高血圧の常識はウソばかり
桑島 巌
本書はタイトルの通り、我々にもなじみの深い血圧、とくに「高血圧」について書かれた本である。「血圧は病院で測るもの」という認識ではなく、現在では自動で計測できる血圧計が一家に一台あっていつでも測れるというように、血圧は身近なものになった印象をうける。また薬剤の普及により、高血圧自体の「本当の怖さ」を我々一般人はあまり認識できていない。筆者は高血圧に長く関わった臨床医、研究者の立場からわかりやすく「血圧」について解説している。
血管を車の通行量と道の狭さでたとえる。「白衣高血圧」よりもサラリーマンの約3割が該当するという、仕事中のストレスにより血圧が高く、仕事以外の時間は血圧が低い、いわゆる「職場高血圧」のほうが現代人には問題が多い。血圧上昇に関わるホルモンの役割と薬剤の効果など、これまで常識と思われた部分を最新の研究をレビューしながら、誤解を解くように新しい知見を解説されている。
学生時代に生理学や病理学などで血圧については学んできていて、「いまさら…」と思われるトレーナーや治療家の方々にこそ、ぜひ読んでいただきたい一冊である。
(泉 重樹)
出版元:朝日新聞社
(掲載日:2012-02-07)
タグ:血圧 生理学
カテゴリ 医学
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高血圧の医学
塩之入 洋
30歳以上の日本人のうち、約3300万人(男性1600万人、女性1700万人)が高血圧であると推定されている。平成8年度の高血圧性疾患受診患者数は749万人、これは3300万人の22.7%にしかすぎない。高血圧を放置すると、脳血管障害、心臓病、腎臓障害、血管障害などを合併するリスクが高くなる。では、高血圧とわかった人はどうすればよいのか。
この本には「あなたの薬と自己管理」という副題がついている。高血圧に関する知識全般と、特に薬について詳説し、生活習慣改善の仕方や自己管理のあり方を説いている。もちろんこれらの知識があれば、高血圧の予防にもつながる。
高血圧が広く知られるようになって100年、日本では近代的な治療が開始されて50年。薬の開発もどんどん進んでいるようだが、運動療法指導管理料がまず高血圧を対象としたことからわかるように、運動や食事、喫煙なども大きく関係する。少しでも気になる人は読んでおいたほうがよい。
新書判 236頁 2002年1月15日刊 780円+税
(月刊スポーツメディスン編集部)
出版元:中央公論新社
(掲載日:2002-03-15)
タグ:高血圧
カテゴリ 医学
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日野原重明の自分で測る血圧Q&A
日野原 重明
今月の特集(月刊スポーツメディスン49号)にちなんで選択した。
日野原重明氏が理事長を務める(財)ライフ・プランニング・センターでは、1980年から血圧測定について自分で自分の血圧を測る技術を指導し、血圧と身体の関係に関する教育を行い、自己血圧測定の普及を図ってきた。正しい血圧測定方法を身につけた人には「血圧測定師範」の資格を与えて、同センターの活動にボランティアとして参加している。1987年に手引書『名医が答える血圧何でもQ&A』を発行。その改訂版と言える書である。
100問の質問に答える形で、血圧とは何か、ということからわかりやすくまとめられている。
正しい測り方の解説では、水銀式、アネロイド式(空気圧と圧力計で測定するもの)、電子血圧計のそれぞれの特徴と、実際の測定方法や注意が網羅されている。
さらに、日常生活で注意すべき点や、食事・トイレ・入浴・飲酒・喫煙と血圧の関係など、ちょっとした疑問に丁寧に答えている。薬物療法は一生続けないといけないのか、という不安にも答えており、血圧に関する全般的な疑問が解決される。極めて実践的な書である。
血圧は、全身の健康状態を、食生活や生活習慣も含めて反映していると考えられる。また、現在は自動血圧計の発達で手軽に家庭で測定ができるので、高血圧の人は自分で生活をコントロールしやすいし、健康な人もバロメーターとしてチェックすることができる。
日野原氏が言っているように、体重計、体温計、血圧計があれば家庭でかなりの自己管理ができるだろう。
(清家 輝文)
出版元:中央法規出版
(掲載日:2012-10-08)
タグ:血圧 健康管理
カテゴリ 医学
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高血圧の常識はウソばかり
桑島 巌
高血圧患者は多い。では、どれくらい正しい知識が普及しているか。そもそも「正しい知識」とは何か。では、ここで問題です。というわけで、本書では「上の血圧より下の血圧が大事である」「高齢者の血圧を下げるとかえって危険」「脳卒中になったら動かすのは危険」「食塩は人間の元気の素で、なくてはならない栄養素である」など計10項目が記され「はい/いいえ」で答える。ここに挙げたのはみな「いいえ」が正解。
高血圧に関する研究は進んでいる。著者は、そのエビデンスに基づいた治療が必要だと説く。その背景には、エビデンスよりも権威の意見が通るという現実もあるとのこと。
著者は東京都老人医療センター副院長で、自分自身の経験や研究成果を大事にする視点から「血圧は血管に対する負担である」という結論を得ている。一例として、高齢者の降圧目標値は2000年の日本高血圧学会のガイドラインでは、「年齢プラス90ミリ」だったが、欧米では大規模臨床試験のエビデンスから「高齢者でも若年者でも一律140/90mmHg未満」。著者はこれに反対し、講演などで主張、それが2004年のガイドラインでようやく欧米並みになったという。高血圧の人はもちろん、そういう人に接することが多い人にもおすすめ。(S)
2007年12月30日刊
(清家 輝文)
出版元:朝日新聞社
(掲載日:2012-10-12)
タグ:血圧
カテゴリ 医学
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