持ったことに貢献しているんじゃないかと考えている。
(塩﨑 由規)
出版元:文藝春秋
(掲載日:2022-08-27)
タグ:歴史
カテゴリ 人生
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