iPS細胞ができた!
山中 伸弥 畑中 正一
1996年クローン羊「ドリー」の誕生のニュースは全世界を震撼させ、次いでES細胞(胚性幹細胞)が発表された。再生医療への研究はさらに進み、2007年11月20日、山中伸弥教授のチームがヒトの皮膚からのiPS細胞(人工多能性幹細胞)作製成功を発表した。 ES細胞もiPS細胞もどちらも、期待されている再生医療であるが、ES細胞は受精卵を壊して使うもので、受精卵を使用することから倫理面と他人の細胞を使うため拒絶反応の問題があった。一方、iPS細胞は皮膚細胞など自分自身の体細胞を使用するため拒絶反応がない。したがって、自分の悪くなった臓器の細胞をiPS細胞から再生することで、将来的に自分の細胞で病気を治すことができるようになるのではないかと注目されているものだ。
本書は、このiPS細胞を研究し作製に成功した山中伸弥氏と京大ウイルス研究所所長などを経て現京大名誉教授の畑中正一氏との対談で構成されている。一見難解な話も読み進めていくうちに、決して楽ではなかった研究の過程やiPS細胞を発見したときの喜び、これからの再生医療に対する思いなど、山中氏の人柄が聞き手の畑中氏によって引き出され、読者もワクワクした気持ちで引き込まれていく。また、文字が大きく読みやすい装丁で最後まで飽きずに読むことができる。最先端医療の未来を感じる一冊である。
2008年5月31日刊
(田口 久美子)
出版元:集英社
(掲載日:2008-10-15)
タグ:iPS細胞
カテゴリ 生命科学
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雌と雄のある世界
三井 恵津子
生物学の本である。著者は、お茶の水女子大理学部科学科から東京大学大学院生物化学専攻の理学博士。ドイツ、アメリカでの研究生活後、サイエンス系出版社で編集記者、編集長を務めた。現在はサイエンスライターである。
ご存じのように、生物学の世界は日進月歩。正確には、分子細胞生物学、分子遺伝学、発生生物学など、どんどん細かくなっていて、一般には新しい発見についていけそうにない。本書は、そういう世界でどこまで研究が進んでいるのか、何がわかってきたのかを、わかりやすく教えてくれる。iPS細胞やクローン技術などトピックも満載。
発展著しい分野だが、わかってくるほどわからないのが生物とのこと。わかっていないことのほうが多い。著者は、この本を書いたとたんに書き直さなければいけないのではないかと記しているが、それくらい新たな発見が続いている。
書名にある「雌と雄」の話も面白いが、こうした発見の概要を知るだけでも楽しい。しかし、つくづく思うのだが、細胞の話はなんと人間の社会全体にあてはまることが多いのか。細胞について考えると、自然と宇宙や命、つまり人生全体へ思いが及ぶ。
2008年10月22日
(清家 輝文)
出版元:集英社
(掲載日:2012-10-13)
タグ:生物学 生命科学 細胞
カテゴリ 生命科学
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