現代スポーツ評論
中村 敏雄
スポーツは文化遺産
「スポーツは今どこにいるのか?」とサブタイトルが問う。この抽象概念を追求するとともに、スポーツを文化遺産として捉える視点を国民共有のものとしていくことの重要性を説いていこうと創刊された。編者は、長きにわたり文化とスポーツの関わりを論じてきた中村敏雄氏・元広島大学教授で、著者にはスポーツ科学者、ジャーナリスト、スポーツライター、スポーツチームの監督など様々なラインナップが並び、それぞれ現在のスポーツが抱える問題をシビアに見据えながら提言する。
中でも、編者の中村氏と清水諭氏・筑波大学講師らが語らう「メディアが果たしてきた役割と責任」は、まさに今日的課題である。ロサンゼルスオリンピック(1984年)辺りを境にスポーツビジネスが加速度を増したが、その車軸にはメディアがあったことは周知の通りである。エンターテインメントとして誰もが楽しめるスポーツという点では、メディアの功は大きかったと言える。しかし、スポーツとメディアが並走しながら時を重ねるうちにスポーツシーンを「伝える」はずのメディアが、視聴者を「操作する」ようになってしまったとも彼らは言う。一方、そうした反省からあまりお金をかけなくても楽しめるんだよと言うのが、ワールドゲームスの誕生と発展だ。2001年に秋田県で開催されることでよく知られるようにもなってきたが、こうした価値を想像するような動きは大いに期待できる。それらを含めて、様々な視点からスポーツを眺めると同時に、骨太なスポーツジャーナリズムを模索する姿も興味深い。
(月刊トレーニング・ジャーナル編集部)
出版元:創文企画
(掲載日:2000-03-10)
タグ:評論
カテゴリ その他
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まあちゃんの文芸評論・スポーツ論ノート
山村 正英
文芸評論として書かれている本書には個々の文芸・文学から時代や歴史が垣間見えます。独仏英文学、ヨーロッパ言語研究家、文筆家である筆者はその道の専門家ですので、それぞれの文学を紹介されるその奥にはそれらの成り立ちにも踏み込まれています。
わずか70頁に満たない本の中に百科事典並みの奥行を感じてしまったのは、サラッと触れられている時代背景や当時の思想が気になってしまい、いろいろ調べているうちに時間が経過したからかもしれません。
スポーツ論に関しても総論部分で歴史的にスポーツが抱えてきた問題点に触れられていました。スポーツの語源であるラテン語の「deportare」も調べてみればスポーツの本質的な役割が見えてきましたし、「スポーツと賭博」「プロ・アマ問題」「戦争とスポーツの関連」などについてもサラッと数行で書かれてはいますが、それぞれで一冊ずつの本が書けるほどの大きな問題といえるでしょう。
流し読みすれば1時間もあれば十分読めますが、どこかではまってしまうと離れがたい面白い本だと言えそうです。
余談ではありますが、「書く」という表現方法の伝達範囲の広さと、時間の経過にかかわらず存在する特性により、文化にまで昇華したのではないかと想像を働かせました。
(辻田 浩志)
出版元:創栄出版
(掲載日:2022-10-03)
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