跳び箱ができる!自転車に乗れる!
下山 真二
この本は、前作「かけっこが速くなる!逆上がりができる!」に続く第2作目と して出版されている。
今回のテーマは「あそび運動」をテーマとしており、私たち大人も身に覚えのある、“昔遊び”がいくつも紹介されている。しかし、昔懐かしい遊びが単純に紹介されている本ではなく、「あそび」を手法として子どもたちの発育発達に役立つ運動プログラムを分かりやすく説明してくれている。
とくに興味深いのは、子どもたちに気づきを与えるための「コツ」が整理されていること。私たちが子どものころにつかんだ「動きの感覚」を「理解しやすいフレーズ」で言い直し、さらに段階的に学習できるよう組み立てて紹介されている点はとても興味深い。
スポーツや人体の仕組みについて知識の少ない、お父さん、お母さんたちが子どもと一緒になって読むことのできる「体育の自習本」として十分活用できる内容である。
その一方で、スポーツに携わる専門家にとっても参考になる部分が多い。それは、指導をする側のわれわれが「ついついやってしまう失敗」を紹介していることである。子どもの「気づきを待てるかどうか?」は、専門家だからこそ振り返っておきたい点だと感じている。
「一つの動きを5個の言い方で説明する(できる)」というフレーズも紹介されている。日頃から、伝えるための工夫について試行錯誤をするのだが、単純な表現ながら子どもの心に届く核心をついている。子どもに興味を持たせ続けることは実に難しい。 子どもたちが自分から望んで身体を動かそうとする場面をつくり、タイミングよくアイコンタクトを行うことが(文中では、「指摘せずに、ほほ笑む」と表現されている)、われわれの指導場面にも重要な要素として再認識させられた。
本書は、子どもの身の丈、子どもの目になって関わりたい、と心から感じさせてくれる一冊として、ぜひ広くお勧めしたい。
(青島 大輔)
出版元:池田書店
(掲載日:2012-10-13)
タグ:遊び 発育発達
カテゴリ 運動実践
CiNii Booksで検索:跳び箱ができる!自転車に乗れる!
紀伊國屋書店ウェブストアで検索:
跳び箱ができる!自転車に乗れる!
e-hon
「遊び」の文化人類学
青柳 まちこ
「遊び」をテーマに書かれた本ではありますが、意外なほどその内容に遊びはありません。むしろ純粋なる学術的研究発表の性格が色濃く出ます。
本書を語るにあたってオランダの歴史学者ホイジンガとフランスの社会学者カイヨワの存在は無視できず、彼らの研究が下地になっているともいえるでしょう。ただ筆者はホイジンガの「ホモ・ルーデンス」ではヨーロッパの文化に立脚した視点にとらわれて客観的評価はできないと指摘したうえで、独自の視点で「遊び」を評価・分析をしています。確かに本書は筆者の主観的要素を排除しているようなのですが、その分無機質な印象を感じました。読み物として捉えた場合、読み手が何を求めるかによっても両者の評価は変わるように思います。
「遊びとは何か」という命題から本書ははじまりますが、「競争」「表現・模倣」「偶然」「めまい」という要素を基軸とするとするカイヨワの「遊び」の定義づけをベースにしてさらに深く分析を進めます(批判的な部分もありますが)。
すべての行動から動物として必要な生存や種族保存などを目的とする行動を除いたものを余暇行動として、それを遊びと定義するならばその範囲はあまりにも膨大になります。そういった広範な「遊び」をいくつかの要素に分類するところは説得力十分。細やかな分類と具体的な例を挙げての評価は世界中いろいろな形式で存在する遊びを整理しています。そしてそれらの遊びがどのように伝播していったかという遊びのネットワークも論じられ、多方向からの視点による切り口で解明されます。
納得しつつ読み終わって、1つ疑問が生じました。本書が書かれたのは1977年なのですが、当時と今とでは情報の流通のシステムが変わりました。ネット社会になって近年社会も急激な変化を見せました。はたして本書の定義が今も変わらず当てはまるのだろうかということです。ホイジンガやカイヨワのころと青柳氏のころでは時代背景が異なります。それと同じように現在と昭和中期とでは背景の差は歴然です。「遊び」の定義にも時代背景による考え方の差を感じたのですから、今という時代においてまた違った要素も芽生えているかもしれません。「遊び」と「文化」が限りなく近いものであるとするならば、そういう可能性があるようにも思えるのです。21世紀という時代の遊びはどのように評価されるのだろう? そんな興味がわいてきました。
(辻田 浩志)
出版元:講談社
(掲載日:2012-10-16)
タグ:遊び
カテゴリ その他
CiNii Booksで検索:「遊び」の文化人類学
紀伊國屋書店ウェブストアで検索:
「遊び」の文化人類学
e-hon
“遊んで”伸ばす! 子どもの運動能力 楽しみながらできる「親子遊び」ドリル80
佐藤 雅弘
運動能力を高めるためにはどうすればよいかについて、両親に向けて書かれたもの。まず基本姿勢やアライメントについて立った姿勢、歩き方でみていく。足のチェックや柔軟性も確認し、改善のためのレッスンや、遊び(飛行機やクモ歩き)の中でのコーディネーショントレーニングが、身体を支える能力、反応力、バランス能力、リズム・タイミング、組み合わせてのコーディネーションという流れで紹介されている。
(月刊トレーニング・ジャーナル編集部)
出版元:山海堂
(掲載日:2007-09-10)
タグ:遊び 姿勢 子ども
カテゴリ 指導
CiNii Booksで検索:“遊んで”伸ばす! 子どもの運動能力 楽しみながらできる「親子遊び」ドリル80
紀伊國屋書店ウェブストアで検索:
“遊んで”伸ばす! 子どもの運動能力 楽しみながらできる「親子遊び」ドリル80
e-hon
ないもの、あります
クラフト・エヴィング商會
人のイマジネーションってすごいと思います。「想像」とは必ずしも虚構であるとは限りません。物質的にはなくても頭の中で想像すると確かに存在することってたくさんあると思います。「-1」なんて数字は物質的には表すことはできないと思います。もちろん証明は可能でしょうが「物」としてないものはないのです。人の感情や意識なんて「物」としてはありません。しかしそれを否定する人はいないはず。
「堪忍袋の緒」「口車」「思う壺」「冥土の土産」など書いてみれば「物」として存在しそうなんですが決して存在しないもの、それを商品として売ろうっていうんですから何やら怪しげ。「クラフト・エヴィング商會」という架空のお店を立ち上げ想像の産物を売るという企画。あくまでも本書は商品カタログの体裁となっているのがポイント。
絶妙のセールストークで次々に商品を売り込んでくるんですから読者の私たちも心して聞かなければいけません。言葉巧みな売り込みは一流セールスのそれ。私もかつて営業のお仕事をしていましたが、そのとき先輩や上司から教わったのは絶対に嘘はダメということ。メリット・デメリットをきちんと説明した上で取引相手が納得しないと長期的な取引はしてもらえないと叩きこまれました。もちろん本書のセールストークもそのあたりはきっちり押さえてあります。本当にこんな商品があったら欲しいなと思った時点で、術中にはまっていたんでしょうね。
商品となった言葉の本質にあらためてうなずくばかり。想像力の豊かさと淡々と語られる商品説明には思わず身を乗り出してしまいます。こんな面白い商品カタログは初めてです。
最後に掲載された赤瀬川原平さんのエッセイ「とりあえずビールでいいのか」も秀逸。
(辻田 浩志)
出版元:筑摩書房
(掲載日:2013-09-06)
タグ:遊び 言葉
カテゴリ フィクション
CiNii Booksで検索:ないもの、あります
紀伊國屋書店ウェブストアで検索:
ないもの、あります
e-hon
アスレティックトレーナーが教える ケガに強くなる! 運動遊び
花輪 和志 大崎 恵介
著者は2014年に「アスとれ総合型クラブ」を設立。そこでの取り組みを中心に、子どもたちのための身体づくりをまとめた。まず1章で、基礎体力とは何か、特定のスポーツしかしていない場合の落とし穴など、スポーツ関係者にとっては当たり前かもしれないことを丁寧に説明。そして2章で現時点での姿勢、柔軟性、連動性のチェックを経て、3章で「運動遊び」を紹介していく。その名の通り子どもたちが楽しく行えるもので、使う道具も風船やタオルなど身近なものばかり。少人数から大人数まで応用可能だ。とくに積極的に取り組むスポーツ鬼ごっこでは、全国大会優勝も果たしているそうだが、それも始まりは「遊び」である。昔ながらの遊びの、新たな活用と言える。
(月刊トレーニング・ジャーナル編集部)
出版元:いかだ社
(掲載日:2017-09-10)
タグ:鬼ごっこ 遊び 子ども
カテゴリ 運動実践
CiNii Booksで検索:アスレティックトレーナーが教える ケガに強くなる! 運動遊び
紀伊國屋書店ウェブストアで検索:
アスレティックトレーナーが教える ケガに強くなる! 運動遊び
e-hon