やってはいけないプレー100 世界の超一流選手はこうしている
下田 哲郎
本書には、日本では常識とされているサッカーの練習方法やプレースタイルを、「やってはいけない」ものとして海外のスター選手と比較して紹介している。
その中の例として、「トラップを足下に止める」「フリーのプレーヤーにパスする」「数的不利は避ける」などがある。
とくに目を引いたのが、ベッケンバウアー選手はスライディングタックルをしないというトピックである。スライディングタックルが必要とされるような状況をつくらないという意味で、後方から事前に前線の選手に指示を出し、リスク管理を行うということである。そうすることで余裕をもって、ボールをもった敵の侵入を阻むことが可能になる。
常識を「やってはいけない」ものとするには、スター選手ならではの納得させる理由がある。もちろん超一流とされる舞台で生き残るために産み出された知恵と技術であり、彼らにしかできないプレーなのかもしれない。かし、本書をプレーヤーが読むと参考になるだろうし、ファンにとってもサッカーを観る楽しみを増やすだろう。
本書に掲載されていないスター選手もいるので、あの選手はどんなことを考えてサッカーをしているのだろうと想像しながら観戦するのも、醍醐味の1つとなる。
(平松 勇輝)
出版元:東邦出版
(掲載日:2013-09-09)
タグ:サッカー 練習
カテゴリ 指導
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勝つためのドリルマニュアル② ラグビー
高校選手のフィジカル
今年度のラグビーシーズンも数々の名勝負が放った輝きを残し、終わりを告げた。個人的には学生ラグビーのレベルの高さをありがたく楽しませてもらった。大学選手権決勝も「痺れた」が、花園ラグビー場で熱戦が繰り広げられた高校ラグビーの準決勝、決勝には、いつも以上に感動させてもらった。
それにしても最近の高校ラグビー選手はフィジカル能力が高い。サイズがあるということだけでなく、活動量の多い今のラグビーで全ポジションの選手がよく動く。押し、走り、あたり、また押し合い、走ってあたる、全国大会ではそれを一日おきに60分間やり続ける。このスケジュールの是非に関しては脇に置くが、彼らは単純にはとても言い表せないラグビーフィットネスを練り上げてきている。パスやキックなどの基本スキルもフォワード、バックスにかかわらず高いレベルだ。
いや、待て。最近はと書いてはみたものの、こういったことは10年以上前からずっと感心しているところだ。では、改めて何に心打たれたのか。アタックにおいてもディフェンスにおいても徹底された戦術だ。そしてそれを実行するための細かなスキルを身につけていることだ。しかもその戦術を高校生ラガーマンたちが自らの判断で、いつ、どこで、どのように使うかを理解していて、しかもそういった型にハマるだけでなく、アンストラクチャーの状態からも意思を持って自在に攻撃できるという、そういったレベルの高さに感動してしまう のだ。3年間という限られた時間の中でメンバーが代謝し続ける高校ラグビーで、名門校であり続ける条件とは何だろう。
ノウハウの公開
本書では、その高校ラグビー名門校を中心に、いくつかの練習方法やそのコンセプトが紹介されている。最近出版された本書以外でも、一昨年には東海大仰星高校の土井崇司氏(元監督)による『もっとも新しいラグビーの教科書』、東福岡高校の藤田雄一郎監督による『ラグビーヒガシ式決断力が身につくドリル』が出版されている。高校ラグビーの世界から全てのレベルに通ずる現代ラグビーの原理・原則や思考基準、それを身につけるための方法論が発信されているのである。
ラグビー先進国からの情報が入りやすくなっている環境もあるだろうが、名門校はそれに自分たちのオリジナルもふんだんに加えてチーム力を上げるさまざまな工夫を凝らしている。その仕組みを持っていることが、まずは名門校の条件となる。では、門外不出としておきたいようなこれらのノウハウを惜しげもなく公開してしまう理由は何だろう。より強い相手の出現を求める王者の風格か、はたまた日本ラグビー全体の底上げを願う賢者の篤志か。
30年ほど前の話になるが、専属の監督もいない素人集団大学ラグビー部のキャプテンとなった私は情報に飢えていた。ラグビーって一体どうすればいいのか本気で悩んでいた。自ら築き上げる創造力も乏しかったし、選べるほど選手もいなかった。ラグビーの練習内容やトレーニング方法について、目についた本を取り寄せ読み解き、ない知恵を搾り出しては練習方法や戦術(と言えるほどのものではなかったが)を考えていた。しかし当時はラグビーの体系的な戦術書と言えるものはほとんどなかった。
では、あの頃これらの良書が入手できればどうだったか。それはありがたかったと思うし、これらのドリルを模倣するだけでもチーム力は上がったはずだ。しかし、間違いなく次の壁にぶつかっていただろう。実際の試合中に、何をどう使うのか、状況を理解し、自ら思考して判断し、瞬時に行動に移すということを選手全員が主体的にできるようになるにはどうすればいいのかという壁に。名門校はそこをブレイクスルーできる何かをも持っているはずだ。
主体的な判断をもたらすもの
ボールに直接絡む「on the ball」プレーと、その他の「off the ball」のプレー、圧倒的に多くなる後者の中にも、常に的確に状況を把握し、果断に決断し、勇敢に実行する意思が必要となる。高校全国大会の上位チームは、戦術に振り回されるのではなく意思をもってそれらを活用していた。スクラムやラインアウトなどのセットプレーしかり、スタンドオフの前方にシェイプをつくって的を絞らせないなど工夫を凝らしたアタックシステムと整ったディフェンスシステムとのブレイクダウンの攻防しかり。ボールを持ってトライゾーンに飛び込む華やかな瞬間に至るまでには、チームのために身体を張って自らの役割をまっとうする「off the ball」のプレーが積み重ねられている。ラグビーという激しいスポーツにおけるこれら全ての「on the field」の行動は、ただノウハウを知っているだけではやはり体現不可能なのだ。
もちろんこれらは「on the field」の練習で磨き上げられるのであるが、加えて「off the field」の立ち居振る舞いによって培われる部分も大きいはずだ。練習準備や後片づけなどのみならず、授業中の態度や通学中の電車の中でのバッグの置き方から周囲への配慮、親をはじめ周りの人たちへ感謝する気持ちなど、人としての生き方が「on the field」に現れるのだ。
優秀な指導者の導きの中、自らの生き方を問い、考え、それを主体的な行動に移すという人間としての成長を促す環境、それがなくてはたとえば決勝の東福岡高校のゴール前のディフェンスのようなプレーはできないし、名門校としての存在など維持できないはずだ。だから観ていて奮えるのだ。
(山根 太治)
出版元:ベースボールマガジン社
(掲載日:2017-03-10)
タグ:ラグビー 練習 ドリル
カテゴリ 運動実践
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「練習しない」アスリート 成長し続ける50の思考
藤光 謙司
著者のことはまさしく「練習しないアスリート」というイメージがあった。
あるテレビ番組で藤光選手が練習を終えた後に、自身の足でなくセグウェイ(編注:立位で乗り、体重移動によって操作する電動二輪車)に乗り競技場を後にしていく姿が特集されていた。当時は足を休めるためなのか、バランスのトレーニングになるのかなど考えたものの、不思議な選手が現れたなというのが第一印象であった。よくよく考えると、この印象を持った私はすでに、競技場は自分の足で歩くものという固定観念にとらわれていたのである。
本書にはセグウェイのことは記されていないが、なぜ著者である藤光選手がそういった行動に出たのかが伺える。あの行動や練習をしていないように見えているのは、あくまで結果を出すための手段であり、彼の考えが表れているのだなと分かった。
本書でも紹介されているように、成長し続ける思考法の1つに「固定観念にとらわれない」という内容があったが、著者自身がとんでもない考え方を持っているというわけではなく、多くの方に会う機会があれば、そのお会いした方の考えを純粋に受け取り、深く考え、自分の成長するアイデアとして昇華させているように感じた。
そんな著者の思考法に触れることで、私自身も、新しいアイデアと出会い、成長する人のマインド、結果を出した藤光選手のやり方を学ぶことができた。
タイトルにもある通り陸上競技者への専門書というわけではなく、成長したい方向けで幅広い業界に通じる書籍であり、新社会人や働き方にマンネリ化が生じている方に新しい思考のエッセンスとしておすすめの一冊である。
(橋本 紘希)
出版元:竹書房
(掲載日:2021-05-24)
タグ:陸上競技 練習
カテゴリ 人生
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