養生の実技
五木 寛之
作家として言わずと知れた五木寛之氏が50年間行ってきた身体養生の方法を綴った本である。
病気はなおらない、そして自らの感覚が大事であると考える五木氏。自分が身体によいと思うことを行い、よくないと思えば一般的な治療法であっても行わない。身体にメスを入れるなんてとんでもない話なのである。
身体の症状は何らかのサインなのだ。身体に症状がでるのには生理的、物理的な原因と同時に心理的な原因が影響していると考えられている。身体はサインを出して変調を知らせてくれているのである。何らかのサインを感じたら、それを叩きのめす(治療)のではなく、身体と向き合い生活習慣やストレスなどを考え直したり、うまく対応する(養生)ことが必要なのではないかということである。
現代の生活でストレスを避けることは難しい。自らの身体とそして身体がさらされている環境とうまくつきあいながら生き方を見つけて実践していくことが大切なのだという印象が強く残った一冊であった。
(大槻 清馨)
出版元:角川書店
(掲載日:2012-01-18)
タグ:身体養生
カテゴリ 人生
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養生の実技
五木 寛之
「角川oneテーマ21」の1冊。副題は「つよいカラダではなく」。五木寛之と言えば『青春の門』や『風に吹かれて』また最近では『大河の一滴』や『他力』などでよく知られているが、二度休筆宣言し、龍谷大学で仏教を学び、現在は『百寺巡礼』という大きな仕事に取り組んでいる。
その五木氏が、新書でみずからの「養生観」を語ったのがこの本。文章の平明さの一方で、思索と経験の深さをみることができる。
弱いことや不安などを「悪いこと」として捉えない著者の言うことは世間とは逆のことも多いが、よく考えられた裏づけがある。
「歩くときは、あまり颯爽と歩かない。反動をつけずに重心の移動で進む」「中心は辺境に支えられる。心臓や脳を気遣うなら、手足の末端を大切に」「入浴は半身浴にする。体をあまり洗わないことが大事」「一日に何回か大きなため息をつく。深く、たっぷりと、『あーあ』と声をだしながら。深いため息をつく回数が多いほどよい」「あまり清潔にこだわっていると、免疫力が落ちる」「病院は病気の巣である。できるだけ近づかないほうがよい」
これらは巻末に収められた「わたし自身の体験と偏見による養生の実技100」からの引用。仕事に追われ、未処理のものが多い人には「やったほうがよい、と思いつつどうしてもできないときは、いまは縁がないのだ、と考える。そのときがくれば、やらずにいられなくなるのだから」というものもある。
気持ちが楽になる。からだを慈しもうと思うようになる。そういう本だ。最後に著者はこう言っている。「あす死ぬとわかっていてもするのが養生である」。
(清家 輝文)
出版元:角川書店
(掲載日:2012-10-09)
タグ:健康 養生
カテゴリ 身体
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痛くない体のつくり方 姿勢、運動、食事、休養
若林 理砂
本書は、痛みに不安を抱えている方が何をすればよいか、東洋医学を中心にわかりやすく教えてくれる一冊である。治療家の方なら経験があると思うが、患者はもちろん、友人からも身体や痛みに関わる相談事を受ける。相談の内容により簡単に答えられるが、今後のためにも身体に対する考え方など伝えたいことは山ほどある。そのときに、本書の存在を知ってしまった私は、この一冊をまず読んでほしいと言ってしまいそうだ。
身体についてわかりやすく人に伝えるのが私の仕事なのだが、活字に慣れている方なら本当に読んで貰うかも知れない。そのくらい綺麗にまとまった内容なのだ。本書に「痛みリテラシー」という言葉が出てくる。これは、痛みを冷静に受け止め、適切に対処できるようになることをいう。この痛みリテラシーには、学習と訓練が必要で、それを教えてくれるのが本書ということだ。
痛みのメカニズムから、ペットボトルや爪楊枝を使った家庭で簡単にできる東洋医学的治療。ニュートラルな姿勢づくり、生活習慣の改善。治療をする上で患者にも理解しておいていただきたい部分が網羅してある。患者へは自身の身体の取り扱い説明書として、治療家へはアドバイスの参考書として、本書をお勧めしたい。筆者が出会った患者の話や、古武術の考え方にも触れられるのもまた興味深いところである。
(橋本 紘希)
出版元:光文社
(掲載日:2016-04-18)
タグ:東洋医学 養生
カテゴリ 身体
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