自転車と健康
前田 寛 石橋 健司 岡内 優明
これから何か運動をしていこうと考えている人に対し、自転車の魅力を歴史から始まり、運動生理学、栄養学、力学などを通じて紹介している。各項目とも必要なことだけをポイントを押さえて解説しており、力学についてはとくに縁のない人でもわかりやすいように図をうまく利用して解説されている。
どのようにトレーニングをしていけば体力が向上するかというトレーニング理論はあまり紹介されていないが、1つ面白いトレーニングが紹介されている。それは力を音に変換し、フィードバックを行う方法で、非常に独創的な発想だ。トレーニング中に音程や音量が変化すればトレーニングをしている本人は嫌でも気がつく。数値といった視覚ではなく、聴覚で認識させることにより、効果的にペダリングの質の改善をすることが可能になる。
本書はあまり運動に対して知識のない人でも一通り目を通すことで、「自転車とはこういうものなんだ」と普段乗っている自転車に対しても見方が変わるかもしれない。
競技だけが自転車の世界ではない。キャンプなども含めた旅の移動手段や自転車そのものに乗ることを楽しむなどさまざまな目的がある。本書を足がかりにして、自分なりの自転車との関係を築き上げてみてはいかがだろうか。
(澤野 博)
出版元:東京電機大学出版局
(掲載日:2012-02-07)
タグ:自転車 入門 トレーニング
カテゴリ トレーニング
CiNii Booksで検索:自転車と健康
紀伊國屋書店ウェブストアで検索:
自転車と健康
e-hon
トレーニング日誌
ヴォルフラム・リントナー
書籍というよりタイトル通りトレーニング日誌である。競技者であれば誰でも練習日誌をつけているであろう。それを自転車に特化し、52週分のデータが書き込めるようになっている。日付が入っているわけではないので、その日から52週にわたって利用できる。
もちろんそれだけではなく、トレーニングに対する基本的な考え方や、ギヤー比などのちょっとした情報を簡潔にまとめてある。
細かい理論はほとんどないため、トレーニングに対して知識がなければこの日誌を使いこなすことはできない。記録をつけることは大切であるが、それは過去のことであり、目標を達成するためにどのような計画を立ててトレーニングを進めてゆくか。最初に年間計画のページがあるため、自然とどのようにトレーニングを進めてゆくべきかを考えることができる。
そのようにきちんと計画を立てられる競技者はどんなものでもかまわないが、自他共に認めるような三日坊主にとってはこのようなものがあったほうが長続きするかもしれない。
(澤野 博)
出版元:未知谷
(掲載日:2012-02-07)
タグ:自転車 日誌 トレーニング 計画
カテゴリ トレーニング
CiNii Booksで検索:トレーニング日誌
紀伊國屋書店ウェブストアで検索:
トレーニング日誌
e-hon
ミラクルトレーニング 7週間完璧プログラム
ランス アームストロング クリス カーマイケル 本庄 俊和
スポーツ・サイエンス開闢への期待
2002年7月6日に始まった第89回ツール・ド・フランスは、21チーム総勢189名の選手がひしめき合う中、23日間のフランス一周の旅に出た。コース全長が3,277kmにわたるこのレースは、まさに人間が持ち得る叡智と体力のすべてを結集して挑戦する「世界でもっとも過酷なスポーツ・レース」といっても過言ではない。
この「世界でもっとも過酷な」レースを今大会を含めて4年連続で制した男がいる。その男の名はランス・アームストロング。アメリカ・テキサス州生まれ、30歳。彼は幼い時からサイクリングに親しみ、そしてごく自然にロードレースに出るようになったという。
さて、今回のもう一人の主役クリス・カーマイケルが、ランスと出会ったのは1990年ランス17歳のとき。当時、アメリカ自転車競技連盟の男子ロードナショナルチームコーチになったばかりのクリスは、ランスの走りを見て、彼が秘めている大変な潜在能力に気づくとともに、彼は走り方について何も知らないと感じたという。
ところが、順風満帆に見えたランスの競技人生に大きな転機が訪れる。それは、ランスの身体が癌によって蝕まれ始めているという事実から始まる。彼は、睾丸癌と診断されたのだ。1996年7月のことであった。
しかし、本書でこのことに触れられているのは、ほんのわずかだ。むしろ、本書のテーマはこんなところにあるのではないと言わんが如く、第一章から「自転車の基本」といきなり本質にフォーカスを絞って、機材のフィッティング、コンポーネント、メンテナンスと修理、ライディングポジション、ハンドリングなどの項目が並ぶ。玄人好みのハードな出だしだ。
そして、本書の心臓部はなんと言っても第二章「カーマイケル・トレーニング・システム(CTS)」。まさにこれがタイトルにある「ミラクルトレーニング」の本性であるわけだが、このシステムの中核をなす心拍トレーニング法やターゲット心拍数、有酸素運動領域の上限ぎりぎりでトレーニングするための乳酸閾値(LT)の概念などは、日本ではまだあまり一般的ではない。
このようなスポーツ・サイエンス領野の専門用語がごく普通のトレーニング用語として頻繁に文中に出てくるところに、スポーツパーフォーマンス(競技成績)とスポーツ科学の米国における親和性を羨ましく思うのは私だけであろうか。
極めつけは、本書後半に出てくる「ペダリングの科学」。アメリカ・オリンピック・トレーニング・センターのスポーツ科学技術部門が行ったバイオメカニクス・サービス・プログラムによるテストを分析した結果、ランスたちアメリカナショナルチームのペダリング・ストロークが画期的に変わったという。まさかこの結果が、その後のランスの強さのすべてとは思わない。しかし、こういった記述をみて、わが国でも一日でも早く、一般のスポーツ書籍の中に競技成績とスポーツ科学の相関が当然の如く記述され、それをまた当然の如く読者も受け入れられるようになってもらいたいものだと感じた。これこそ、まさにわが国のスポーツ・サイエンスの開闢というものではないか。本書は、そんな期待を抱かせる一冊であると、私は思う。
(久米 秀作)
出版元:未知谷
(掲載日:2002-11-10)
タグ:自転車
カテゴリ 運動実践
CiNii Booksで検索:ミラクルトレーニング 7週間完璧プログラム
紀伊國屋書店ウェブストアで検索:
ミラクルトレーニング 7週間完璧プログラム
e-hon
シマノ 世界を制した自転車パーツ 堺の町工場が「世界標準」となるまで
山口 和幸
堺の町工場から世界標準へ
本書は、自転車部品メーカー「シマノ」が世界一の自転車「パーツ屋」になるまでのノンフィクションドラマである。
株式会社シマノは現在大阪府堺市に拠点を置く。創業は1921年。鉄工所の職人であった島野庄三郎が島野鉄工所として興した会社である。
当初島野鉄工所ではフリーホイールというギヤパーツを製造していた。しかし、その初代社長庄三郎が逝去した頃には第一次サイクリングブームも終り、会社は経営の建て直しを迫られる。
そんな会社を引き受けたのが庄三郎の長男尚三である。そして、彼と弟の敬三、三男の喜三が会社経営に乗り出してからは、三兄弟は才覚と社内での役割を三者三様にこなし、これが“三本の矢”となって会社を大きく飛躍させていくことになるのである。
ブレーキにシフトレバーを載せろ
「おい長、あれ困るんちゃうか?」
7400の企画を担当していた長義和が、島野敬三専務に呼ばれた。長はSIS(シマノ・インデックス・システム)と呼ばれる変速機の位置決め機構を7400に搭載した際の中核となった人物で、それ以前自転車選手時代はミュンヘン五輪とモントリオール五輪に出場。モントリオールでは日本自転車界初の6位入賞を果たした日本短距離界の名選手であった。
「SISできてええねんけど、上りで立ち漕ぎするやろ。そしたらハンドルから手が離せないから、変速できへんやろ」
「まあ、できませんね」
(中略)
「あれって因るんちゃうか。アタックされるでしょう、こっちが変速しているすきにね」
「まあ、それもヤツらの作戦ですから」
「チェンジレバー、手元にあったらいけるんちゃうんか」
シマノを世界的自転車企業に躍進させた原因は、こんな発想の柔らかさにあったようだ。
ストレスフリーという名の自転車
この物語はシマノの商品開発に対する先見性とそれに注ぎ込む情熱が中心であるが、実は本当の主人公はここに出てくる社員一人一人なのである。
前述の会話にもあるように、選手の実績を持つ社員と会社のリーダーが直接意見をぶつけ合う。リーダーは常に誰でも乗りやすい、人間にとって限りなくストレスフリーな自転車を想像する。それを、技術者であったり、元選手であったりした人々に実現するように指示する。そして、この会社では指示を受けた人々が実に誠実に、満身に力を込めて実現しようとしている。ここにシマノの世界一たる所以がある、と著者は看取する。
翻って考えれば、スポーツ現場においてもコーチは技術者(選手)-人一人に先見性を持って技術の進歩・実現を望むべく指示を出し、選手が誠意を持って答えを出そうとしたときに最高のパフォーマンスが生まれる。
実業界とスポーツ界の違いはあれ成功の秘訣は同じところに潜んでいることに、本書を読んでいると気づかされる。
私事で恐縮だが、実は8年ほど大阪に在住していたことがあり、その間にシマノのレーシングチームで体力測定やら実走中のベタルにかかる力(踏力)の測定やらを手伝ったことがある。
残念ながら、我がデーターはまったくシマノの世界的躍進には役立たなかったようだが、本書中にも当時レーシングチームをまとめておられた岡島信平氏の名前や辻昌憲監督の名前を拝見し、妙な現実感を持ちながら本書を読ませていただいた。
日本は技術立国であると言われているが、本書を読んで改めて納得した。日本はまだいける、と勇気をもらえる一冊である。
(久米 秀作)
出版元:光文社
(掲載日:2004-03-10)
タグ:開発 自転車 パーツ
カテゴリ その他
CiNii Booksで検索:シマノ 世界を制した自転車パーツ 堺の町工場が「世界標準」となるまで
紀伊國屋書店ウェブストアで検索:
シマノ 世界を制した自転車パーツ 堺の町工場が「世界標準」となるまで
e-hon
ミラクルトレーニング 7週間完璧プログラム
ランス アームストロング クリス カーマイケル 本庄 俊和
自転車競技は自転車の素材や、性能だけで勝利できるものではない。それ以外にも身体能力を始め、さまざまな要素が勝利をつかみ取るためには必要になってくる。もちろんこれはどのスポーツにおいても同様だ。
近年自転車を始める人が多くなってきているという話を聞くが、自転車本体だけに話題が集中しているようにも思える。一度この本を読んで、トップレベルの競技者がどのように考えているのかと合わせて、自転車競技の奥深さに触れてほしい。
ランス・アームストロング、クリス・カーマイケル共著 本庄俊和訳
(澤野 博)
出版元:未知谷
(掲載日:2012-10-13)
タグ:自転車
カテゴリ トレーニング
CiNii Booksで検索:ミラクルトレーニング 7週間完璧プログラム
紀伊國屋書店ウェブストアで検索:
ミラクルトレーニング 7週間完璧プログラム
e-hon
ロード競技トレーニング ホビーレーサーからトップアスリートまで
ヴォルフラム・リントナー 安家 達也
副題に「ホビーレーサーからトップアスリートまで」とあるように、さまざまなレベルの競技者に向けてのトレーニング法を紹介している。
どのレベルでも共通しているのは、現在の自分の状態を把握し、目標の設定をすることから始めることだ。ただし、現状把握も目標設定も、願望に強く影響された主観的なものではなく、客観的な根拠を伴っていることが重要である。
本書では、根拠となる基準の求め方、目標設定、達成後の再設定など、トレーニングプラン設計の重要性を解説している。ロード競技の競技力向上に必要な要素、条件をカバーしている一冊と言えるだろう。
(西澤 隆)
出版元:未知谷
(掲載日:2013-03-18)
タグ:自転車 トレーニング
カテゴリ トレーニング
CiNii Booksで検索:ロード競技トレーニング ホビーレーサーからトップアスリートまで
紀伊國屋書店ウェブストアで検索:
ロード競技トレーニング ホビーレーサーからトップアスリートまで
e-hon
ツールへの道
今中 大介
世界的に有名な自転車のレースであるツールドフランスに、日本人で初めて参加した著者のヨーロッパでの生活を日記形式でまとめてある。日本にいては決してわからない世界で興味があるということもあるが、情景が目に浮かぶようでどんどん引き込まれる。
自転車競技のロード種目は一見すると個人種目のようであるが、実は団体種目でもある。アシストと呼ばれる立場の競技者がサポートカーから食料などの補給をチームメンバーに行ったり、アタックをかけたほかのチームのメンバーについていったり、逆にアタックをかけられないように速いスピードで走行し、集団をコントロールしたり、さまざまなことを行いながら、チームのエースを勝たせるようにする。
海外のある地域にたった一人の日本人といて生活をしてゆくことは非常に大変だ。もちろん周りの人は外国人ということで非常によくしてくれるので全く問題はないのだが、ふとした瞬間に寂しく感じることもある。その寂しさは、日本人と会ったときに妙にうれしく感じている自分に気がつくことで、実は寂しかったのだということを再認識する。しかしその寂しさがあることをわかった上で、日本を飛び出しストイックに世界基準の中で戦うことが必要ではないであろうか。科学的トレーニングという言葉に踊らされることなく、競技者として何を求めるのか。勝利に対する想いを再認識させられた。
(澤野 博)
出版元:未知谷
(掲載日:2013-03-22)
タグ:自転車
カテゴリ スポーツライティング
CiNii Booksで検索:ツールへの道
紀伊國屋書店ウェブストアで検索:
ツールへの道
e-hon
自転車競技のためのフィロソフィー
柿木 克之
化学分野の研究開発を行ってきた著者が、その手法を用いて運動生理学の研究を自転車のトレーニングにどのように生かしたかをまとめた。まず自転車競技における「強さ」を定義し、代謝の基礎知識に触れた上で、パワーメーターを用いたトレーニングの有効性を導き出す。そしてトレーニング計画など具体的な内容に入っていく。
自転車競技に取り組み人にとって示唆に富む1冊であるとともに、効率がよく、効果は最大限なトレーニングの組み立て方を学ぶことができる。
(月刊トレーニング・ジャーナル編集部)
出版元:ベースボール・マガジン社
(掲載日:2013-04-10)
タグ:自転車
カテゴリ スポーツ医科学
CiNii Booksで検索:自転車競技のためのフィロソフィー
紀伊國屋書店ウェブストアで検索:
自転車競技のためのフィロソフィー
e-hon
<坂バカ>式 知識ゼロからのロードバイク入門
日向 涼子
私は以前、神奈川県と東京都の境にある多摩川の近くに住んでいた。当時、趣味が欲しいと考え手にしたのはスポーツバイクで、それにまたがり多摩川の河川敷を走ったり、数十㎞離れた横浜駅や東京駅、終いには丸一日かけて長野までツーリングを楽しむほどだった。本書を手にした時は、すでに自転車を手放した後だったが、また乗りたい気持ちになったのが率直な感想だ。
著者の初めてスポーツバイクを手にした話から、ロードバイクのレースに出るようになった経緯など、面白おかしく書いてあり、堅苦しく読むものでなく、ロードバイクを楽しんでいる女性のブログを読んでいるようだった。
女性目線から男性サイクリストに向けた意見、アドバイスがあり、女性が男性に期待する事が学べ、トレーナーとして読んだ私は、女性のお客様に接する時に気を付けようと勉強になった。
オススメのトレーニング場所が記載されているが著者の住んでいる東京都周辺の情報だけなので、他の地域の方は参考にならないだろう。また、オススメのレースは参加しての感想もあり、出場を検討している人には良いアドバイスなりそうだ。
運動にあまり興味のなかった著者が、ゼロからのスタートでロードバイクを楽しみ、レースでも活躍するレベルになっている。この結果を、他の運動をしていない方々にも経験してもらうにはどうすればよいのか、本書からヒントを得ることができそうだ。
(橋本 紘希)
出版元:SBクリエイティブ
(掲載日:2017-11-04)
タグ:自転車 ヒルクライム
カテゴリ 運動実践
CiNii Booksで検索:<坂バカ>式 知識ゼロからのロードバイク入門
紀伊國屋書店ウェブストアで検索:
<坂バカ>式 知識ゼロからのロードバイク入門
e-hon
今中大介 ツールへの道
今中 大介
日本のロードレーサーの先駆者である今中氏の、長年の“経験”が敷き詰まった「プロとしての日誌」が本になった。トレーニング日誌の様相を呈していながらも本場イタリアでの喜怒哀楽、プロとして生き抜くための秘話など、読み物としても味わい深く、競技を跨いでも楽しめるようになっている。
(月刊トレーニング・ジャーナル編集部)
出版元:未知谷
(掲載日:2000-09-10)
タグ:自転車
カテゴリ スポーツライティング
CiNii Booksで検索:今中大介 ツールへの道
紀伊國屋書店ウェブストアで検索:
今中大介 ツールへの道
e-hon
ジャン=マリ・ルブラン 総合ディレクター ツールを語る
ジャン=マリ・ルブラン 三田 文英 クリストフ・プノー
アマチュアからプロのサイクリスト、そしてジャーナリストを経てツール・ド・フランスを長く支えるジャン=マリ・ルブランに、これもツールの「資料魔」「うるさ方」として知られるクリストフ・ブノーがインタビュー。エリートコースを歩み、ツールを知り尽くした男が語る歴史と未来。
(月刊トレーニング・ジャーナル編集部)
出版元:未知谷
(掲載日:2000-12-10)
タグ:自転車
カテゴリ スポーツライティング
CiNii Booksで検索:ジャン=マリ・ルブラン 総合ディレクター ツールを語る
紀伊國屋書店ウェブストアで検索:
ジャン=マリ・ルブラン 総合ディレクター ツールを語る
e-hon